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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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275.訓練がんばれ

「おらおら、気合入れて振り下ろさねえと敵は死なねえぞ!」

「力がないなら、急所を狙え。敵は遠慮せず、狙ってくるぞ」


 杖もらった次の日。

 俺とカイルさんは、ムラクモの護衛のもとに兵士の訓練を見に来た。こういうのって、偉いさんが見に来ると気合が入るらしくて、気分転換のためにもどうぞってことらしい。

 俺がよく魔術の訓練してた広場で、どう見ても普通の若い人からおっさんまでが木刀ぶん回してる。女性はまた別のところで、アオイさんなんかが見てるらしい。身体違うから、訓練の仕方も違ったりするのかね。

 なお、こっちの訓練見てるのは白黒コンビで、2人ほぼ同時に俺たちに気がついて軽く頭を下げてきた。


「ありゃ。若……じゃねえや、陛下、王妃殿下。ようこそむさ苦しいところへ」

「いやいや。続けてくれ」

「こんにちは。訓練、頑張ってください」

『おーおー。人の子ら、未来は明るいのう』

『みなさま、おつかれさまですー』

『わーい、がんばってねー。おうえんしてるよー』


 カイルさんは軽く手を振ったので、俺も真似して振ってみる。あ、ほぼおっさん&にーちゃんだからか、黄色い声じゃなくて雄叫びが上がった。

 つか、マジで気合入るもんなのかね、俺ら見たくらいで。もしかしたら、俺たちの肩に乗っかってる使い魔3匹のおかげかもしれないけど。結構レアだもんなあ、こいつら。

 まあ、頑張って欲しいもんだと思いつつ白黒コンビに話聞いてみよう。人前だからか、コクヨウさんも何気にこっちの呼び方変えてるのがさすがだな。


「やっぱ、訓練大変ですか」

「まあ、傭兵とかで好き放題やってた連中はいいんですが、新規で入ってきたこいつらはねえ」

「基本から叩き込まないと駄目なんだが、時間があるかどうかだな」


 コクヨウさんの言葉に、カイルさんが説明をつけてくれた。そっか、新規の人って普通の街の人とか、旧コーリマ領とかから逃げてきた人とかのことなんだよね。もともと戦ってた人たちじゃないから、基本からやらないと駄目なんだ。

 それを、シオンが待ってるわけはないよなあ。いつ、何をやらかしてきてもおかしくはねえんだよ、あいつ。

 そんなことに脳みそ使いかけた俺を引き戻したのは、ハクヨウさんのため息混じりの台詞だった。


「と言っても、傭兵組はまた違う問題があるんですが」

「違う問題、ですか」

「ま、要は言うことを聞かないんですよ。傭兵で好き勝手やるのと、軍隊として組織立ってやるのはやはり、いろいろ違いますから」

「あー」


 それはそれで問題か。カイルさんたちの部隊は傭兵部隊、ってことになってはいたけど事実上、ユウゼの軍隊みたいなものだったわけで。トップがカイルさんだし、その周りにいるのも旧コーリマの割とそこら辺知ってる人たちだったからなあ。

 でも、傭兵さんたちは力になってくれるだろうし、うまくやってもらえると良いんだけど。


「後は、俺が言うのも何ですが素行がちと、ね」

「ほんとにお前が言うな」


 で、何でコクヨウさんとムラクモが漫才してるかね。つーか、素行てあれか、夜になったら酒飲んで酔っ払って暴れたりとか、その辺か。


「酔っ払った連中は、水ぶっかけて冷ました後その場の片付けをさせてますよ。タクトやノゾムなんかにしばき倒された連中もいますぜ」

「……あの2人、そんなに強いんですか」

「ノゾムは副隊長の弟ですからきっちり鍛えられてますし、タクトもグレンやシノーヨのスオウ殿にいろいろ教わりましたしね」


 あー、ハクヨウさんの説明で納得。そっか、基礎がっちりしてるんだ、あの2人。俺より多分年下なのに、すごいなあと思う。

 と、コクヨウさんが呆れた顔をしながらこんなことをぶっちゃけてきた。


「あとはあれですよ。まかり間違って殿下と一晩、とかふざけるにも程があること抜かした馬鹿が数名、ムラクモに去勢されましてね」

「俺に見えるところで言わなくてよかったな」

「カイル様のお耳に汚らわしいお言葉を入れたくなかったのです。ご了承を」


 ……殿下って、俺のことか。わー。

 というかカイルさん、爽やかな笑顔で何気に怖い台詞言わんでください。もしその時にカイルさんがいたら、その人去勢じゃ済んでないですよね!? つーかムラクモ、お前はいつものことだけどな。


『主あるじ、そういうのはワシが噛むから案ずるでない』

『じょうさま、ぜんりょくでまじゅつをためしてもかまいませんよね?』

『えーと。ぼく、よくわかんないけど、ちからいっぱいめっしたらいいの?』


 そこの使い魔トリオ、お前らもカイルさんに同調すんじゃねえ。というか、俺一体どういう扱いなんだよ。


「遠慮なくやっていいぞ」

「殺る気があるのはよいことだ。私が手伝おう」

「カイルさん、ムラクモ。タケダくんとソーダくんのしつけに悪いんで、勘弁して下さい」

「ん?」


 こら国王&国王付き忍び、神の使い魔はともかくうちの子らに変なことを教えるな。タケダくんはまだまだ思考が子供だし、ソーダくんは生真面目だから大変なんだぞ。


「悪かった。俺の手で始末をつけることにするよ」

「いえ、ですから私が片付けます」

「いやそうじゃねえって」


 この2人に思わず手の甲でびしっとツッコミ入れた俺、間違ってないよな? あとハクヨウさん、コクヨウさん、「訓練の途中だから」つーてそっぽ向くんじゃねえ!

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