250.女子会
翌朝、せーちゃんを道案内に馬車がやってきた。あ、王姫様とカイルさん、と何でか俺はホウサクさんの家に泊めてもらって、他はてきとーに寝たらしい。夜はいい加減冷えてきてると思うんだけど、大丈夫かね。まあ、朝方平気な顔してたから大丈夫なんだろうけど。
で、馬車にアオイさんが付き添ってきててさ。外の見回りとかしてるカイルさんやコクヨウさんとか御者してきたハクヨウさんとかほっといて、早速突入してきた。
あ、俺は王姫様の番してろって言われて家の中。カイルさんが、微妙に心配性じみてきてるのがこっちが心配だよ。うん。
「セージュ殿下っ!」
「アオイか。元気そうで何よりだ」
「それはこちらの台詞です!」
いやあもう、すっかり女友達の会話である。多分、あんまり間違ってないんだろうけど。王姫様とアオイさん、年もそんなに離れてないはずだしね。
でまあ、その2人が会話してる横でタケダくんが、馬車を案内してきたせーちゃんに話しかけている。
『せーちゃん、はやかったねー』
『ほっほっほ、伊達に神の使い魔なんぞを名乗ってはおらんよ。人乗せなければな、かなりの無茶は利くんじゃ』
『そうなんだ。ぼく、おっきくなってままのせることになったら、きをつけるね!』
何の話だ何の。あれかタケダくん、そのうちチョウシチロウやビシャモンみたいなサイズになるのか。ソーダくんより先に生まれてるから、まあ普通なら先に大きくなるか。食事の量もそんなに違わないしな、こいつら。
……あれ、何か静かだな、と思ったら王姫様とアオイさん、会話やめてこっち見てた。なお、当たり前のようにムラクモも混じっている、ということはあれか。
「……可愛いな」
「殿下もお思いでしたか」
「無論だ。ムラクモ、そなたどう思う?」
「使い魔は皆、愛らしいものです」
「3人して何の話してんですかー!」
思わず大声で突っ込んだ俺、悪くないよね? だーもー、お茶入れ替えよう。せーちゃんもお水飲むだろうし。
「いやだって、せーちゃんと話してるタケダくんが可愛いもんだからつい」
「ムラクモは、いつものことだからまだいいんだけど。セージュ殿下とアオイさん、何一緒になってやってるんですか」
「本当に愛らしかったのだ。致し方あるまい」
「よもやカイル様にまで使い魔がつくとは思わなかったんだが、これまた可愛い使い魔だったのでつい」
「……はあ」
開き直ってしまった王姫様に、俺はどういうわけかホッとした。いや、これならこの人大丈夫だよなーなんて思えたからだけど。ムラクモは本当にいつものことだし、アオイさんも何か可愛いモノ好きみたいなのはいいかな、うん。
で、ここには地味に話題に入ってない使い魔が1匹いる。おとなしくて控えめな、ソーダくんだ。
『じょうさま。たけだくんはかわいいですから、いたしかたないですよ?』
「俺は、そんな謙虚なソーダくんも可愛いと思ってるんだけどな?」
『え』
相変わらずタケダくんを立てる台詞ばっかり言うもんだから、俺は素直にお前さんも可愛いって言ったんだけど、何で硬直するかねこの子。ああもう、ムラクモレベルに可愛がったほうが良いのかな、こういう子って。
それはともかくとして、わたわたと身体くねらせていたソーダくんははっと気づいたように口を開いた。
『ああ、そうそう。けさがたですが、じゅうぞうどのとおはなしをしてまいりました。つばさをちょっといためておりますが、ゆっくりならあるけるそうです。せーじゅさまのおそばにいたい、とのことで』
「飛べないけど歩けるのか。そりゃ良かった、連れて帰れるな」
「ジュウゾウか?」
だー、俺よりずっと頭いいし手回し早いし、やっぱりすごいよなあソーダくんは。んで、気がついたらしい王姫様にソーダくんの言葉をざっと通訳する。
「はい、ソーダくんが話をしてくれまして。翼を痛めてて飛べないみたいですけど、ゆっくりなら歩けるって」
「そうか。あの子は私と長い付き合いなんだ、置いていくのもどうかと思っていてな」
「ジュウゾウもそうみたいですよ。セージュ殿下の側にいたい、そうです」
「……そうか」
そこまで伝えると、王姫様はほっとしてアオイさんやムラクモと笑いあった。うん、調子も良さそうだし一緒に帰れそうだね。ほんと、良かった。
『我ら使い魔もそうじゃが、乗馬も己の主のことは大切に思っておるからのう。引き離されんで良かった、良かった』
せーちゃんがゆらゆら揺れながら、俺と同じ気持ちを口にした。いやまあ、俺にしか聞こえないんだけど……だからか、言ったのは。
お昼すぎには、俺たちはミリコの集落を後にすることになった。ハクヨウさんとコクヨウさんが残って、現地調査続行だってさ。田んぼや畑の広さ調べたり、いろいろあるみたいだ。
いやほんと、新しい国っていろんなことあるんだなあ。




