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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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209.好意といえば好意だけど

 一応俺が代表、みたいな形で来たわけなので、話は俺が頑張って進めた。いやもう、こっち来て作った外面がどんだけ役に立つんだよ、ほんと。

 で、レッカさんは噂でしか知らなかった『龍の卵』について聞いてみたところ。


「確かに、『龍の卵』は存在しますわ。ですがあれは秘宝中の秘宝で、ここ数十年はわたしでも目にしておりませんの」

「そうなんですか?」

「ええ」


 実際に存在したのはいいとして、今数十年、つーたな。するとこの人も、アキラさんやシノーヨの大公さんみたく実年齢は相当行ってるパターンかよ。ということはこの厚化粧剥がしたら、怖いことになるのかもしれない。

 も、もう外見にだまされないぞー。そう心の中でだけ、叫んでおいた。


「それに、『龍の卵』はこの総本山全ての魔術灯や送水などの魔力を賄うものでもあるのです。そうやすやすと、お見せするわけには参りませんわねえ」

「なるほど。それは確かに、下手に触るわけにはいきませんよね」


 魔術灯。要するに電灯みたいなもんだけど、こっちじゃそれも魔力を使う。もちろん人のじゃなくて、何か魔力を蓄えた石があるんでそれ使って発電……じゃねえけどまあそういうことらしい。なお切れたら充電というか充魔力もOK。……何で黒の過激派、人間使って魔力集めんだろうなあ。そっちのほうが効率いいのかね。

 で、それに『龍の卵』が使われてる、と。さすがにそれ持ってったら、明かり付かないしトイレの水流れないしと大変なことになるのは分かる。参ったね、どうも。

 と思ってたんだけど、神官長さんは少し考えてから頷いてくれた。


「……ですが、ことはこの世界に関わること。神官たちとも、話をしてみようかと思います。魔術石はそれなりに予備もございますし、ご寄付をくださる貴族や商人の方々にもお力添えをいただければもしかしたら」

「お願いできますか?」

「ええ。ただ、数日お時間をいただきたいの。早文を出しますけれど、お返事をいただけるまでにも時間はかかりますからね。それに」


 まあ、そりゃな。要するに、来るかどうか分かんねえ世界の危機のために施設の発電機よこせ、なんて言ってるわけだし。考えるとわけ分からねえな、おい。

 そんなことを考えていると、神官長さんの言葉の続きが聞こえた。


「コーリマ王城のお話の方も、きっちり伺わないといけませんし」


 う。ま、まあカイルさんはそれで一緒に来たんだけどな。

 てーか、船降りた時にソーダくん預けてそれっきりなんだけど、大丈夫だろうな。ノゾムくんとソーダくんがいるからまだ大丈夫だとは思うけど、あの人どっか天然なところあるから。

 とりあえずそれは置いといて。


「黒の魔女、の話ですね」

「ええ。コーリマは我らの守護下にあるはずの大国。それが懐に黒の信者を招き、ひいては王都崩壊の危機に陥ったとあってはね」

『……かいるおにーちゃん、わるくないのに』


 しゃあ、とタケダくんが小さく息を吐いた。あんまりしゃべるんじゃないよとは言ってあるんだけど、まあ言いたいこともあるよなあ。俺にしか分からないんだけど。

 つーか、それもこれもシオンが悪いんじゃねえか。何か変な方にひね曲がりやがって、あの野郎。


「墓守のスイコも、神殿を守っていたキリキも、それは無残な目にあったと聞いています。コーリマの者には、その詳細を伺わなくてはなりません」


 とはいえ、自分とこの神官さんも被害に遭ってんだからまあ、神官長さんが怒るのも分かるというか。それで事情聞きたいというのもすごく分かるんだけど、でももしカイルさんが、お母さんが『異邦人』だからなんて理由で酷いことされたらものすごくムカつくので、その辺釘刺しておいたほうがいいな。よし刺そう、ぶっすりと。


「カイルさんは、詳しい事情はそこまで知らないはずです。俺たちの隊長でもありますし、あまり無理させないで欲しいんです」

「まあまあまあ」


 そんなわけでそう言ってみたら、とたんに神官長さんの顔がほにゃんとほころんだ。ついでに身を乗り出してきて、俺の手を両手でぎゅっ。


「あなたがおっしゃるのなら、その辺は考慮いたしましょうね」

「あ、ありがとうございます」

「うふふ。お礼されるまでもありませんわ」

「……」


 こーわーいー。アオイさんもムラクモも何も言わないけど、思いっきり引いてるのが分かるー。つか口開かなくていい、絶対良い展開にはならないからー。




 ま、まあこういった感じで、本日の面会はお開きとあいなった。一応、話がまとまったらまた会ってくれるということで、その間はここで過ごすことになる。

 で、部屋を出る直前に。


「お時間をいただける間、総本山の中を存分に見学なさいませ。白の魔女、と巷で噂されるあなたにも、もっと太陽神様の素晴らしさをご理解いただけると思いますわ」


 両手をもみもみならいざ知らず、肩を抱かれて耳元でこんなこと言われた。正直言うと、腰抜けかけてな。身体が男だったら、下半身がえらいことになってたのは想像に難くない。

 芸風がシオンと似てる、ような気がするけど大丈夫なのか総本山。

 大丈夫といえばもう1人、つーか1匹。部屋を出る時に肩の上に乗って、そのままでれんとまるで紐のように引っかかっている、タケダくん。部屋に戻って他の人の目がなくなったところで、聞いてみる。


「大丈夫か? タケダくん」

『……お、おしろい、きついよう』

「聞かないほうが良いか?」

「厚化粧がきついと言ってます」


 アオイさんが気を使ってきたけど、まあ神官長さんに使う気は今日は打ち止めだ、うん。ぶっちゃけるとアオイさんもムラクモも、「だよなー」と頷いた。ですよねー。

 ソファに座ってぐったりしてると、ムラクモがお水持ってきてくれた。


「まあ、とりあえず飲め。しかし、何というか怖かったな」

「悪意とかは感じないんだけどな……」


 アオイさんも手元に水入れたコップ置きながら、すっげえ困った顔になってる。ああうん、分かりやすい悪意とか敵意とかのほうが対処しやすいよねえ。それに比べると、神官長さんのあの反応って。


「どっちかっつーと、ムラクモが使い魔見てああ可愛いはあはあとか言ってるほうが近いっすね。まだムラクモのほうがずっとマシだけど」

「私っ!?」

「うん」


 ま、そういうことだ。ヘコむなムラクモ、人から見たらお前もあんな感じだよ。ははは。

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