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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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217.東の龍

 気がついた時、周囲は何となく薄暗いような、だけどちょい青っぽい光に照らされたような感じになっていた。


「……どこだ、ここ」


 とりあえず上半身だけを起こす。何かまだぼんやりしてるっぽいな、俺。まあ、特に頭とか打ってることはないみたいだ。


『やれやれ。若いものは無茶をしよるのう』

「へ……わっ」


 うわ、真上から声がした。慌てて見上げると、東洋系龍がこっち見下ろしている。多分、すーちゃんよりでかいと思う。というかこう、幅1メートルくらいの鼻面が手を伸ばしたら触れそうなくらいの近距離でこっち向いてるのはさすがにビビるんですけど。

 でも、綺麗だと思う。東洋系だからこう、蛇みたいな身体がなが~く伸びてるんだけどさ。全体的に青くて、キラキラした感じ。

 ……くるりと周囲見てみると長い身体が俺の周りを取り巻いているんだけど、正直この空間って結界サイズと合ってないよなあ。ま、気にしないことにするか。

 と、また上から東洋系龍が声をかけてきた。


『こりゃ。ポケットから出してやれ、さすがに息苦しいじゃろ』

「え、あー忘れてた!」


 ポケットって、タケダくん突っ込んだままだった。慌てて手を突っ込むと、その手にタケダくんが絡みつくのが分かった。引っ張り出したら涙目だし……ごめん悪かった。


『ぷはー。まま、いきなりぽけっとはしんどいよう』

「ごめんごめん。大丈夫か? タケダくん」

『うん、だいじょーぶー………………わー』


 空白の間に龍見たな、こいつ。涙目のまんまで、ぽかーんと口開けて呆気にとられてる。蛇のぽかーん、ってのもちょっとレアな眺めの気がするけど、まあいいや。

 で、見られてる方の龍はぱちぱちと何度かまばたきして、少しだけ首を傾げた。ただし首自体のサイズがでかいので、結構迫力はあるんだけどさ。


『いかがしたか? 幼子よ』

『……きれー。かっこいー』

「まあ、それは同感だ」

『ほ』


 タケダくんの単純な答えに、思わず俺も頷いた。いやだって、ほんと綺麗だもんよう青い龍ってさ。

 ……あれ、青い龍ってもしかして、もしかするか。


『この、東の空のセイリュウを見て感想がそれとはの。面白い奴らよ』


 もしかしたー。ははは、初対面の印象大丈夫かね、俺ら。




『……なるほど。それでワシんとこに来たわけか』


 ひとまず、ここが『龍の卵』の中であることを確認したところで俺とタケダくんは、青い龍……セイリュウさんに事情を話した。まあ、ついでに神官長さんのこともぶっちゃけちゃったんだけどね。

 しかしなあ、状況考えるとなあ。


「まあ、そうなんですけど……さすがに、この状況で味方になってほしいとは言い難いですね」

『何故じゃ? 確かに太陽神教のトップは愚か者どもじゃが、それでそなたが遠慮する理由にはならんぞえ』

「……とは言っても、俺も彼女も同じ人間ですからね。おまけに、太陽神さんの側についてほしいなとお願いするわけですし」

『無茶する割に遠慮深いのう。これじゃから人間は訳わからんわ』

「ははは……」


 いやまあ、確かに『龍の卵』の中に入っちゃうなんてのは無茶と言わずして何と言う、だけどな。

 つーかこの結界って、中身を魔力のバッテリーにするタイプの結界だよな。そんなところにどれだけ長いこといるのか分からないけど、ずっと閉じ込められてるセイリュウさんに人間の味方になってくれって言うの、何かこっちの都合良すぎじゃね?

 そりゃ、シオンの野望というか黒の神の野望止めるにはセイリュウさんの協力、いると思うけどさ。でもなー。


『ねえ、まま』

「何?」


 俺の腕の中で、タケダくんがぱたぱたと翼を羽ばたかせた。胸を張って、赤い目でまっすぐに俺と、それからセイリュウさんを見て、この怖いもの知らずの伝書蛇はまたもやのたもうた。


『あのね。ぼくは、せーりゅーさんとおともだち、なりたいです』

「は」

『は……』


 外見小娘と巨大東洋龍がぽかん、と目を丸くしてる図。自分では見えないけど、まあ想像はできるよな。いや、変な顔してる自覚はあるぜ。

 というか何というか、こういろいろすっ飛ばしてないか、タケダくんよ。俺、さすがに育て方間違えたか。つかそれで、神の使い魔が説得されると思ってんのかお前は。いやまあ、最初に会ったのがすーちゃんだったからかもしれないけどさ。

 頭ん中ごちゃごちゃしてしまって俺が何も言えないでいるうちに、セイリュウさんがぷっと吹き出した。吹けるんだ、東洋系龍。いやそうじゃねえ。


『ははははは! いくら幼いと言うても、このセイリュウとお友達になりたいとはなあ!』

『あれ? まま、ぼくへんなこといった?』

「いや、お前はそのままでいてくれ……ははは」


 ああもう、ここから性格矯正とか無理だわ、俺。そう思ったからタケダくんにはそう言って、それからセイリュウさんに頭を下げた。


「す、すみません。スザクさんが、割とそういうノリだったもので」

『ああ、あれはなー』


 ありゃ、セイリュウさんちょっと遠い目になったような。もしかして、黒の神側についてた頃からスザクさん、ああいう性格だったのかもしかして。

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