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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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286.ムラクモのお見舞い

『まま。おねがいがあります』

「はい?」

『たけだくん、あらたまってどうしたのですか?』


 王姫様改め姉上とお茶して、ゆっくり2日ほど休んだら3日目の朝飯が美味かった。そいつをぺろっと平らげて部屋に戻って一休み……からの、突然のタケダくんのお願いごとである。つかお前、時々だけど敬語使えるんだよねえ。

 俺の目の前、テーブルの上で可愛いとぐろ巻いてきちんとこっち見ながら、タケダくんはそのお願いを口にした。


『あのね。むらくもおねーちゃん、おみまいしたいなあっておもいました。つれてってください』

「ムラクモのお見舞い? そうだなあ」


 言われて、なるほどと思った。タケダくん、ソーダくんもそうなんだけど、結構ムラクモには可愛がられてるしな。怪我して寝込んでるのはそりゃ、心配だろう。それに。


「確かにあいつなら、タケダくんとソーダくんがお見舞いしたら、怪我の治りも早くなるよな」

『だよねえ!』


 うん、何か不思議な力が働いて、あっという間に治りそうな気がする。何しろムラクモだし。

 けどさ、タケダくんの気持ちも分かるんだけど行って大丈夫かな、とか考えないのな、この子。考えるのは、どっちかっつーとソーダくんの方だし。


『しかし、だいじょうぶなのでしょうか。ちりょうのおじゃまにならないかと』


 ほらな。

 だけど、俺としてもムラクモのことは気になってるし、話聞いてみようかとかは思ってたから、いいや。


「そこら辺は、向こうに聞いてみればいいんじゃね? 邪魔にならないんなら、OK出るかもしれないし」

『なるほど』

『わーい』


 ソーダくんは納得してくれたからいいとしてタケダくん、会えるかどうかは分からないんだけど?




 結論として、あまり長い時間でなければOK、という判断がラセンさんから出た。


「彼女、負傷した翌日にはもうカンダくんにデレデレしてましてね。タケダくんとソーダくんが一緒に来てくだされば、きっと回復も早くなると思いますわ」

「しゃあ!」


 いやマジかそれ。というか、既にカンダくんでかなり効果上がってんじゃないか、と思うんだが。まあ、タケダくんが会いたいって言ったんだからいいよね、うん。


「こちらです」

「あれ、ここムラクモの部屋ですよね。他の人は?」

「寝込んでもらわないといけないレベルの傷を負った女性は、彼女だけですから」


 食堂でお茶とお茶菓子ゲットした後で案内されたのは、もともとのムラクモの部屋だった。ラセンさんの話を聞いてなるほど、と納得する。

 他にいわゆる入院レベルの怪我したのは男ばっかで、さすがにムラクモを一緒に寝かせるわけにはいかないってことか。そらそうだ、同室になった野郎どもが縛られたり潰されたりしたらえらいこっちゃ。そっちじゃない、という話もあるけれど。

 それはともかく。


「ごめんください。王妃殿下がおいでですよ」

「ひゃっ!?」


 ノックしてラセンさんがそう声かけると、部屋の中からひっくり返った声が返ってきた。……俺が来るなんて思ってなかったか、俺が来るイコールタケダくんとソーダくんもいるからか。後者だな、ムラクモだし。

 扉を開けたラセンさんの後に続いて入ると、ムラクモがベッドの上であたふたしていた。寝間着の上にカーディガンみたいの着ようとして、じたばたしてる。何やってんだお前、まだあちこち包帯とかぐるぐる巻きじゃねえか。


「じょ、ジョウ? ななな何でまた」

「わー! 寝てろ、無理しなくていいから」

「そんなわけにはいかないだろうが!」

「怪我人は怪我治すのが最大の任務だ!」


 一所懸命起き上がってるムラクモを、まあ寝かせるのは大変だろうからカーディガンは肩がけにした。つか、この方がお茶飲みやすいだろ。


「えーと……タケダくんとソーダくんが、ムラクモのお見舞いしたいって言ってきてな」

『むらくもおねーちゃん、だいじょぶですか?』

『むらくもさま、おみまいにまいりました』

「タケダくん、ソーダくん! カンダくんも一緒にいてくれるなら、私は今すぐにでも復帰できるぞ!」


 いやさすがに、いくら伝書蛇たちがぱたぱたくねくね挨拶してるのが可愛いからってそれは無謀だ。そこら辺は当然というか、カンダくんやラセンさんも承知のうえで。


「しゃあっ!」

「ダメですよー。最低でもあと1週間は休んでください、でないと伝書蛇と遊ぶことは許可できないわあ」

「そ、そんな無体な……」


 結局伝書蛇か、と突っ込みたくなるのを我慢する。まあ、これでおとなしくしてくれて怪我が早く治れば、儲けモンだからなあ。


『そうだよー。けがしたまんまだったら、またいたいいたいだもん』

『どうか、しっかりとおけがをなおしてください』

「ちゃんと休んでくれる、と約束してくれるなら、今ここでタケダくんやソーダくんと一緒にお茶にしよう。な、ムラクモ」

「も、ももももちろんだ! 十二分に回復せねば、戦で敵の首を取ることなどままならぬ!」


 んでまあ、2匹で釣る俺も俺なんだけど。引っかかる、ムラクモもムラクモだよなあ。

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