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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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168.落ち着いたところで

 しばらくの間、シオンとゲンブが消えた空を俺たちは見上げていた。いやだって、チョウシチロウよりでかい使い魔が飛んでったわけだし。飛行機とかがないこっちの世界で、あんだけでかいのが空飛ぶってそりゃびっくりだよ。

 ……って。そのでかいのを、コーリマの王家が封じ込めてたんだよな。シオン、そう言ってたもん。


「……セージュ殿下、カイルさん。王家ってすごかったんですね」

「え?」

「何?」


 思わずそれを口にすると、俺が名を呼んだ2人がこっち見た。いつの間にかムラクモが手を外してるし、カイルさんも平気でこっち向ける。

 まあ、他の皆も俺の方見てるけどな。


「いや、だって黒の神の使い魔封印したんでしょ? それって、すごくないですか」

「なるほど。言われてみれば確かに」


 そう言って頷いてくれたのはアオイさんで、それにつられて皆うんうんと同調する。いや、あのばかでっかいの湖に閉じ込めてたって考えれば、ほんとすごいよな。……やっぱ殴ったのかな。


「とはいえ、今の話は私も初めて聞いた……が、あの父上の先祖であればまあ」

「その父上の子ですが、俺たち」

「まあ気にするな……ん」


 軽く首をひねる王姫様に、眉間揉みながら突っ込み入れるカイルさん。ところで、何気に陛下じゃなくて父上になってねえか、国王陛下の呼び方。ま、事実だから良いけどさ。

 で、王姫様。何で俺の方まだ見てるわけ?


「ところでジョウ」

「はい?」

「とりあえずしまっておけ。女としての嗜みだ」


 そんなことを言いながら、王姫様が指したのは自分の胸元。胸、かと見下ろして、気がついた。襟ぐりがワイドになってやがって、ブラジャー見えてら。そのブラも紐ちょっとずれててさ。

 ああ、さっきエロモードなカイルさんにやられたままだったよ。やべえやべえ、と慌てて紐の位置直して、前をかき合わせる。っておい、なんか変な誤解は……されてないよな?


「あー、すみませんセージュ殿下。気がついてませんで」

「いや、いいんだが。何があった?」

「あ、黒の魔女に襲われまして。ね、カイルさん」

「あ、が、あ……ああ」


 眉間にしわ寄せて微妙な顔してる王姫様に聞かれたけど、とりあえず超大雑把な説明だけ。黒の気吹き込まれたとはいえ、カイルさんは一応加害者だからな。遠慮なく話を振ってやる。

 と言っても王姫様は俺と、分かりやすく挙動不審なカイルさんの態度でだいたい察してくれたみたいだった。にっこり笑って、カイルさんの両肩にぽんと手を置く。


「………………とりあえず、お前がやらかしたらしいことは分かった。カイル、あとでみっちりお説教な」

「……分かりました」


 あ、カイルさん固まった。それからへこんだ。まあ、何というかこのお姉さんには勝てそうにないからなあ。


「それとムラクモ、私が特別に許可するぞ。説教の時は手伝え」

「は、喜んで」


 ムラクモ、そこ喜ぶのか。つか、カイルさんにあれやるのか。縛るのはともかく、特定部位攻撃はやめとけよ?




 ふと、よその方向からどやどやと人が集まってくるような音がして、そっちに目を向ける。あ、先頭に立ってるの、白黒コンビだ。グレンさんやスオウさんもいるから、王姫様たちとは別口でこっち来たんだな。


「隊長、セージュ殿下もご無事で!」

「まあ無事なのは信じてましたけど、今飛んでったの何すか?」

「……ハクヨウ、コクヨウ。皆も……どこから?」


 先頭の2人がつかつか突っ込んでくると、早速カイルさんに詰め寄る。いやまあ、心配で駆け寄ってきたって方が正しいんだけどさあ。

 で、カイルさんの疑問に答えたのは、後ろからとことこやってきたラセンさんだった。タクトやノゾムくんの顔も見えた。よしよし。


「王都の正門から入ってきたんですよ。フウキおじさんが、今際の際に結界を解いてくれて」


 ……いまわのきわ。そっか、やっぱりフウキさん、死んじゃったのか。ソーダくんを置いて。

 いやいや、今しんみりしてる場合じゃねえから。そう思い直したのは、コクヨウさんがさっきの質問を蒸し返したからだった。


「揺れたと思ったら、こっちに何か出てきたんで慌てて来たんですが。あれ、何なんすかね」

「何でも黒の神の下僕、らしいんだが。王家の先祖に封印されていたらしい」

「そら初耳っす。ハク、グレン、聞いたことあっか?」

「いや」


 カイルさんの答えを受けてのコクヨウさんの問いに、ハクヨウさんは即座に首を振った。けど、グレンさんはちょっと考えてからはっと気づいたように顔を上げる。


「……俺は知りませんが、もしかしたらシノーヨなら何か知ってるかも」

「シノーヨが?」

「シノーヨ、というか大公家よね? グレン」

「ああ、はい」


 補足を入れてくれたのは、ネネさんだった。グレンさんが頷くのを確認して、説明を続けてくれる。


「うちの大公家はあんまり後継者争いがなくてね、コーリマより安定して継承してるの。だから、大公家とその周囲になら古代の伝説がうまく伝わってるかもしれないわ。現大公のお祖父様に当たられる方が整備した古文書図書館に、収められていると思う」

「それなら、イコンもそうだな。山奥に引きこもっているのが幸いして、外部からの影響を大して受けてない」

「イコンに情報が残ってるなら、そいつが過激派に流れてもおかしくないか……」


 ネネさん、カイルさん、そしてスオウさんが言葉を続ける。そっか……完全に情報がない、ってわけでもなさそうなんだな。じゃあ、調べれば分かるんだ。

 ……後手に回らなきゃ、いいんだけど。




「……それよりも、まずは王都全体の状況把握と怪我人の手当だ。それと、黒の気を受けた者を手分けして収容してくれ」


 カイルさんが、現実に戻った感じで声を上げた。いやほんと、それ最優先だよね、確かに。


「城下は私が担当するわ。通ってきた感じ、城内よりもまだ影響は薄いから」

「うちも手伝うよ。さすがにシノーヨが、コーリマの城の家探しはまずいでしょ」

「頼んだ」


 手を上げてくれたラセンさんとネネさんに、カイルさんは頷く。ああそっか、王城の隠し通路とか、あんまり他所の国にバレちゃやばいもんなあ。今回はほんと、緊急だったわけだけど。

 で、王姫様が続く。


「城の中は……カイル、ムラクモ、アオイ、ノゾム、ハクヨウ、コクヨウ。お前たち詳しいだろう? 手伝ってくれ」

「分かりました」

「了解っす」


 王姫様が並べた名前は、分かりやすくコーリマ出身者だった。というか城の中詳しいってことは、そもそも王子様だった頃のカイルさんに仕えてたメンバーなわけだ。

 そして……カイルさんは、俺に向き直った。なあ、何で軽く頬、赤くなってるのか聞いていいか。


「ジョウ、行けるか? おそらく、君とタケダくんの力が相応に必要になる」

「大丈夫です。タケダくんもソーダくんも来てくれたし」

「……なあ、伝書蛇の方が大丈夫じゃないみたいだが」

「え?」


 コクヨウさんの指摘に慌てて両方の肩を確認。……おい、もしかしてお前ら。


『ま、まま、ぬしさんおっきすぎて、こしぬけた……』

『わ、わたしもです……』

「ソーダくんまでかよ」


 ……やっぱり、伝書蛇にも腰ってあるんだな。というか、ゲンブとやらのサイズにビビったのかよ、そっちかよと突っ込んでいいかな、お前ら。

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