表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

316/341

315.太陽神

 気が付くと、あたりは真っ白だった。感覚としては、『龍の卵』の中と同じ感じ。光の壁に、ふんわりと包まれてる。

 ただ、床は謁見の間のまんまなんだよね。てことは、どこかに瞬間移動したというわけではない。

 つまり、誰かさんが俺の……いや、カイルさんたちがひっくり返ってるのが見えるから、俺たちの周りに結界を張って守ってくれたらしい。崩れる城の、瓦礫から。

 誰がだよ、と思いつつ身体を起こした。ふむ、とりあえず魔力戻ってるよおい。


『ごめんごめん。なかなか、手が出せなくてね』

「……タケダくん?」


 上から降ってきた声に、顔を上げる。……えーと、あれ。

 いやね、上から話しかけてきたのはどう見てもタケダくんなんだよ。真っ白で赤い目の、伝書蛇だから。

 ただし、やたらとでかい。ヘタすると、初めて会った時のせーちゃんくらいある。うん。


『うん。その、タケダくんの口を貸してもらってるんだ。白の使いだから、僕とは相性いいからね』

『そのかわり、ままやみんなをまもるまりょく、かしてもらえたんだよー』


 ……はい?

 今、同じ声で2人分、というか何というか、声が聞こえたな。後から出てきた方は確実にタケダくんなのは、口調で分かる。すると、先に呼んできた方はマジ、どちらさんだろうか。


『そ、それでおおきくなったんですね。たけだくん』


 俺の懐から転がり落ちたソーダくんが、人間なら冷や汗かきつつと言った感じで答える。いや、そこで無理やり落ち着かなくてもいいからな。

 しかし、口貸す代わりに魔力借りられるってどういう相手だ。というか、タケダくんと相性が良いって……え。


「……太陽神、さん?」

『うん。こうやって直接話すのは初めてだね』


 マジすか。

 何で口調が……ああうん、ミラノ殿下だ。殿下と似てるんだろ、わけわからん。王族の長男と同じボンボン育ちか、この神様は。

 などという大変失礼な思考が頭を駆け巡っていたところを、聞き慣れた声が停止させてくれた。


「……ジョウ?」

「カイルさん!」


 はっと振り返ると、ぽかんとした顔でカイルさんが座ってる。ああうん、あんた恐らくせーちゃんが黒くなったあたりで記憶途切れてるとか、そういう感じだろ。まったく、と思いながらソーダくん拾って駆け寄る。

 で、起き出したのはカイルさんだけじゃなかった。


「な、何じゃ?」

「……生きている、みたいですね」


 大公さんは赤い髪をぼりぼり掻きながら、シッコクさんは何度か首をひねりながら起き上がる。この2人もまあ、大丈夫そうだ。

 で、最後の1人。


「……カイル?」

「兄上!」


 ミラノ殿下は転がったままで……どうにか弟の、カイルさんの名前だけを呼んだ。慌てて中腰で近づいたカイルさんは、どうにか殿下の上体を起こさせた。

 で。


『もう、いいかな?』

「あ、はい」


 とりあえずこの場にいる全員の無事を確認して、タケダくんの口を借りた太陽神さんはよし、という感じで頷いた。もしかしたらタケダくんかもしれないけど……ひょっとして思考回路似たり寄ったりだろ、あんたら。

 ま、それはともかくだ。


『ええと。黒の神はこの辺りに貯め込まれた魔力と、それから神の使い魔の力を得て復活した。これは分かるかい?』

「はい。俺は見てましたから」


 太陽神さんの台詞に、ああそうだと思い出しつつ頷く。よく考えなくても今、外じゃ人間大ピンチ中じゃないのか、それって。

 事情見てた俺はいいんだけど、他4名はまあ覚えてないだろうと思ったら全くその通りで。


「神の使い魔……そういえば、すーちゃんの気配がないのう」

「せーちゃんもです」

「ビャッコ様が、おられませんね」

「……うん、ゲンブもいないね」


 まあ、4人共不思議そうな顔をした。そりゃそうだよなあ、知ってるの俺だけだろうし。ともかく、簡単に説明。


「……黒の神が、シオンの魂共々食ったって言ってました。ゲンブと、ビャッコも」

「シオン?」

「黒の魔女だな。……彼女も食われたのか」


 シッコクさんが首を傾げるのに、カイルさんが難しい顔をして口挟んでくる。知らない間柄じゃないしな、あんたとかミラノ殿下とか。

 それで、太陽神さんが今の状況を教えてくれた。


『うん。黒の神は自分をこっちの世界に引っ張り出してきた、自分の巫女の魂を食ってその身体を乗っ取った。そして、神の使い魔の力で自分を強化して、今城の外で暴れてる』

「あの蛇の身体とか翼とか、あれ使い魔さんたちのですか」

『そうだね』


 うわあ。合体邪神になっちまったのかよ、黒の神。何そのゲームだか何だかっつー状況。いや現実だけど。つかそうだね、じゃねえよ太陽神さんよう。

 ともかく、その合体した黒の神に、俺たちが勝つ算段あるんだろうか。……つっても、昔は神の使い魔4体従えた黒の神に勝ってんだから、何とかなる可能性はあるのか。

 そんなことを全員考えてたんだろう、視線が巨大タケダくんに集中する。赤い目をまんまるくして、タケダくんの声で太陽神さんは、ちょっと済まなそうな感じで言ってくれた。


『正直に言えば、僕があいつと同じようにして戦うのが一番早い。つまり、僕自身がこっちに出てきて自分の巫女の身体を使って戦う、ってことなんだけど』

「まあ、順当ですのう」


 大公さんが、うんうん頷いた。確かに、直接対決ってのが一番手っ取り早いんだよね。でも、太陽神さんは何か、それやりたくないっぽい。

 その理由は、すぐに当の太陽神さんが教えてくれたんだけど。


『だけどそれには……ジョウ、だったよね。君の魂が消えることになってしまうんだ。食う、食わないにかかわらず、神を宿す肉体に選ばれればその人間は耐えられない』

「それは、いくら太陽神様といえども許すわけには行きません!」

『せんえつながら、じょうさまのつかいまとしてもはんたいさせていただきます』

『まま、いなくなっちゃだめー!』


 カイルさんとソーダくんとタケダくんが即答。いや、俺の問題だからね?

 つか、そうか。黒の神がシオンの魂食らってその身体乗っ取ったっての、太陽神さんでもそれは同じことになるんだ。太陽神さんが俺の身体に入ったら、俺自身は消えてなくなってしまう。

 ……だったら、どうすればいいんだろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ