280.続く戦
上から様子を見ながら、光の盾や風の舞なんかの補助魔術でサポートしていく。さすがに最初の一発が効かなかったこともあって、向こうはほとんど魔術師の補助がない。駄目だろ、やり方なってねえな黒帝国。
つーか、せーちゃんパワー使えるカイルさんがまあ時代劇ラストのチャンバラか、ってくらいに敵をばっさばっさとなぎ倒してんだよね。ほら、今なんか馬ごと斬ったぞ。
敵の攻撃は受け止めるし、たまに弓兵の生き残りが飛ばしてくる矢はせーちゃんがふん、と吹き飛ばしてるし。ありゃ鼻息か、もしかして。
で、うちの使い魔ズの気になる点はちょいと別にあった。
『かいるおにーちゃん、ぼくたちみたいに、しゅばーんってとばさないんだね』
『かいるさまはまじゅつしではありませんから、まだこんとろーるがうまくいかないのではないかと』
「そこ? おっと、風の刃!」
カイルさんについてった白黒コンビが取り囲まれたので、1カ所を上から切り崩す。後はノゾムくんとかがフォローしてくれるから、多分大丈夫だろう。
つか、カイルさんの剣が伸びるみたい、なのってそういうことか。そういやせーちゃんも、風の刃が伸びるみたいなもんって言ってたしな。
で、一瞬下に気を取られたところで。
『じょうさま! うまがとんできます!』
「騎兵飛来!」
ソーダくんの警告と、門の上で俺を守ってくれてる兵士たちの声がほぼ同時に耳に入ってくる。そうなんだよな、こっちの馬飛べるんだよなあ。
「くわああああああっ!」
『まま、こっちねらってる!』
ですよねー。魔術師ほっといたら面倒だもんねえ、敵側からしてみたら。
とはいえ、俺だってやられるわけにはいかないからな。伊達に伝書蛇2匹も連れてんじゃねえや。
「タケダくんソーダくん、防御頼む! 風の刃!」
『はい! ひかりのたて!』
『ひかりのたてえ!』
伝書蛇2匹で、門の上にいる俺たちの前に横長に光の盾を張る。その展開前に俺が放った風の刃を食らった馬が落ちたり、馬の上から人が落ちたり、光の盾に正面衝突して以下省略。避けた騎兵も、その前に光の盾が立ちはだかってるっていう寸法だ。
「ジョウ!」
「大丈夫です! それより前、まえ!」
下からカイルさんの声が、やたら鮮明に聞こえる。あ、せーちゃん、スピーカーやってやがるなと思いつつ答えて、カイルさんたちに光の盾。あのな、一応国王陛下なんだから敵が集中して狙ってくるに決まってんだろが。ほんと、気をつけてくれよ。
さて、ムラクモたちはと。
「タケダくん、ソーダくん。ムラクモたち、どこまで行けてるかね」
『えっとねえ、もうちょっと』
『まじゅつしたちが、まだまりょくがかいふくしないかわりにたてになっているようです』
「マジか」
うーん、さすがにずんばらりんはちょっと気が引けるからなあ。じゃあ、動きを止めりゃいいんだな、よし。
「ムラクモたちを避けられるように、闇の雨出せるか?」
『ひかりのたてがはずれるかたちになりますが、かまいませんか?』
「張り直す。というか、騎兵にぶつけちゃえ」
『わかったー』
ソーダくんはこういう時ほんと頭が回るから、フォロー入れてくれて助かる。そのほうが、俺も何とかできるしな。さ、行くか。
「タケダくん、ソーダくん!」
『ひかりのたて、ぱーんち!』
「ごっ!」
タケダくんが張ってあった光の盾を飛ばして、ちょうど突っ込んできた騎兵にぶつける。近くの騎兵ともつれ合って、そいつは落ちていった。それでできた隙間から、ソーダくんが魔術を飛ばす。
『やみのあめ!』
「……光の盾っ!」
黒雲が敵陣の上に沸き起こり、雨を降らせ始めたのを確認して俺が光の盾を張り直した。少し隙があったけど、そこら辺は下から矢が飛んできたりカイルさんが剣ぶん回してたりしたので、何とか大丈夫。
ふう、と一息ついてみた。いや、さすがに休みなく魔術使うと疲れるって。はー、と大きく息を吐いた途端、せーちゃんの悲鳴のような叫びが響き渡った。
『主、すまぬ! 魔力を借りる!』
「せーちゃ」
ん、まで言い終わらないうちに、爆発音がした。敵陣の最後尾、司令官がいるはずの辺りから。
まだ、ムラクモたちがいるはずの辺りから。




