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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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257.白への祈り

 分かりやすく冬、の気候になった頃、やっとこさ太陽神教総本山のどたばたが落ち着いた、という話がこっちに届いた。でまあ、せっかくなんで話聞こうってことで神殿にやってきた。いつものように奥に通してくれたレッカさんが、お茶を出してくれてありがたい。


「じゃあ、結局はコンゴウさんが神官長になったんですか」

「はい。テンクウ様が補佐を務めておられます」

「ありゃ」

「大丈夫なんですか? テンクウ殿、神官がたからはあまり良い印象がなかったですよね」


 今日はノゾムくんが俺の護衛で来てくれてるので、一緒にお茶を飲む。彼も総本山行ってたから、大体の事情は分かってるんだよねえ。何でまあ、ノゾムくんの疑問ももっともなわけだ。

 でも、レッカさんはくすっと笑って答えてくれた。


「彼女、一般の信者さんには結構好かれてらっしゃるのですよ。前の神官長がああでしたから、上層部の信頼を回復するための人事だと思いますわ」

「なるほど、世知辛い世の中ですねー。ねえ、ジョウさん」

「そうだねえ」


 いやまあほんとに……ってか、そういうことまで考えないと駄目なわけか。うわあ、この先大丈夫なのかな、俺ら。


「王妃殿下は、あまりお気になさらなくてよろしいかと思いますよ。人の割り振りには、それが得意な方に当たってもらえばいいんですから」

「そうですよ。うちの姉とかそういうの得意ですから、お任せください」

「あ、ああ、そうか」


 レッカさんとノゾムくんに言われて、ああと気がつく。そうだよな、アオイさん確かにそういうの得意そうだもんな。ってか、そういうの任せるのってカイルさんの役目じゃん。俺、あんまり関係ないような。


「そっか、カイルさんがそういうの決めるよなあ。俺じゃなくて」

「ジョウさんが頼めば、陛下も考えて下さいますよ?」

「いや、それじゃ駄目だろ。俺の言葉だけで動くような王様じゃ、そのうち誰もついてこなくなる」


 ノゾムくんが言ったことに、慌てて首を振る。そう、俺の台詞に言いなりになっちゃ駄目なんだよな。カイルさんはカイルさんとして、ちゃんといろんなこと考えてくれないと。


「そりゃまあ、俺だって意見することはあるかもしれないけどさ。でも、それは俺だけじゃなくてもいいわけで」

「そうですわね。前の神官長は、人の意見を聞き入れなかったからこそその座を追われたわけですもの」


 座を追われたっていうか、えらいとこ叩き込まれたっていうか。そういえば『龍の卵』、何も言ってきてないってことはまだまだ普通に稼働してるのかねえ。まあ、頑張れ。




 お茶も飲み終わったってことで表に出てくると、お参りしに来ていた街の人たちが一斉にこっち見た。ってーか、まるでアイドルの出待ちしてたようなその歓声は何なんだ?


「王妃様だー」

「王妃様ー!」

「ありがたや、ありがたや」


 俺かー!

 そうだ、王姫様とか結構アイドルスターっぽい扱いだったもんなあ。しかし、ここまで結構街中とか歩いてたけど、こんな反応なかったぞ。


「ジョウさんジョウさん、手を振ってやってください」

「え? あ、はあ、こうか?」


 ノゾムくんに耳打ちされて、慌てて振ってみる。わあ、きゃーの声が一段高くなったよマジアイドルか何かか俺。

 ……ああ、よく聞いたらきゃーの声の中に何か聞こえるわ。


「どうか、黒の気よりお守りくださいませ」

「うちの子が元気で年を越せますように」

「ご先祖様にお力をお貸し下さいませ」


 とか何とかいろいろ。あ、そういうことね。

 冬になると、黒の神の力が強くなる。太陽神さんの力が弱くなるとも言うんだけど、特にこの年に生まれたばっかの赤ちゃんには年を越すまで太陽神さんのお守りがもらえない。

 ので、このくらいの時期になるとご先祖様がお守り代わりに化けて出る、そうな。見たことねえけど。

 でまあ、俺は王妃様だけど白の魔女でもあるわけで。

 ……これは、サービスというかしといたほうがいいな、うん。


「タケダくん、ソーダくん。みんな、太陽神さんの礼拝に来たみたいだし、挨拶したげて」

『はーい』

『みなさまに、たいようしんさまのおめぐみがありますようにー』


 というわけで、手を振ってる俺の両肩でタケダくんとソーダくんが楽しそうに翼を広げる。途端、またまたきゃーの声が跳ね上がったっつーかぎゃーに聞こえるようになったというか。


「まあまあ。白の魔女様たる王妃様と、お使い様の姿を拝むことができたのですから、あなたがたには太陽神様の恵みが降り注ぐはずですわ」


 にこにこ笑いながらそんなことを言ってのけるレッカさんには、ちょっとだけ怖くなったけど。

 それじゃ、太陽神信じてない黒の穏健派の人には何もない、みたいだから。

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