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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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238.都はどこに

 夜が明けて、翌朝。

 食堂で朝から元気に焼肉定食食ってたスオウさんのところに、煮魚定食を持ってカイルさんがやってきた。俺はちょっと離れたところで、朝の焼き魚定食食いながら何となく2人を眺めている。タケダくんとソーダくんも朝ご飯中。むぐむぐ。

 スオウさんは口の中の食いもんをもぐもぐごくんと飲み込んだ後、カイルさんの顔を見て笑った。うん、めっちゃ嬉しそうだ。


「決めたのか。隊長殿」

「ああ。……話を受ける」

「そうか」


 カイルさんは真面目な顔して頷いた。うんまあ、国の名前考えるってことは要するにそういうことだもんな。スオウさんは多分今回も大公さんの全権大使として来てるんだろうし、2人で話するのが一番だろう。つーか、食堂でマジ話始めちまったよ。


「そうなると、まずは都なんだが……」

「都は、ユウゼだと最前線になるぞ」

「そうだな。だが、ギヤまで行くと南すぎる」

「となると、その間か」


 要するに首都の位置、か。

 ユウゼの街はシノーヨよりも北にあって、もうちょっと北上したらすぐコーリマの国境。つまり、黒帝国とガチで戦う場合は確実に最前線になる。そこに首都は置きたくないわなあ。

 シノーヨの都であるギヤは、だいぶ南にある。だから安全っちゃ安全なんだけど、ユウゼからは遠い。一応流通の街なわけなんで、もうちょっと近いほうがいろいろ便利なんだろう。

 こそこそ、するつもりじゃないらしくわりかし堂々と会話してる2人を見ながら付け合わせのサラダを片付けていると、コクヨウさんが「ジョウ、どした?」とやってきた。うわ、スオウさんと同じ焼肉定食だよ。


「あ、おはようございますコクヨウさん。あれ」

「おう、おはよう。……あー」


 俺が手で指した方を見て、あっさり納得してくれた模様。まあなあ、声通るし2人とも。

 なるほど、と頷いた後コクヨウさんは俺の隣りに座って、さっさと朝飯を食べ始めた。それでもカイルさんたちの方をちら、ちらと気にしてるのは分かる。ま、気になるよなと思いつつ俺も食事再開、しつつ聞き耳立てよう。


「……ラモットで受けてもいいぜ?」

「ミイワよりは安全か。では、その線で」

「了解。その代わり、ユウゼには俺の部隊を出す。領主さんに頼んで、ご近所の傭兵部隊にも集まってもらうつもりだ」


 ラモットは、スオウさんの北方軍本部がある街。あそこなら守りも固いし、まあまあ安全だと当たりをつけたわけね。……もう、風呂覗いたりしないよな? 次やったら多分、ネネさんの部下に恐ろしい罰を与えられる可能性があるし。うん。

 肉を片付け終わったスオウさんが、にっと楽しそうに笑った。


「……人種や宗教で分ける気はねえんだろ?」

「苦労したからな。ただ、部隊自体はある程度分けておく必要がある。内側でごちゃごちゃやられたんじゃ、たまったもんじゃない」

「いや全く」


 人種や宗教、か。人種はあれだ、俺みたいな『異邦人』のことも考えてくれてるんだと思うんだけど、宗教て。

 要するに、もともとのイコンのような黒の穏健派は受け入れるつもりなんだろう。俺たちの敵は、シオンを始めとした黒の過激派なんだもんな。……穏健派の人、どのくらい無事なんだろう。ちょっと心配。


「おい、若のこと気になるのは分かるが、先に飯食っちまえ」

「え? わ、すいません」

『まま。かいるおにーちゃんならだいじょぶだよ?』

『すおうさまとだいじなおはなしをされておられるだけですから、だいじょうぶですよ』


 コクヨウさんに声掛けられて、やっと我に返った。伝書蛇たちに見上げられて、どう突っ込もうかと一瞬だけ考えてやめる。確かに、飯食うのが先だ。

 んである程度食べながら、コクヨウさんに聞いてみる。


「……ほんと、めんどくさいんですね国造りって」

「まあなー。だだっ広い荒れ野に立て札立ててここが俺の国、なんてわけにはいかねえしよ」

「そうですねえ」


 なんだよね。国造るってことは国民がいるわけで、住んでる人の問題とか場所の問題とかいろいろ出てくるわけだ。多分、これからもいろいろいっぱい出てくるんだろう。うわ、俺面倒事カイルさんに押し付けちゃった?


「ああ、気にすんなよ。若、結構やる気になってるから」

「はあ……」


 コクヨウさん、何で俺が気にしたの分かったんだろう。もしかして、顔に出てるとかか。やべえ、だいぶ女寄りになってきてたりするか、俺。


「そういや、国の名前どうすんだろうな。お前さん、何か聞いてる?」

「相談はされましたね……相手があれだけど、対抗するのはどうかなって感じで」

「ありゃダサいからやめとけ」


 ですよねー! さすがにあんなネーミング無理だわ、いやほんと。

 何かほっとしたんで、俺はスープを一気に飲み干した。

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