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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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194.黒の襲来

 あっと、一応確認しとかないとな。そう思って俺は、大公さんに声をかけた。


「殿下。外が少し黒い、ってタケダくんに言われたんですけど、黒の過激派……です、よね」

「うむ、そのようじゃな。恐らくは、神の使い魔関係じゃろう」


 念のための確認に、大公さんは頷いてくれた。それから、俺とムラクモを見比べて言葉を続ける。


「黒の魔女らしい姿は見えんということじゃから、木っ端どもじゃね。お嬢ちゃんがたはここにいなされ」

「……いえ、出ます。コーリマから数名、行方不明者が出ていまして」


 首を振って大公さんに答えたのは、俺じゃなくてムラクモだった。

 うん。実は、コーリマ王都からシオンがいなくなって俺が黒落としにぺちぺちやってた頃、何人かいなくなってるってのが判明してたんだよな。その中にアオイさんのお兄さん、サクラの家の長男さんが含まれてる。

 吸われて干からびてるならともかくさ、もしかして未だに黒の手先やってんじゃねえかとか、アオイさん気にしてんだよ。

 もし、襲ってきた黒の過激派の中にアオイさんのお兄さんがいたらって思ったら、なあ。捕まえても殺しても、こう後味良くねえっていうか。

 で、大公さんはムラクモの言葉に一瞬だけ考える素振りをした後、すぐに尋ねてきた。


「なるほど。顔は分かるか?」

「私とカイル様が」

「よし、分かった。ただ、あまり前に出んでいいからの」


 ムラクモの答えに、大公さんはOKを出してくれた。彼女かカイルさんで、顔を確認しろってことだな。




「しゃあ!」

「しゃしゃっ!」


 唐突に伝書蛇の声がして、2匹ほどが空飛んできた。……タケダくん、ソーダくん、ここを切り抜けたら飛ぶ練習してみようか、うん。

 それはともかく、渋目の金色っぽい伝書蛇とつやつやした銀に近い灰色の伝書蛇を見比べて、大公さんは満足気に目を細めた。どっちもそこそこ太めで長さも1メートルくらい、しっかりした身体つきと翼をしてる。


「おお。タイシャク、ボンテン、早かったの」

「しゃ!」

「うむ。ボンテンは屋敷を頼むぞえ。客人も力を貸してくださるようじゃが、後ろから撃たれることがあってはならんからの」

「しゃあ!」


 金色の方が指示に大きく頷いて飛んでいったので、こっちがボンテンらしい。すると、居残った銀灰色の方がタイシャクか。


「タイシャクはビシャモンとラセツを連れて、迎撃に参れ。ただし、殺してはならん」

「しゃ?」

「もしかしたら、お客人の知り合いが紛れておるやもしれぬ。それに、口が動かなくてはあちらの目論見や言い分も分からぬえ」

「しゃあ、しゃっ!」


 タイシャクの方も、大公さんの指示にこくこくと頷いた。そのままこっちは、するすると床を滑っていく。

 あっという間に姿を消した蛇たちを見送ることもせず、大公さんは俺たちを振り返った。


「さて、参りましょうかの」

「は、はい」

「承知しました」


 それだけ言ってすたすたと歩いて行く大公さんを、慌てて追いかける。その俺の肩で、タケダくんとソーダくんが何か感心したように話をしていた。


『たいこうさん、すごいねー』

『さすがはくにのおさ、つかいまたちもしじにしっかりとしたがっておりますね』

「……あー、だよなあ。すげえや、ほんと」


 だなあ。ああ、でも俺が感心したのは別んとこだけど。

 大公さんが出したのがあんだけの簡単な指示ってことは、後は伝書蛇たちがちゃんと考えてやってくれるってことだ。使い魔の数が多いだけに、全部大公さんの判断待ちってわけにもいかないだろうし、まあ当然だな。

 ……ん、でもタケダくん、最初にビームぶっ放した時って本人というか本蛇の意志でぶっこいたような。


「どうした? ジョウ」

「あーいや。タケダくんもソーダくんも、俺にはもったいない使い魔だなあって」

「そんなことはないぞ? というか、ジョウでなければその2匹は大人しくついてこない」


 ムラクモにぶっちゃけてみたら、何というか変な感じの答えが帰ってきた。




「しゃあああっ!」

「はっ!」

「おらあ!」

「甘いですよっ!」


 黒の過激派は、ギヤの門を入ってすぐのところ、そこそこのサイズの広場にいた。何か荷馬車みたいのがひっくり返ってるから、商人に化けて入ってきたのかなあ。

 で、黒はやっぱり黒フードの懐かしいスタイルで十数人が剣振りかざして、その後ろから3人くらい魔術師がフォローして突っ込んでこようとしてるんだが、その前に立ちふさがってる者がいる。

 シノーヨの兵士数人にカイルさんとグレンさんとタクト、それからでっかい伝書蛇。チョウシチロウと同じくらいのサイズで、色はさすがにふつーの緑色。ただし何しろでかいので、迫力が違うわー。


「ジョウ? ムラクモも」

「手伝います! 光の盾、いっぱい!」

『むらくもおねーちゃんに、ひかりのたてー!』

『じょうさまにちかづくなー!』


 こっち見たカイルさんに声をかけた後、とりあえずシノーヨ兵とうちの連中に光の盾を張る。ムラクモにはタケダくんからもう1枚、まあ軽装だしなあ。で、ソーダくんはこっそり近寄ろうとしてた黒をビームアタックでぶっ飛ばした。


「やれやれ。わしの国で粗相するでない、愚か者が」


 そんな中、するすると大公さんが進み出る。と、でかい伝書蛇が「しゃあ」と首を下ろしてきた。


「ギヤの守り神、我が使い魔ビシャモンも倒せずして偉そうに暴れるでないわ。小賢しい」


 翼の付け根部分を足場にして伝書蛇……ビシャモンの背中に仁王立ちし、大公さんははっと鼻で笑う。ばさ、と大きく広げられた緑色の翼に重なるように飛んできたすーちゃんの赤い翼が、何か妙に燃える炎みたいに見えたのは気のせい、かな。

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