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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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202.結局のところこうなった

 10日ほどして、総本山からお手紙持ってお使いの人がやってきた。

 その人はとりあえず神殿に待機してるということで、カイルさんが手紙だけもらって帰ってきた。

 食堂に集まった皆の前でカイルさんは、手紙をびらっと開いて中身ざっと黙読して、眉間に思い切りシワを寄せた。


「はいはい、私が読みますね」


 難しい顔したままのカイルさんから、ラセンさんがひったくるように手紙を受け取った。そうして、一瞬顔を固めた後そのまま内容を朗々と読み上げる。曰く。


「……遠き過去において神に仕えたという使い魔の話、そして黒の気を祓うという類稀なる能力の持ち主である魔術師様のお話を、ぜひお伺いしたく思います。つきましては、この文を持たせた使いの者と共に総本山までのおいでを、ぜひともお願いいたしたいと存じます」


 それ聞いて、テーブルに顔面突っ込んだ俺は悪くないよな? 鼻ぶつけて痛いけど。それと周りの皆、ガン見するんじゃねえ。視線も痛いぜこんちくしょう。


「やっぱりか……ま、そんなこったろーとは思ってたけどよ」

「事実上の呼び出しだなあ……」

「とはいえ、神の使い魔に近づけるチャンスですしね」


 つかあんたら、完全にひとごとじゃねえか。コクヨウさんは脳天気だし、ハクヨウさんはちょっと困ってるみたいだけどそれだけだし、ノゾムくんは微妙にトドメさしてくれるし。

 しかし、ノゾムくんの言うとおりなんだよねえ。つまり。


『まま、またおでかけ?』

『そのようですよ、たけだくん』

「しゃあしゃあ」

『うん、だいじょぶだよかんだくん。ぼくもそーだくんも、ままといっしょだから』

『そうですね。じょうさまのおともですから、だいじょうぶですよね』


 一番空気が読めないタケダくんを筆頭に、しゃーしゃーくねくねと会話するこいつらの言うとおり、またおでかけ、になりそうである。いやまあ、あちこち旅行できるのはいいんだけどさ。観光じゃねえし、また何か面倒起きそうだし。


「で、その続きなんですが」


 と、そこでラセンさんが声を張り上げた。何だ、まだ続きあったのか。


「また、コーリマ王都の汚染に関しては事情を知る者の同行を特に許しますので、神官長様に直接報告をされることをお勧めします……だ、そうですよ」


 何て言うか、微妙に上から目線な文章だなあ。意訳してしまえ。


「神官を派遣してあるはずの王都が真っ黒くなった理由を、許してやるから直接言い訳に来い。ですよね」

「そうなりますね」


 ラセンさんも頷いてくれたんで、この解釈で合っているらしい。

 コーリマ王都にも、当然太陽神殿はあって神官さんもいた。ただ、あそこお城がでっかいんであんまり目立たなかったんだよね、神殿。で、シオンに襲われた後……神官さんも、すっかり色ボケして正気に戻らなくなっていた。これは俺、黒の気落としたから覚えてる。今はどこかの田舎で静養してるはずだけど、どうなったかなあ。

 ま、それはさておいて。


「事情を知る者っていうと……やっぱりコーリマの人、ですよね」

「つーても、双子殿下は国の仕事で忙しいでしょうし」

「陛下や父は相変わらず使い物にならんようだしな……」


 タクトの指摘に、コクヨウさんとアオイさんがふーむと顎に手を当てて考える。王姫様とミラノ殿下をまとめて双子殿下か、なるほどなんて注目すべきはそこじゃねえ。うん。

 で、しばらくしーんとしてた室内の空気が、やがて統一されたというか何というか。


「……何で皆で俺を見る」


 俺とカイルさん除いた全員の視線が、ばっちりカイルさんに向けられていた。見つめられまくってる本人は室内きょろきょろ見回して、それから居心地悪そうにぼそりと吐き出す。


「いやまあ、ジョウが呼び出されてるんなら隊長も付いて行きたそうでしたし」

「ばっちりコーリマ王家の関係者ですし」


 グレンさんが楽しそうに、マリカさんが眼鏡の位置直してからびしすと人差し指立てて理由を指摘する。まあなあ、確かにコーリマの王子様だったけどね、カイルさん。

 で、ついでとばかりにマリカさんは追い打ちをかけてみた。


「隊長がいなくても、ユウゼはしばらく大丈夫ですから、心置きなく一緒に行っちゃってください」

「そのくらいにはお前たちを信頼しているつもりだが。それよりお前ら、俺を何だと思ってるんだ……」

「カイル様はカイル様ですが」

「若だし」

「若ですし」


 ムラクモと黒白双子の答えに、カイルさんが頭を抱えたのは言うまでもなかったり。しかしホント、マジで何だと思ってんだろ。いやまあ、そのくらいには信頼してるってその言葉に、お互いに嘘はないだろうけどさ。

 ふと、アオイさんが何かを思い出したようにカイルさんに問うた。


「総本山って、確か女性多かったですよね」

「太陽神様の神官に女性が多いからな。それが?」

「ではムラクモと、私も同行します。男性の護衛を同行させて万が一のことが起きれば、国際問題ではすみません」


 アオイさん、自分はともかくムラクモも確定かよ。もっとも本人、平然とこっくり頷いてるから良いんだろうけど。

 この際性別はともかく、護衛の名目で誰かが一緒に来てくれるのは正直助かる。太陽神教の総本山なんてとこ、行ってどうすりゃいいのか分からないし、カイルさんと2人とか言われたら……えーそのー、どういう態度を取れば良いのか現在不明。いまいち俺自身、自覚が足りてないらしい。

 ま、そういう意味で言うとムラクモが一緒なのはものすごく嬉しい。伝書蛇挟んで、いろいろ話はできるしさ。アオイさんは……まあ、王姫様と似た性格だし何とかなる……といいな、うん。


「コーリマとシノーヨに、この話は伝えておきますわね」


 ラセンさんの言葉を最後に、本日の会議は終了。

 ……また旅か、確か今度は船だな。

 やべえ、何か船酔いしそう。大丈夫か、俺。

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