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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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182.飯は美味いに限る

 その夜は、何故か宴会場みたいなところで晩飯になった。シノーヨって、床に座って飯食うのな。

 薄手のじゅうたんの上にあぐらかいて、床にたくさん並べられた皿に乗った料理を手で取って食べる。両手使ってOKで、汚れた手は個人用の水入れがあるから、そこで洗ってねって感じらしい。

 飲み物は、メイドさんに当たる人がこまめに注ぎに来てくれる。アルコールはさすがに遠慮して、ソフトドリンク……というかぶっちゃけ炭酸水だな、もらうことにした。


「あー、やっぱ骨付きの肉は手のほうが食べやすいですね」

「だろ?」


 素直な感想に、スオウさんが満足気に笑って頷いてくれた。いやほんと、箸とかフォークやナイフ使うより手で掴んでがぶり、の方がするする食えるわ。

 手づかみの食事なんで、野菜を春巻きみたいに巻いた奴とかタレついた焼き肉は菜っ葉に包んで食うとか、それなりに食べやすい形になっている。面白いのが主食で、ぶっちゃけるとおにぎり。海苔巻いてないけど、食ったらちゃんと米だった。向こうとは種類違うと思うけど、まあ美味いからいいや。

 俺の隣で一緒に食ってるネネさんが、魚の乗った皿を指して「食べなよ」と勧めてくれた。


「そっちの魚は今朝入ったもんでね。もうすぐ産卵時期で、腹に卵入ってるから美味しいわよ」

「そうなんですか? どれどれ」


 えーと、ししゃもとかワカサギくらいの魚。まるごと食えるくらいにしっかり焼いてあるそれを、頭からぱくりといく。お、ほんとだ、腹の卵が美味い。


「あ、ほんとだ。プチプチしてます」

「だろ?」

「頭まで食べられるのが、もぐ、すごいな、ほむほむ」


 とりあえずムラクモ、食い終わってから感想ぶっこいてもいいと思うぞ?

 なおカイルさんとグレンさんは、その魚とか骨付き肉とか肴にして酒飲んでたり。グレンさんは分かるけど、カイルさんも飲めるんだな。……まあ、そりゃそうか。


「ん? なんだいジョウ」

「いえ。……カイルさん、お酒飲めるんだなあって思って」

「あー。隊長、宿舎じゃあんまり飲まないからなあ」


 コップを傾けてたカイルさん、結構男前なんだよなと思いつつその前に考えてたことを口にする。

 まあ、グレンさんが言った通りで、カイルさんは宿舎じゃあんまりお酒は飲まない。やっぱり、仕事中だからとかそういう理由なんだろうと思うんだけど。


「ああ。弱いわけじゃないんだが、酔っている時に何かあったら大変だからね。普段はあまり口にしないようにしてるんだ」

「そうなんですか」

「ま、今夜は特別だ、特別。何かあって動くのは、お客のあんたらじゃなくて俺たちだからな」


 ……そっか、一応お客さん扱いなんだよな、俺ら。その口実で、やたら飯豪華らしいし。

 いや、スオウさんの部下たちは別んとこで食べてるらしいんだけど、料理するのは同じスタッフなんでまとめて料理すんだとさ。よって、こっちと同じメニューが出てる、らしい。

 メニュー、といえば。


『おいしいねえ、そーだくん』

『ほんとうですね、たけだくん。ゆうぜのごはんもおいしいですが、しのーよのごはんもたいへんびみです』


 俺のすぐ横で、タケダくんとソーダくんはちゃんと伝書蛇用のお料理を頂いてたり。肉メインで、ちゃんとお水ももらってるし。つか、美味しいんだな。良かったよ、お前らにもいいもの食わせてもらえてさ。

 と、ネネさんが2匹に興味津々な視線を向けてるのが分かった。まあ、俺とネネさんの間に2匹いるから、気になるんだろうなあとは思ったんだけど。


「しかし、この子たち仲良いね。一緒に生まれたのかい?」

「あ、いえ。タケダくんは黒の信者に盗まれかけたところで俺とばったり会いまして」


 ネネさんに聞かれて、素直に答えた。ものすごく略してるけど、間違っちゃいないよな。

 で、タケダくんのことを言っちゃったからには、ソーダくんのことも。


「ソーダくんの方は、コーリマの専属魔術師だったフウキさんの伝書蛇のお子さんです。彼の意思で、俺んとこに来てくれました」

「あらあら。白の伝書蛇も目立つけど、そっちの方も大概えらい子だわねえ」


 俺の話を聞いてネネさんは感心したように、2匹の頭をなでてくれた。どっちも『わあ、なでてもらったー』『きもちいいですねー』ってぱたぱたくねくね喜んでるから、良しとしよう。


「あたしらには言葉はわかんないんだけどさ、やっぱり性格とか違うのかい?」

「ええ。タケダくんはまだまだ子供っぽいんですけど、ソーダくんはしっかりしてますね。でも、ほんとに仲良いですよ。寝るときはいつも一緒ですし」

「うんうん、そりゃいいことだ。同じ主を持つ使い魔なんだから、仲悪いのも大変だろうしね」


 何というか、ネネさんの視線って自分の子供見る母親っぽい感じがする。いや、シノーヨのおかん代表なんだろうから当然っちゃ当然だと思うんだけど。

 そこへ、1人でもぐもぐ食いまくっていたタクトが口を挟んできた。


「タケダくんもソーダくんも、ジョウさんのことは大好きなんですよね。少しでも離れると、ものすごく心配そうにしてますし」

「……あー、あん時か」


 タケダくんとソーダくんが、俺から離れたとき。コーリマ王都での、あの時くらいだ。

 あの後、2匹して心配してくれてたんだ。だから、ムラクモと一緒に謁見の間に突入してきて。


「心配かけて、ほんとごめんなー」

『じょうさま、こんごはわたしとたけだくんがしっかりおまもりしますからね!』

『だいじょうぶだよ、まま。みんな、ちゃんとたすけてくれるから』

「……これ、あんたを励ましてんだよね?」

「はい……ははは」


 あーうー、ムラクモだけじゃなくてネネさんにも何か見抜かれてるし。と、とりあえず飯食おう、飯。明日も飛ぶんだから。

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