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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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190.神の使い魔

「しゃああ、しゃー」

「フーテンが来たぞー、皆お昼ですよー」

「……ぷはー」


 小さなベージュの伝書蛇が来たところで、資料ガン見してた俺たちは一斉にうーんと伸びをした。ココらへん、世界が違ってもあんまり変わるもんじゃないらしい。

 とりあえず、この部屋に最初に通されてから5日目のお昼である。いや、ちゃんと夜は客間に帰って寝てるし、そもそも三食お風呂もばっちりついてくる贅沢仕様だぞ。


「朝は9時から夕方は5時までが一応開放時間じゃが、そちらの都合に合わせましょうぞ。お昼は適当な使い魔に呼びに来させますでな、食事はしっかりと摂ってくだされ」


 そういう大公さんのお言葉に甘えて俺たちは、この特別室を夜まで使わせてもらっている。いや、書いてある文章は俺でもどうにかこうにか読めるものが多いんだけど、何しろ向こうでいうところの古文でなあ。今は使ってない単語とか、ちょくちょく出てくるんだよ。

 それと、石版。そのまんまだとまー読みづらいこと。そっちについては、シノーヨの学者さんたちが拓本、とやらを作っておいてくれたので、それを読んでいる。石の上に濡れた布乗せて、上からインクぽんぽんってすると削れた部分、つまり文字が白っぽく浮き出て読みやすくなるんだそうだ。


「拓本を取っておいてもらって助かったな」

「さすがにこのままじゃ読みにくいです……そうでなくても、何か今の字と違うのとかあるし」


 グレンさんは平気な顔して古文読んでるんだけどさ、俺は現代文もまだまだだっつーのに、もう。ちなみにタクトも四苦八苦してる組。まあ、お前さんも古文とか縁なさそうだもんなあ。

 一方さすがは元王子様とそのおつきの忍びというか、カイルさんとムラクモはすらすらと読みこなしてメモを取っている。……伝書蛇をダシにして、教えてもらおうかなー。


「昔と今では、表記方法が違うものがあるからな。ジョウは余計に大変だろう」

「ほんと、大変です。ソーダくんとフーテンのおかげで助かってますけど」

「しゃあ!」


 というか、俺の手元によじ登ってきたフーテンが、えっへんと胸を張った。その横でソーダくんもえっへん。

 この子、大公さんが言ってたように本読むのが大好きらしい。で、その関係で文字も俺より詳しく、きっちり読めるんだよね……ソーダくんも勉強熱心だからそれなりに読めるので、俺は文章読むのをこの子たちに手伝ってもらっている。ちなみにフーテンの方が、難しい言葉も理解できてるようだ。

 タケダくんは……まあ俺が親なんで、普通には読めるけど古代の文章だと難しいっぽい。あー、学校で古文の授業やってた時のこと思い出すよ。何で同じ文字つかって文章書いて意味が違ったりするかねえ。こんちくしょう。


『ふーてんどのは、さすがほんをよくよんでおられますね』

『ほんとだねー。ぼくも、ほんよんでおべんきょうするー』


 にしても、こいつらはまっすぐに出来てるもんだ。

 白の伝書蛇としてぱっと見やたら目を引くタケダくんと、親とアキラさんからいろいろ教わってそれなりに頭のいいソーダくん。互いが互いに羨ましいとか嫉妬とかしてもおかしくないだろうに、素直に相手がすごいなあとか思えるんだもんな。それは、自分たちよりずっと頭のいいフーテンに対してもそうだし。


「しゃ。しゃ、しゃあしゃあ」

『うん、かんたんなほんからちゃれんじしてみるね!』

『がんばってください、たけだくん。ぼくも、おしえられることならおしえますから』


 ……あーやべやべ、ほんとこいつら偉いわ。俺も、いろんな本読んでもっともっと勉強しないと、だなあ。

 でもまあ、とりあえずその前に大事な用件をすませないと、と思い出したのはタクトが声を上げたから、だった。


「ともかく、休憩にしてお昼食べましょうお昼。腹減って目を回してたら、読める文章も読めません」

「おう、そうだな。迎えに来てくれてありがとうよ、フーテン」

「しゃあ!」


 フーテンがもう一度胸を張ったのを合図に、俺たちは席を立った。




 で、まあ5日ほど読んでまとめて、の結果。

 神の使い魔ってのは、合計4体いるらしい。そのうちの1体が、シオンが復活させたゲンブだ。


「北の湖に封じられた使い魔ゲンブ以外に……南の砂に埋もれたスザク」

「西の山の中で眠っているビャッコと、東の海に沈んでいるセイリュウですか」


 封印されている場所は、大雑把にそれしか書いてなかった。とは言え、北の湖がコーリマ湖なのは確実なんだよな。何しろ、ゲンブ出てきたし。


「南の砂は、シノーヨの南が砂漠だからそこだろうな」

「西の山ん中って、イコンですよねえ……」


 カイルさんとグレンさんの顔が、そこでちょっと歪む。俺としてはイコンは北西じゃねえかな、と思うんだが、もしかしたらもっと南側に領土が広がってるのかもしれない。もしくは、昔はそっちにイコンの国があったとか。あーやべえ、歴史も勉強しないと駄目か、俺。

 ムラクモが、ふと顔を上げた。その手元にある手書きの大雑把な地図に、神の使い魔がいるらしい場所はこの辺だって丸が付いている。


「東の海って、もしかしてあれですか。大神殿」

「大神殿?」

「まあ、要するに太陽神信仰の中心部というところだ」


 あ、そりゃ初耳。カイルさん、教えてくれてありがとう。つーか、そういうのってあったんだ。あんまり気にしたことないからなあ……太陽神様拝むときは、ユウゼのレッカさんのいる神殿に行ったりしてるけど。


「東にある島に神殿を構えていてな。街にいる神官は、基本的にそこから派遣されてくるんだ」

「ああ。じゃあ、レッカさんに聞けば何か分かるかもしれませんね」


 なるほど、タクトいいこと言う。とはいえ、ちゃんと教えてくれるかねえ。ゲンブのこと話せば、知ってること教えてくれるかもしれないけど。何しろ、うっかりしたら黒の過激派に余計に力つけるはめになりかねないし。

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