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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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316.光の力

『まあ、そんなわけなんで僕が直接戦う、というのは僕自身としてもできないんだよね』


 一瞬、俺死んでもいいかなと思ったところで太陽神さんが、そう言ってくれた。あうあうあう、いや、やっぱり死ぬのやだもんなあ。こっちに来る直前、1回死んでるようなもんだけど。


『前に戦った時は巫女が覚悟を決めてくれたんだけど、後味悪くてね……』


 とはいえ、巨大タケダくんのルックスでそう言われてしょげられるとなあ。というか、前回は俺の立ち位置にいた人、覚悟決めちゃったのか。すごいな、と何か思う。


『そういうことで、次善の策を取りたいと思う』

「はい」

「次善の策、ですかな。神よ」


 あとそこの天然ボケイケメン国王、俺が無事っぽいと分かったらあっさり頷くな。一番怖かったのは俺自身だこんちくしょう。

 ま、そこら辺は後で突っ込むこともあるだろうとして。大公さんの問いに、太陽神さんは『うん』と頷いて言葉を続けた。何でも良いけどあんた、はい、じゃないのな。


『僕の巫女であるジョウ、それからオウイン王家の末裔でジョウの連れ合いでもあるカイル。君たちに、一時的にだけど僕の力を授けたい』

「俺?」

「俺、ですか」


 太陽神さんの申し出に、俺はつい自分を指差した。カイルさんは軽く目を見開いて、それから一瞬だけこっちに視線を向ける。……太陽神さんの中では、どうやら俺とカイルさんはセットらしい。まあ、夫婦だし。


『決着を押し付ける形になってしまうけど、いいかな?』

「……はい、俺は構いません」


 尋ねられて、一瞬だけ考えたけど頷いた。

 このまま黒の神ほっといたら洒落にならないのは分かっているし、太陽神さんが俺に乗り移ったらそこで俺は死んでしまうわけで、そうするとこれが俺にとっちゃ一番いい策なわけだから。

 それに、俺とカイルさんはシロガネの国民たちをたきつけてここまで来たわけで。それで、何もせずに終わるわけにはいかない。

 だから俺は、しっかり答えた。その俺に続いて、カイルさんも。


「というか、ここまで来た以上責任とってケリつけないといけませんしね」

「自分も構いません。ジョウと一緒であれば、どこまでも戦えます」

『それは良かった』

「シロガネの国王ご夫妻は、大変仲がよろしいのですね」

「いいじゃろ」


 満足気に頷いてくれた太陽神さんはいいとして、シッコクさんと大公さん何やってるんだあんたらは。まったく。

 そして、この場にいるもう1人は。


「カイル、行っておいで」

「兄上」


 カイルさんから身体を離すようにして、それからちょっと苦しそうに笑顔を見せた。カイルさんはびっくりした顔をして、それから少しの間目を伏せる。


「……分かりました。兄上」


 伏せたままでそう答えて、それからカイルさんはタケダくんの姿の太陽神さんを仰いだ。


「太陽神様。タチバナ・スメラギ・カイル、太陽神様のお力をお借りして戦います」

「スメラギ・ジョウ、太陽神様の力、お借りします」

『ありがとう。本当にごめんね、面倒押し付けちゃって』


 俺も、カイルさんに続いてそう宣言する。太陽神さんはちょっと笑って、それからその身体がかっと輝いた。

 光の一部がふわんと外れて、俺とカイルさんの中に入ってくる。寒い日に暖房にあたってほっとした感じ、が近いかな。特に胸の中があったかくて、これが太陽神さんの力なんだと何か納得した。


『タケダくん。今の身体は、戦いの決着がつくまでそのままにしておいてあげる。2人をその背に乗せて、空を行きなさい』

『はーい! わーい、ままとかいるおにーちゃんのせられるー』


 ええいそこの巨大伝書蛇、普段と同じようにくねくねひらひら喜ぶな。尻尾が頭のすぐ上をぶんと通り抜けて、怖かったぞ今。


『ソーダくん。君にも、魔力を。君の魔術で、2人を助けてあげるんだよ』

『はい。おまかせください、たいようしんさま!』

『シッコク、ヒョウノシン、ミラノはここで待っておいで。瓦礫が危なくないように、取り除いておくからね』


 一方ソーダくんは、俺たちと同じように光をもらって小さな身体でくねくねぱたぱた。こっちもやる気満々で、大変ありがたいというか。

 よし、といった感じで立ち上がって、俺はふと居残り3人組の方に目を向けた。つか、この3人まで見てもらえるなんてある意味アフターケアばっちり、だな。


「それでは、行ってまいります」

「んじゃ、行って来ます。大公さん、シッコクさん」


 カイルさんと一緒に挨拶して……ふと、ちゃんと呼ばないと駄目だと思って、呼んだ。


「……ミラノ、兄上」

「…………うん」

「ほほう」


 だから大公さん、目を細めてニヤニヤするなっつーの。カイルさんのお兄さんなんだし、姉上のことだってもう姉上と呼んでるんだからどこもおかしくないんだって。

 そこら辺はさすがに分かってくれてるようで、大公さんはすっと真剣な顔に戻って深く頷いた。


「まあ良い。勝って帰って来やれ、でないとアキラっちに笑われるでな」

「行ってらっしゃいませ。ご武運を」

「ふたりとも、頑張っておいで」


 シッコクさんも、ミラノ殿下も、そう言って俺たちを見送ってくれた。


「兄って呼んでくれて、嬉しかったよ」


 ミラノ殿下の、兄上の言葉を耳に残したまま、俺たちはタケダくんの背に乗って空へと舞い上がる。

 待ってろ黒の神。

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