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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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301/341

300.戦が終わると後始末

 結局、何とか日没前後には終了した。1日で終わる戦が早いのか遅いのかは分からないけれど、まあ終わってほっとしたというか。

 もちろん、こちらの勝ちである。……まあ、やっぱり怪我人も多かったし死者も出たけどな。

 で。


「悪い。例によって、手間かけてるなあ」

「もう慣れましたから。手袋越しでも効果あるっぽいですし」


 両脇にぐったりした人抱えて持ってくるコクヨウさんたちに困った困ったと苦笑しながら、例によってぺちぺちタイムである。門から溢れ出たほど酷く汚染されてるわけでもない人が多くて、マシっちゃマシ。

 なお、やっぱり例によって街の中はすごいことになっていた。前に通った時お昼食べた食堂なんか、テーブルも椅子もなくなってて代わりに床に女の人たちが転がってたんだそうで。男の人は、隅っこにこう搾りかすみたいのがたくさんぐったりしてたらしい。

 その転がってたのと搾りかすと以下省略、を片っ端からぺちぺち叩いて回っている。もう夜なんだけど、早めに片付けとかないとまた広がるかもしれないからね。

 んで、場所を移動してる途中でラセンさんと会った。荷車にいっぱい積まれたものを、兵士に運ばせている。

 ……うん、俺が叩く前に亡くなってた人も結構いた。例によって、搾りかす以上に搾り取られた男の人がほとんどらしい。


「死者は、南側で火葬にします。私と配下が見ていますから、ジョウさんは適当に休んでね」

「いいんですか?」

「住民のほとんど殴らせて火葬まで面倒見ろ、なんてとても言えませんよ」


 俺が尋ねると、ラセンさんは肩すくめてそう答えてくれた。いやまあ、俺じゃなくてもお見送りはできるからな……黒の気払いは俺しかできねえから、そっちを頑張らないと。

 にしても、だ。


「あのー。兵士除くと、街の人口だいぶ減ってる気がするんですが、気のせいですかね」

「気のせいじゃなさそうですわね」


 あ、やっぱり。いや、俺1人で数日かかりそうだけど何とかなる人数、っぽいんだよね黒に汚染されてる人。この街って国境で、結構人住んでた気がするんだよ。それにしちゃ何となく少ないな、って。特に子供。


「そこら辺は、上の方々にお伺いすればいいことです。正気で黒の魔女に付き従っている方々にね」


 にーっこり笑ってそう言ったラセンさんに、俺はタケダくん、ソーダくん共々震え上がった。いや、お伺いってそんなのんびりしたやり方じゃないよね、うん。




「さて」


 ラセンさん言うところの『正気で黒の魔女に付き従っている』上の方々は、武装剥ぎ取られたうえで両手縛られて白黒コンビの前に引き出されていた。俺とカイルさんは、離れたところで様子を見てる。ま、一応確認はしてみたんだが、タケダくんが『このおじちゃんたち、くろいけどくろいのはかないよ?』ということで。


「俺たちは外部の者だから、黒帝国の内部には詳しくねえんだ。ちょっと、お話してくんねえかな?」


 腕組んで仁王立ちになったコクヨウさんが、地面に座らされている連中を見下ろしながらにい、と歯をむき出して笑う。ハクヨウさんはちょっと呆れ顔してるけど、いつでも剣抜けるように構えてるなあ。


「だ、誰が話すもんか」

「ま、普通はそうだわなあ」


 ですよねー。俺が殴ってどうにかなる類ならいいけど、ならないしなあ。しかし、どうすんだろ。いつもならムラクモが以下略なんだけど、彼女今ユウゼだし。

 なんて思ってたら、コクヨウさんが不意に名前を呼んだ。


「イカヅチ、任せる」

「承知」


 いつの間にか、すっと現れたイカヅチさん。彼がロープ持ってるのに気がついて、俺はカイルさんと顔を見合わせた。


「あのー、あれもしかして」

「……まあ、忍びだし拘束の術は習得しているだろうが……」


 御役目考えるとそうだよね、と思いつつ視線を戻す。あれ、イカヅチさんの連中見る目が冷たいなあ。

 そうしてイカヅチさん、低いんだけど結構通る声でぶっちゃけた。


「俺は妹と違って、あそこまで慣れてはおらん。少々酷いことになるかも知れんが、許せ」


 ひ、酷いって? ムラクモと同じパターンで、慣れてなくて、酷いことになるってちょっと待ってイカヅチさん。


「もげたり取れたりしても、俺を恨むな。妹をこの場に出せなくした、黒の魔女を恨め」


 ひー、やっぱりか! 元男としてめっちゃ想像がつく、つきすぎるのがいやだ。頑張れおっさんたち、いや頑張らずに全部ぶちまけた方がきっとまだマシだ、うん。

 あわわわわ、となってる俺とカイルさんを見て、ハクヨウさんがやってきた。


「はいはい、姫はタケダくんとソーダくんの教育に悪いんで、ここから先はなしで。若も、見ないほうが良いですから行きましょう」

「あ、は、はいい」

「そ、そうだな」


 ハクヨウさんに退去を促されたのにホッとして、俺たちは慌ててその場を後にした。で、ある程度離れたところで。


「ふおおおおおおおおおおおおおおおお!」

『あのおじちゃん、ちゃんとおはなししたらよかったのにねえ』

『まったくですね。というか、いかづちさままでやらなくても』

『……人間というのは、時に恐ろしいことをするもんじゃの』

「否定はしないよ……」

「……頑張れ」


 上がった悲鳴を聞きつつ、とりあえず今夜は寝ることにしようかな。何か、えらく疲れたし。

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