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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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213.資料の一冊

 翌日は、仕事を片付けたらしいテンクウさんが朝から付き合ってくれることになった。ので、手っ取り早くコウリンさんから聞いた話を振ってみることにする。善は急げ、って言うし。


「昨日は別の神官さんともお話したんですが、そこで出てきた話がありまして。それで、図書室の閉架にある資料を見せていただけないかと思ったんですが」

「昨日……ああ、そういえばちょっと用事が立て込んでいたんですよね。済みません」


 俺のネタ振りに、テンクウさんはちょっと考えてから何かに気づいたように目を見張った。昨日俺たちと話した別の神官さん、について思い出したらしい。


「ということは、コウリンに聞いたのですか?」

「はい。そこに重要な資料があったかもしれない、と聞きまして」

「……なるほど、分かりました」


 俺がお願いすると、ある程度は無茶が効くようなので効かせてみた。神官長さんとかテンクウさんとかの、『白の魔女』である俺に対する期待やら信頼やらを利用することになるわけだけど、こっちはこっちで結構重要任務なんだからな。せいぜい利用させてもらうし。


「閲覧の手続きをいたしましょう。許可は……何とかなると思います」

「お願いします」

『おねがいしまーす』


 ぺこ、と頭を下げると、俺の肩でタケダくんも同じように頭を下げた。背後に感じるムラクモのハァハァ気配はまあほっとくとして、テンクウさんも何か苦笑してるのが分かる。ま、白の伝書蛇に頭下げられたらそうなる、らしいな。すごいなあ、タケダくん。




「……まあ、あまり良くは思われていませんね」


 全員で図書室へ移動する道すがら、テンクウさんはコウリンさんのことをぽつぽつと話してくれた。何でも、イコンに住んでいる友達と文通してるのが問題らしい。いるんだ、というか禁止されてないんだ、そういうの。

 つか、そりゃ遠巻きにされるか。ここ太陽神教の総本山だぞ、おい。


「イコンは黒の神信仰の国ですから、そちらに友人がいるというのはちょっと、立場的にも問題がねえ……」

「ユウゼは流通の拠点ですから、イコンの人間とも当然交流はありますが……」


 テンクウさんとアオイさんが、同じような顔をして困ってる。まあ、自分の立場わきまえろとかその辺なんだろうな。めんどくさいよな、そういうのって。


「そういうわけですが、本人は昨日お話したのであればお分かりかと思いますが好人物ですから」

「はい、それは分かります」


 到着した図書室で書類書きながらのテンクウさんのフォローに、俺は素直に頷いてみる。少なくとも、コウリンさん自身はちゃんと太陽神教の神官さんで、お仕事自体もしっかりやってるようだし。……カイルさん、ああいう人と話できてるならまだ気は楽だろうな、うん。

 で、ほんの少しで書類の方の結論は出た。早っ。


「どうぞ。許可が出ましたので、案内いたします」

「ありがとうございます、助かりました!」

「いいえ」


 にこにこ笑いながら、テンクウさんは図書室の奥に手を差し伸べてくれた。遠慮なく入れてもらうぞ、お邪魔しまーす。




 シノーヨと同じく、奥の部屋に通された。テンクウさんは「部外者に見られても大変でしょうから、表でお待ちしておりますね」と出て行ってくれたので、ちょっとほっとする。……これがあっちの世界なら、盗聴器とか隠しカメラとかあってもおかしくないんだけど。こっちだとどうなんだろうな、分からん。

 ま、とりあえず調べてみっか。コウリンさんが整理してた棚をテンクウさんが教えてくれたので、そこら辺をざっとあさってみる。


「これでしょうか。『龍の卵』について書いてあります」


 ムラクモが、古い本を取り出した。パラパラめくって中を確認してから、アオイさんに渡す。さすがに俺は古い文章だと文法が以下省略。シノーヨでだいぶ鍛えられたけどな。

 ざっと中身を見て、アオイさんが眉間にしわを寄せた。美人があれやると、結構怖いんだよなあ。


「ふむ。……『龍の卵』で、この島の魔力供給を全て行っているわけではないようだな」


 ……ん?

 神官長さん、全部賄ってるみたいなこと、言ってなかったか?

 ムラクモもそこに気づいたようで、顔を上げたアオイさん共々お互いに視線を交わす。すぐにアオイさんは本に目を落とし、続きを読んでくれた。


「そもそも、魔術灯などに使われる石は魔力を貯めておく構造になっている石、というだけだ。そこに貯蔵される魔力は、大地の底から湧き出してくるもの。正確に言えば『龍の卵』はその魔力が湧き出してくる場所に安置されていて、一時的に魔力を貯め込んでいる。そこから、島の全域に魔力が供給されている……ということらしい」

「なるほど」

「……そういうことかあ」


 そうか、発電機じゃなくてバッテリーみたいなもんなのか、『龍の卵』って。なるほどなあ。

 しかし、魔力供給賄ってるといえばそうなんだけど、うーむ。


「……お」


 そのまま先を黙読していたアオイさんが、目に止まったらしい文章を言葉にして読み上げてくれた。


「かつて黒の神に仕え、太陽神によって封じられた神の使い魔が魔力貯蔵の任を背負っているとも考えられるが、定かではない」

「マジすか」


 神の使い魔。多分、セイリュウさんのことだ。

 そのセイリュウさんが『龍の卵』として、バッテリー役やってる、のか。使い魔って、そういう扱いもできるんだな。


「使い魔という存在自体、術を使うためには主から魔力を得なければそうそう保たんからな」

『ままにねー、まりょくもらってるんだよー……そーだくん、だいじょうぶかな?』


 アオイさんの言葉に、ぱたぱた翼を羽ばたかせてタケダくんが口挟んできた。いや、俺以外にはしゃーしゃー息吐いてるだけだけど。

 とりあえず、心配症のこいつは安心させとかないとな。頭をなでてやる。


「大丈夫だと思うけど……魔力なくても、とりあえず飯食えば何とかなるわけだし」

『うん。きっとだいじょうぶだよね!』

「……」


 ムラクモ、撫でさせてやるからとりあえず落ち着け。アオイさんの顔がひきつってるじゃねえか、もう。

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