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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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203.『異邦人』

 さてさて。

 行き先が女性多めのところに向かうのに、やっぱり男性1人ってのは心細いよねということになってもう1人追加が決まった。つーても行き先が以下略ってこともあり、アオイさんの弟のノゾムくんが選出されたんだよね。さすがに向こうから手は出してこないだろうし口達者ということなので、俺より役に立つかもなあ。

 で、さっさと荷物をまとめて翌日、俺たちは神殿にいた。そちらにいてるお使いの人と合流して、総本山に向かうためである。


「総本山より使いとして参りました、コンゴウと申します」


 ……この人はどっちだ。顔がほっそりしてて整ってる上に、声聞いてもハスキーボイスなんだけど男か女か分からん。俺の着てるローブより長くて、白に金銀や赤い糸で模様が刺繍されているローブはもう、見るからに偉いさんなんですよと主張してるようだ。お使いなんだからそうでもない、とは思うんだけどな。

 ま、どうでもいいか。挨拶されたのでこっちもちゃんとしないと、と思って頭を下げた。


「スメラギ・ジョウです。それと、伝書蛇のタケダくんとソーダくん」

『よろしくー』

『よろしくおねがいします』

「タチバナ・カイルです。コーリマの事情は自分がよく知っておりますので、説明のために同行させていただきます」

「サクラ・アオイです。護衛として同行いたします」

「サクラ・ノゾムです。姉と同じく、護衛の任に就きます」

「ムラクモです。カイル様付きの忍び故、護衛として同行します」

「まあまあ、皆様可愛らしい方ばかりで。神官長様も、さぞ訪問をお喜びになることでしょう」


 うっわあ。性別分からないのに、扱いが分かりやすい。この人、カイルさんには目もくれないよ。

 やっぱり、そういう差別ってあるんだなあ、と気持ち悪くなった。




 今朝神殿に来る前、カイルさんは俺を呼び止めて言ってきたんだ。


「ジョウ。1つだけ、先に言っておきたいことがあるんだ」

「はい」

「君が『異邦人』だということは、なるべく口にしないで欲しい」

「何でまた」


 つい反射的に聞いてしまったけど、そんなこと言われるなんて理由はだいたい相場が決まってる。要は、俺が『異邦人』だってバレるとやばいってことなんだろうな。

 ついでに言うと、この人自分の都合とか考える人じゃないから……てことは、俺の都合が悪いのか。


「まあ、その……要するに、太陽神教の上層部には『異邦人』差別主義者が少なからず存在する。基本的に黒の信者が生贄にするために呼び込んだ存在だから、そのものが穢れているなどという理由をこじつけてな」

「……あー」


 そういうことね。マジ、俺の都合が悪いわ。

 俺はエロ儀式される前に助けてもらったわけだけど、多分シオンは行き着くとこまで行っちまってたわけだし。大体そんなこと言っても向こうが聞きそう……になさそうだな、うん。

 そういや前にもいたなあ、差別してくる人。コーリマの人だったっけか。思い出すだけ気分が悪いんでやめとこ。


「コーリマにいた頃、俺もいろいろあってな。俺がコーリマを出た理由のひとつ、と言っても良い」

「……カズヒサさんのことで、ですか」

「ああ」


 カイルさんが俺を心配してくれるのは、もう第一には彼のお母さんのことがあるから。昔そういう経験があったから、同じような立場である俺にも難題が降りかかってくることはもちろん予想できるよな。


「そういうことだから、君がそうだと知れれば向こうがどんな手を打ってくるか分からない。一応外部には手を回してあるんだが、さすがに総本山にはツテもなくてな」


 手回し早っ。けどまあ、俺もやられてばっかではいないつもりだよ、と主張だけはしておこう。


「ありがとうございます。ま、いざとなったら遠慮はしませんけど」

「そうならないことを祈るよ。太陽神様ご自身は、君のことはお気に入りみたいだからね」

「気をつけます」


 あんた止めないんかい、というツッコミは頭の中だけで済ませておくことにしよう。カイルさんも、総本山にはいろいろ思うところがあるだろうしな。

 でもそうなると、少なくとも向こうにはカイルさんのお母さんが『異邦人』だってことは知られてるわけで、その息子に風当たりが強くなるだろうっていう推測はできた、わけだ。




 しかし、推測通りだったにしても、ほんと分かりやすく『異邦人』差別してきやがんな。冗談じゃねえ、こっちにも考えがあるぜ。こういう性格の悪い相手は嫌いだ。たとえ、本人にとってそれが正義でもさ。


「それでは。港に船を待たせてございますので、そちらにお乗り下さいませ。3日ほどで、総本山に到着いたします」

「はい。じゃあカイルさん、行きましょう」

「ああ」


 案内しようと伸ばされたコンゴウさんの手を取ることなく、俺はカイルさんに声をかけた。周りの皆がびっくりする中、コンゴウさんは困ったように俺を呼ぶ。


「あの、ジョウ様」

「カイルさんは自分の上司であり、そもそも命の恩人です。失礼を働くわけにはいきませんので」

『かいるおにーちゃん、いいひとだよ?』

『かいるさまには、たいへんおせわになっておりますから』

「さ、行きましょうか」

「そうですね。さあさあ、船を待たせているんでしょう? 行きましょうコンゴウ殿」

「は、はいいっ」


 ふん。意図的にこっちがカイルさんを構ってやるよ。こっちに来てから作った外面なめんな。

 タケダくんもソーダくんも、分かってるのかどうかはともかくとしてカイルさんに懐いてるしな。

 アオイさんとムラクモも、何か思うところがあったのかカイルさんのそばにいてくれてる。ノゾムくんが荷物をまとめて持ってくれて……カズヒサさんが元男だったとかはともかく、『異邦人』だったってことは知っててもおかしくないか、そういえば。

 俺が大事にしてる相手なら、向こうさんも少なくとも表向き冷遇することはできない、と思う。裏で何言うかは知ったこっちゃねえが、後でどうなるかも知ったこっちゃねえ。

 出て行く時にでも、俺が『異邦人』だっつーてぶっちゃけてやる。幸い、神の使い魔は割とどうでもいいようだしな、そこら辺。少なくともすーちゃんはそうだったし。シオンが復活させたゲンブがどうかは知らねえけど。

 さて、総本山で眠ってるかもしれないセイリュウさんは、どういう性格やら。

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