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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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241.本音は本音

 夜。

 飯も食い終わったし身体も拭いたしで、後は寝るだけ。ベッドの上に大の字になって、天井を見上げる。

 タケダくんとソーダくんは俺の枕元にいて、まだ寝る気はないようだ。うんまあ、俺もまだ寝ないけど。


「……はー」


 改めて、考えてみる。何がってもちろん、タチバナ・カイルさんのことだ。

 前からちょこちょこ、そんな感じはあった。思い出してみると、たしかにそうだ。

 何だかんだでカイルさん、いつも馬乗るとき俺を乗せてくれてたし、コーリマ王城に持ってかれた時もくっついてきてくれたし……いや、アレはあの後えらいことになりかけたけどさ。太陽神教の総本山でだって、カイルさんが来てくれたから俺、『龍の卵』から出られたんだし。

 そもそも、お母さんのことがあったから俺が元は男だったってことにもすぐ気がついて、それで気を使って助言してくれたし。いやまあこれは単純にそうしたほうが良いだろうから、だったんだろうけど。

 あーもー、1人で考えててもまとまらねえな。そばにいてくれてるこいつらに、聞いてみるか。


「タケダくん、ソーダくん」

『なに? まま』

『なんでしょうか、じょうさま』

「俺、そんなにカイルさんと仲良く見える?」

『うん』

『はい』


 即答かい。まあ、喧嘩なんてしちゃいねえし普通に話はしてるから、仲悪くは見えないか。傍から見たら残念イケメン王子とレア魔術師の小娘、だもんなあ。


『かいるおにーちゃんがいっしょけんめい、ままといっしょにいたいから、そうみえるのかもしれないけど』

『でも、すくなくともじょうさまは、かいるさまといっしょのときにその……あまり、いやなかおはなさらないですし』

「そっか。まあ、そうなんだろうな」


 2匹が、一所懸命説明してくれる。タケダくんなんて言葉がまだまだ少ないだろうに、自分の考えてることちゃんと口にしてえらいなあ。ソーダくんは親御さんやアキラさんにちょっと育ててもらったから、その分しっかり言えるし言葉も選べるし。

 にしても、そっか。嫌な顔、してないか。


『ままは、かいるおにーちゃんすき? ぼくはすきだよ』

「んー。多分、好きなんだとは思う」


 タケダくんが尋ねてきたのに、ちょいぼかして答える。何か、はっきり言うと何か、超えちゃいけない線超えそうで……怖いのかも、な。

 それでも、自分の使い魔たちにはさすがに嘘はつけないし。ちょっとだけ、本音を出してみる。


「最初、こっち来た時カイルさんやラセンさんが助けてくれてさ。それで、ここにお世話になれたから、お前さんたちとも会えたんだし」

『わたしは、じょうさまにはおやもおせわになりましたから』

「大して世話してねえよ。それなら、アキラさんだ」

『はあ……』


 ほんと、親のソーダくんには俺、何もしてやれなかったなあ。生まれてくる今のソーダくんをお願いされてOKした、それくらいだし。


「……そりゃともかく。俺はカイルさんのこと少なくとも嫌いじゃないし、嫌いならここにはいない。魔術師なんだから、よその街でも多分どうにかできたと思う、けど」


 ほんとにともかく、自分の本音をだらだらと流し出す。これはさすがに、他の誰かには言えない。ましてや、カイルさん本人になんて、とてもとても。


「いつの間にか、カイルさんの力になりたいなあ、と思ってたな。うん」


 魔術師として、白の魔女として。

 自分のことあんまり考えないで頑張ってしまう、鈍感ででもイケメンな王子様の力に。

 いやでもさ、俺はやっぱり、まだまだ中身男だし。それは、カイルさんもきっと分かってることで。

 カイルさんはたまたまお母さんが俺と同じだったから、事実知ってても他の人よりはあんまり考えないだけで。

 ……って、俺何考えてんだろうな。つか、どうすりゃいいんだろうな。


『あのね、まま』


 普段は空気なんて読まないくせに、こういう時だけは妙に敏感なタケダくんが、恐る恐る俺の顔を覗き込んだ。赤い目丸くして、可愛いなあお前は。ムラクモがむっはーとなる気持ちは、何か分かる。


『ままは、ままがおもうようにすればいいとおもうよ?』

『どなたかにおしつけられたやくわりは、じょうさまにはにあいませんね』

「………………そう、だな」


 タケダくんと、その後に控えめにソーダくんが、何というか俺の背中を押すような言葉を口にした。

 俺は俺で、うん。いい加減、覚悟は決まってたのかもしれないけどさ。

 よいしょと起き上がって、伝書蛇たちを膝の上に乗せた。まだまだ小さい2匹を、ゆっくりなでてやる。何しろ蛇だからか、ひんやりしてるなあ。


「ありがとな。タケダくん、ソーダくん」

『ぼく、いいたいこといっただけだよ?』

『わたしもですよ、じょうさま。おきになさらず』

「そう言ってくれるから、ありがとうなんだよ」


 本音をぶっちゃけてくれるから、お前らに話をしたのかもしれないな。それで、自分の本音も引き出して。


 俺は、あの人の隣に立ちたい。男とか女とか、とりあえずその辺は関係なしだ。

 白の魔女として、新しい国のトップに立つカイルさんの、その横に。

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