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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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265.事情報告は晴れ晴れと

「お待たせしました。やはり彼女、コーリマ・イコン黒帝国から遣わされたそうです」


 晴れ晴れとした顔でムラクモがそう報告してきたのは、翌々日の朝だった。つーかおい、えらく顔がつやつやしてるけど何があった? ま、存分に縛れたんだろうけどさあ。

 似たようなことをカイルさんも思ってたみたいで、多少顔をひきつらせつつ尋ねてみてる。


「えらく元気そうだな、ムラクモ……というか、女をどうやって……」

「縛り方にコツがあるのです」


 いや、胸張ってそう言われても。あと、そのコツは聞きたくないからな。お前の秘奥義にしておけ、と頭の中で言ってみた。さすがに、口に出しては言えんわ。うん。


「………………報告の続きを。あ、その前にラセンを呼んでくれ」

「はい」


 内心頭抱えこみたいだろうカイルさんの台詞に、ムラクモは相変わらず晴れ晴れとした表情で頷いた。ラセンさんならまあ、ムラクモがどんだけぶっちゃけてもわりかし平気そうだしな。

 で、ラセンさんがやってきたところでムラクモが、あの女から聞いた話を報告してくれた。

 ま、要するに年末も近いんで黒の信者増やすために送り込まれてきたスパイ、みたいな感じだそうだ。例の娼館も、彼女が物件押さえて男籠絡するために期間限定の開店だったらしい。


「最近ジョウにひっぱたかれたのは、大体がその店の客だったようです。女性の方は大概が年末の小遣い稼ぎにと店に引っ張ってこられて、そのまま彼女にたらし込まれたようで」

「うわあ……」

「あら、仲間の男性とかいなかったのね」


 単に頭抱える俺と違って、ラセンさんは結構冷静に突っ込むところを突っ込む。それにはムラクモも頷いて、言葉を続けた。


「彼女以外に男がもう1人潜り込んでいるらしいんだが、それが誰なのかは彼女も知らないようだ。ただ、まだはっきり動いてるわけではなさそうだが」

「男の過激派といえば、まあやることは相場が決まってるからなあ……」


 カイルさんが、ちょっと困った顔になる。まあなあ、黒の過激派の男が何やったかなんて、俺が知ってる限りだと破壊活動か女をずこばこ、だもんな。うえー。

 でも、そのどっちもあんまり酷いことにはまだなってない。いや、黒に汚染された人たちが結構暴れてるけどあれ、大体ムラクモに何やらかされてるか分からない彼女のしわざみたいだし。


「まあ、そのあたりは街を当たってみるとして。他に、何か分かりました?」

「はい。スパイが送り込まれたのは、まあご想像通りとは思うが、ユウゼだけではないようだな」

「というと……」


 ラセンさんの更なるツッコミに対する、ムラクモの回答。

 ユウゼだけじゃないとするとえーと、さすがにミリコにはそういう人いなかったし……となると。


「太陽神教の総本山、それからユウゼより南のシロガネ領、だな」

「ご名答です」


 カイルさんが、すっぱり答えてくれた。そっか、ユウゼに平気で入り込めるなら、通過してもっと南に行くことも可能か。あと、総本山って何とか次の神官長決まったところで大変だろうしなあ。


「シロガネ領内は、スオウ殿あたりからシノーヨ大公殿下に問い合わせたほうが良さそうだな。あちらにはすーちゃんもいるし」

「そっか。せーちゃんも分かるんですから、すーちゃんも分かりますよね、黒」

『うっかり街燃やしてなけりゃいいがのー』


 でれーん、とカイルさんの肩にかかってるせーちゃんのぼそっとした呟きは、基本俺とカイルさんにしか聞こえない。ので、吹き出すのをこらえるのに苦労した。いや、縁起でもないんだけどね。

 シロガネというか旧シノーヨ領内は、大公さんとすーちゃんにお任せしたほうがいいな。俺とかより、なんかずっと役に立ちそうだし。

 で。


「総本山は、レッカさん経由で探ったほうがいいですわね……あんまり近づきたくない、というか」

「うっかり行ってみたらえらいことになっていた、じゃあ逃げられませんしねえ。島だし」


 なんだよねー。船で3日かかるんだぞ、あの島まで。で、行ってみたら皆黒くなっててせっせと魔力生産中、なんてことになってたらほんと、洒落にならないし。でも、確認しないわけにもいかないだろうし。

 ……レッカさん、何か迷惑掛けそうだけどごめんなさい。はい。


「……となると、差し当たってはユウゼにいるはずの過激派捜索、か」


 そんなわけで、俺たちが今できることと言ったらそこら辺にしかならない。つーか最優先事項。ほったらかしてたら、今度はそいつが動いてえらいことになる。そのくらい、シオンは考えてるはずだし。


『……ワシ、街中見てこようか?』

『まま。せーちゃんがいくなら、ぼくもいくー』


 せーちゃんと、それから今までおとなしかったタケダくんがしゃー、と息を吐いた。ソーダくんは、タケダくんの隣でこくこくと頷いている。なお、ムラクモも同じように頷いているのは単に真似してるだけだろう。まったく、こいつは。


「……少なくとも、ユウゼだけは掃除しておかないとな。分かった、行こうかせーちゃん」

「タケダくんもやる気出してますんで、俺も行きます。さっさと探さないといけませんし」


 そんなわけで、ある意味最重要人物らしいカイルさんと俺が動く理由ができた。ラセンさんも、「仕方がありませんね」と頷いてくれる。


「ここ潰されたら、コーリマに北上するのが面倒ですものねえ。その代わり、護衛はしっかりつけますからね? 国王陛下、王妃殿下」


 うん、ついてくれたほうがその、何かと助かる。

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