表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

273/341

272.要注意

 ふと、カイルさんが顔を上げた。アオイさんに、視線を向ける。


「そういえば、他のエリアはどうなってるかな?」

「総本山と旧シノーヨ領には、既に問い合わせを出しております。どちらも、一両日中には返事が来るかと」

「来なければまずい、ということだな」


 アオイさんの返答に、さらにカイルさんが言葉を重ねる。返事が来ない時はつまり、黒がその辺で幅を利かせてるってことが間違いないからだ。

 そこへ、コクヨウさんが口挟んできた。


「返答が来た場合も念のため、タケダくんやせーちゃんにチェックしてもらった方がよくないすか」

「……確かに」


 カイルさんが頷く。タケダくんやせーちゃん、ってことはつまり、その手紙に黒の気が含まれてるとかそういう可能性を考えてるわけ、か。ハクヨウさんも、その後に言葉を続ける。


「今回、太陽神教の神官を装って住民に黒の気を吹き込んだそうですしね。レッカ殿にはそこら辺、注意喚起をしてもらわないと」

「そうか……黒の人がこっちは平気ですよ、って嘘の文を書いてくるってことですね」

「そうそう。ついでに、文の中身に接触魔術掛けといたりな」

「えげつない……」


 コクヨウさん、さらっと何言ってきてんだ、おい。ムラクモが肩すくめて呆れ顔になったけど、お前が言うな。

 でもまあ、こう言っちゃアレだけど黒帝国の連中って、事実上シオンの部下だもんなあ……やらない、とは限らないっていうか。うん。


「文に仕掛けるのは、接触魔術の基本だよ。媒体として封筒じゃなく中身の便箋を使えば、目的の相手を狙えるだろう?」

「なるほど。そう言われりゃそうですね」


 ハクヨウさんの説明に、納得して頷く。にしてもハクヨウさん、地味に詳しいなあ。何かいいとこの出だって話はぼんやり聞いた気がするけど、それでかね。




 その後は結局、黒の過激派には気をつけましょうという基本的な注意点に立ち返って終わった。まあ、そこに始まってそこに終わるよな、特に今の時期は。


「各自、黒除けの守りは必ず携帯するように。特にジョウ、タケダくん、君たちは忘れるなよ」

「気をつけます」


 いや、あんたも忘れるんじゃねえと頭の中で突っ込みながら、国王陛下に返事する。と、肩の上でソーダくんがしゃー、と息を吐いた。


『わたくしがちゅういいたしますので、ごあんしんくださいませ! かいるさま』

『主。ソーダくんが注意するそうだから、お嬢ちゃんたちは大丈夫だと思うぞえ?』

「そうか」


 せーちゃんものそりと口を開いてくれたので、ソーダくんの台詞はカイルさんには通じたようだ。あと、そろそろ本気で使い魔の言葉分かってんじゃねえかって感じのムラクモが、腕組んでうんうんと頷いている。


「そういうことなら頼むよ、ソーダくん」

『はい、おまかせください!』


 カイルさんの言葉にソーダくんは、えっへんと胸を張る。それを見てか、タケダくんはこっち向いてぱたんと翼を広げた。やる気だけはあるんだよな、この子も。


『まま。ぼく、ちゃんときをつけるから! ままもきをつけてね?』

「うん、気をつけるよ。何かあったら大変だしな」

「……タケダくんにお互い気をつけよう、とか言われたわけだな。ジョウ」

「はは……」


 やっぱり、ムラクモにはバレてるし。いやもう、今度どのくらい言葉理解できてるのか試してみてえな。うん。




 アオイさんを始め部下の皆が部屋を離れた後で、俺はふとカイルさんに目を向けた。何か、言わなきゃいけないって思ったから。


「……カイルさん」

「どうした? 部屋で休んだほうがいいぞ、ジョウ」


 カイルさんはそんな俺を見て、気遣うように笑ってくれる。いや、こっちの方があんたを気遣わないと駄目なんだけどな。

 どうしても国王ってのは、やらなきゃいけないことが多いから。アオイさんたちや俺や他の皆にもさんざん割り振ればいいのに、カイルさんは性格が性格だから結構自分でやっちゃうし。

 だからせめて、俺が背負えることは背負ってやるから。そのために俺は、あんたの隣に立つことを選んだんだしな。


「黒帝国、絶対潰しましょう。何かもう、連中のやってること見てらんなくて」

「……うん、そうだな」


 ちょっとだけ、強い口調で言ってみた。そうしたらカイルさんは綺麗な色の目を見張って、それからしっかりと頷いてくれて。


「兄上もきっと、俺たちを待っている」

「……はい」


 そう、答えてくれた。うん、あんたを気遣う、理由のひとつがそこだ。

 ミラノ殿下、カイルさんのお兄さん。黒帝国の皇帝になっちまってるけど、そんなの俺は認めないから、呼び方は殿下のまま。

 あの人はきっと、真っ黒になっちまったお城で俺たちを待っててくれてるんだろう。

 それが敵としてか、大事な弟とその妻としてか、その辺は分からないんだけどさ。


 でも、必ず行くから待ってろよ。ミラノ殿下、それとシオン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ