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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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276.弓と矢を使うわけ

 とりあえず、場所を移動して弓の訓練してる方も見ることにする。こっちは、グレンさんやノゾムくんが指揮を取っていた。的は藁をごっつく束ねたもので、もしかしたら時代劇か何かで見たことあるかもしれないやつだ。


「次! 一斉に、放て!」


 ノゾムくんの凛とした声とともに、並んでる兵士さんたちが一斉に矢を放つ。ばすばすばす、と音がして矢は的に当たったり、近くの地面に刺さったりしてる。

 にしても。グレンさんはまあ分かるんだけどノゾムくん、さすがアオイさんの弟さんだなと思う。自分より年上の人たち相手に、しゃきしゃき指示してる。感心するっていうか、すげえなあ。


「どうだ?」

「最初に比べたら、結構命中率上がってますね」

「ふむ」


 カイルさんの質問にも、ノゾムくんが答えてる。グレンさんは刺さった矢の片付けを皆にするように指示してから、こっちにやってきた。


「まあ、こんなものだろう。実際の戦闘時には、命中率よりも敵の動きを封じるほうが重要だしな」

「そうなんですよね。んなもんで、訓練は筋トレメインでやらせてます」


 筋トレ。まあそっか、少なくとも腕は使うもんなあ。その点俺とか楽だよね、タケダくんによろしくーとかやったりできるし。

 ……あれ。それなら何で、弓矢の訓練とかしてんだろ。魔術で済むじゃんか、俺とかラセンさんとかいるんだから。


「……あの、いいですか」

「いかがした? 殿下」


 分からないことは、聞いてみるに限る。俺はとにかく、この手の話には疎いからな。不思議そうな顔をしたムラクモを横に、俺は尋ねてみた。


「遠距離攻撃なら、魔術があると思うんですが。どうして、弓矢の訓練するんですか?」

「ま、確かにそうなんだけどな」


 答えてくれたのは、グレンさんだった。頭にぽんと乗せられた手、でっかいなあ。


「うちの場合、魔術ってなるとラセンか殿下に頼りっきりになるだろ。いいとこ、アキラ婆さんとシノーヨ大公」

「はい」


 殿下、つまり俺とラセンさん、アキラさんにシノーヨの大公さん。……俺以外、結構トンデモスペックじゃねえかと思う。後半の外見と実年齢が吊り合わないコンビはでっかい伝書蛇もいることだし。


「片手で数えられる数の魔術師に頼ってちゃ、限界はあらあな。魔力の使い過ぎは魔術師本人の消耗に繋がるし、黒帝国がそこ狙ってきたらどーすんだ」

「特に黒の魔女は、ジョウを狙ってくる可能性は高いからな」


 うんうん、と頷き合うグレンさんとカイルさん。魔力の使い過ぎ、ってあんまり感じたことないんだけど、それは俺がそんなに魔力使うようなところに出てないからか。

 ちょっと考えてると、ムラクモがにやりと笑ってこっち見た。


「その点弓矢なら、私でも使えるからな。ナイフを投げるより、よほど遠くまで飛ばせる」

「確かに命中率はそれほどでもないと思いますが、例えばあらかじめ戦場に油を撒いておいて、そこに火をつけた矢を放つなんて手もありますから」

「あー」


 続くノゾムくんの言葉に、すげえ納得した。そっか、敵に当たらなくてもどうにかすることはできるんだ……って、俺の魔術でもそうなんだけど。でも、弓矢は魔術師じゃなくても使えるから、数で勝負の時とか役に立つ、わけか。

 ふ、とグレンさんが目を細めた。


「第一、殿下にそうそう働かせるわけにゃいきませんや。……黒の魔女と、決着付けたいんしょ?」

「分かりますか」

「一応、古い知り合いだったっつー話は聞いてますからね。それと、前に陛下が引っかかったって話も」

「……」


 うん、まあ確かにシオンとは俺が勝負付けたいよ。……それはいいんだけど、カイルさんの話どこまで知られてんだろうねえ。カイルさん自身、何か顔が青くなってるけど。


『かいるおにーちゃん、だめだよー?』

『まあまあたけだくん。それだけ、くろのまじょがきょうりょくだということなのですよ』

『主、もちっとしっかりせえよ? 可愛い嫁は、自分で守らにゃ』

「せーちゃん、何言ってるんだ!」

「せーちゃん何言ってるんですか!」


 タケダくんとソーダくんのボケツッコミはいつものこととして、せーちゃんは何しれっと言ってるんだこの神の使い魔め。あと、カイルさんと声がダブったのは偶然だからな、偶然。


「……カイル様。可愛いジョウは自力で守れ、とでも言われましたか」

「何で分かるんだ、ムラクモ……」

「ムラクモさん、すごいですね! 使い魔の言葉、分かるんですか!」


 うん、もうムラクモはムラクモだからいいけどさ。それからノゾムくん、感心するところなのかそこは。あーあ、カイルさん頭かかえちゃったよ。しばらくしたら復活するだろうから、放っとくか。


「まあ、黒の魔女とは俺が勝負つけたいっていうのは確かです。でも、いいんですか?」

「止めても無駄っぽいですしねえ。その代わり、ちゃんと勝ってくださいよ? 黒帝国と全力で戦ったその後で、あの魔女に精力吸い取られて干からびるなんて勘弁して欲しいですし」


 ともかく、グレンさんに言われてそうだな、とは思った。俺が負けたらこの人たち全員、何もかも忘れて発情しまくったヒトのオス、とかになっちまうんだろうしな。

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