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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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166.打開

「風の刃!」

「だー、無茶しやがる! 光の盾!」


 全力で盾を広げて、シオンの風の刃を受け止める。跳ね返った魔術で部屋の中はえらいことになってるけど、王姫様ごめんと心の中だけで謝る。

 いや、俺とカイルさんだけならいいんだけど、シオンから見て俺らの後ろにミラノ殿下とゲキさんとイカヅチさんがひっくり返ってるから。あとで王姫様やムラクモにしばき倒してもらうには、とりあえずここをしのがなくちゃならないし。


「黒の……魔女」

「あ、やべ」


 意識戻って周囲を確認していたカイルさんが、どうやらシオンに目を留めたらしい。腰の剣に手を添えたのを見て、慌てて目隠し……じゃ止まらねえな、しょうがないので自分の胸元に頭を抱え込んだ。このやろ、あいつと目え合わせられてたまるか。


「ちょ、ちょっとジョウ!」

「いーから目えつぶっててください! 次あんたが引っかかったらマジ終わりですから!」

「だ、だったらこの姿勢は何とかしてくれ!」

「おとなしくしてろ、この場は俺が何とかするから! 風の刃っ!」


 何かもがいてるけど、さほど気にしないことにする。乳に埋もれて窒息するほど俺の胸はでかくないし、まさかカイルさんも力ずくで引き剥がすことはしねえだろ。俺の腕とか、簡単に折れそうだしさ。

 ほんと、今の状況で次にカイルさんをヤラれたらマジで終わる。もう俺には逆転の目はないし、そもそも体力で敵うわけもなし。俺ができるのは、魔術で何とかすることだけなんだよなあ。


「光の盾! はっ、お前なんぞに何ができる!」

「うっせえな、てめえと対抗できてんだろ! 光の槍ってーかビーム!」


 あー、やっぱり黒の魔女でも光の魔術使えんだとか思いながら物理的攻撃なビームをぶっ放す。タケダくんの得意技だけど、要は光の盾のちっこいやつを敵めがけてぶつけるもんだから結構簡単なんだよね。

 ただし外すと、今みたいに後ろの壁に穴が空いたりするわけなんだけど。ほんとごめん、王姫様。


「は、何もできてねえよ。ここでやるべきことは、ほぼ終わってるからな!」

「ここで?」


 シオンの言葉に、胸元でカイルさんが反応した。……何か息かかるなあ、と思ったらさっきカイルさんに広げられたまんまだったよ。ま、いっか。

 それより問題は、シオンの方だから。


「てめえらなんざ、とっくに用済みなんだよ! やっと解放できるってんだ、てめえら殺して生贄にしてやる!」

「させるかあ!」


 売り言葉に買い言葉、だっけか。とりあえず光の槍返してみたけど、おいシオン。お前、何解放するつもりだ?

 いくら何でも黒の神、とか言うなよな? いや、この程度で解放できる神様とか何かへちょいけどさ。




「……ん?」


 ふと、一瞬だけシオンの意識がそれたような気がした。というか、何か玉座の横というか舞台袖? そっちの方が賑やかな、気が、するんだけど。


「邪魔だよ、あんた!」


 次の瞬間、そっちの奥から槍が飛び出してきた。舞台ってか玉座んとこから飛び降りて避けたシオンの腹をかすめて、反対側の舞台袖に消えていく。で、それを追っかけるように、赤い髪のお姉さんというかおばさんが飛び出してきた。剣も持ってるから、大丈夫か。

 ああ、今出てきたの、ネネさんだ。で、その後にムラクモやら王姫様やらアオイさんやらがどやどやと走りこんでくる。全員女なのは、まあシオン対策だよな。


「な、どこから来た、貴様ら!」

「無論通路からだ。まさか、脱出路を逆走してくるハメになるとは思わなかったがな」


 全力でぶっちゃけてくれたのは、まじ怒りのオーラ背負ってる王姫様。まあ、いろいろあるもんなあ。

 彼女やネネさん、アオイさんたちが武器を構えてシオンを包囲する中、ムラクモだけがたったかこっちに来てくれた。おおう、さすがにカイルさんは放そう。


「ジョウ、カイル様、大丈夫ですか?」

「あーうん、結果的には大丈夫」

「ムラクモ……皆も、よく辿りつけたな」


 一応、アレは伏せておくぞ。カイルさんのためにも。

 そのカイルさんは、ちょっと驚いたようにムラクモを見つめる。というか、王姫様の言ってた脱出路って。


「ゴート陛下は性格上把握する気もなかったようですが、この城には万が一のための脱出路がいくつかあるんです。その1つを、セージュ殿下の案内で遡って参りました」

「……なるほど。陛下は逃げるくらいなら、敵をぶん殴る性格だからな」

「斬るんじゃなくて殴るんだ……」


 いや、俺そこ突っ込んでる場合じゃないよね。というかゴート王、今みたいに脱出路の向こう側から敵が入ってきたら………………やっぱ殴るんだろうな、うん。

 と、ムラクモが気づいたように懐から巾着袋出してきた。で、その口を開ける。


『まま!』

『じょうさま!』

「タケダくん、ソーダくん!」


 中から飛び出してきた2匹の伝書蛇が、俺のちょっと開いた胸元に飛び込んだ。冷たいかな、と思ったけど案外そうでもない。ムラクモの体温で温まってたな、お前ら。

 ってか、ソーダくんの声が分かる?


『おやのあるじさまには、わかれをつげてまいりました。じょうさま、よろしくおねがいします』

「……そ、そっか」


 ソーダくんの言葉に、俺は察するしかなかった。あの後、フウキさんは、多分。


「……シオンのやつ」

「転移だと!」


 思わず愚痴を吐こうとして、アオイさんの声にあわてて顔を上げる。そっちを振り向くと、皆に取り囲まれたシオンの姿が、すうっと消えていくところだった。


『まま、おしろのうら! みずうみ!』

『まちがいありません! てんいさきは、そちらのみなとです!』

「近場だな! みんな、裏の湖の港!」


 タケダくんとソーダくんが、何でか転移先を教えてくれる。俺は翻訳して叫んで、それから立ち上がることにした。

 あの野郎……じゃなくてアマ、追っかけねえと。

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