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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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145.配置とそして王姫の事情

 それから4日ほどで、ユウゼの外にシノーヨの軍隊が到着した。と言っても、街の側に来たのは一部の歩兵部隊と騎馬隊、それに連絡部隊くらいのものらしい。


「本隊はユウゼのすぐ北に展開させている。コーリマから見ると、ラータのちょい南だな」


 宿を別に取ってるわりにちょくちょく宿舎に顔を出してるスオウさんが、今日もお茶を飲みながら笑った。うんまあ、こっちとの連携もあるから顔出しは必要なんだけどね。


「女性部隊をメインに組んであるから、万が一魔女が来てもちいとはマシだろ」

「女性部隊ってあるんですね」

「シノーヨは元々、漁師やら海賊やらが集まってできた国だからな。家を守る母ちゃんたちの方が、陸の上じゃ強いんだよ」

『もちろんだよ。まま、つよいもん』

「亭主どもの留守中に港を襲いに来たよその海賊をな、女だけで叩き潰したって伝説もあるくらいだぜ」

「わあ」


 説明を受けて、納得する。タケダくんはまあ、置いておくとしてだ……何言ってもママ強いもん、で終わりそうだし。

 でもまあ、亭主元気で留守が良い、じゃねえけど。よその海賊を叩き潰したシノーヨのおかん軍団が、ユウゼの味方についてくれるわけだ。これは、黒の魔女を敵に回してる俺たちには実に心強い。

 いや、女性だって陥落する可能性はあるんだけどさ、ひと睨みで落っこちる男よりはマシってかね。その代わり筋力とか、男のほうが強いこともいろいろあるからなあ。


「うちの先祖にもシノーヨの民が入っている、とは聞いたことがあるな」

「……それでですか、殿下強いの」


 えー、俺とスオウさんと一緒に、すっかり回復した王姫様がお茶を飲んでおります。大人しく説明聞いてたのは珍しいな、うん。

 いや彼女、事情把握したら飯食って寝ての繰り返しで、回復するの早いこと早いこと。メンタルもあっさり回復したというか、何というか。


「しかし、シノーヨの血が入っているくせに父上もミラノも弱いものだ。とっとと王都を取り返して、2人ともぶん殴ってくれるわ」

「あーまあ、そうするしかないですしねえ」

「できれば、コーリマ王都には観光で行きたかったんだがなあ」

『ぬしさん、げんきかなあ』


 王姫様の言い分には苦笑するしかないんだけど、でもそうなるんだよな。

 王都が黒の魔女に乗っ取られてる以上、この事態を根本的に打開するには王都を取り返すしかないわけで。コーリマの部隊が味方になってくれる可能性は……うーん、と首をひねる状況だからつまり、ユウゼの俺たちとシノーヨのスオウさんたちとで攻め込むしかない、と。

 外部から見たらコーリマ侵略に見えるかもなあ。外部って、この辺からだとかなり遠いみたいだけどさ。


「ところで、状況をあずかり知らぬ第三国からはこちらがコーリマを侵略するように見えると思うが、その辺はどうしておる?」

「ん、ああ。事情についてはシノーヨ本国と、それからイコンに早馬を飛ばしてある。本国から声明出すだろうから、その辺は大丈夫じゃねえかな」

「なるほど」

「ま、声明出そうが出すまいが、文句言ってくるところは言ってくるだろうが」


 あの、俺すんげえ場違いだと思うんだけど、席外していいかな。だってさ、スオウさんはシノーヨの軍の司令官で王姫様はコーリマの王女様だろ。俺、ただの魔術師だぜ。


「これ、ジョウ。茶の代わりを持て」

「あ、俺も」

「……はーい」


 何だ、お茶汲み係か。いや、お願いだから席外させてー、なんて思いながらもお代わりを持ってくる。

 というかだな、ここは傭兵部隊の宿舎にある食堂だ。つまり、周囲には他の傭兵たちもいるわけで。


「何で俺がお茶持ってくるんですかね」

「むさい男に持ってこられてもなあ」

「ジョウの茶なら安心して飲めるからのう」

『ままのおちゃ、あんしんできるって。わーい』


 あー、さいでっか。元男だって知らねえから、んなこと言えるんだよあんたらは。

 呆れながらお代わり差し出してると、王姫様がカップ受け取りながらニンマリと笑った。


「それに、そなたにこういった話を聞かせることは、無駄ではなかろうと思ってな」

「へ?」

「そなたはカサイ・ラセンの弟子。すなわち、後々には何処かの国や街を守る専属の魔術師ともなろう」

「ああ。そうなった時に俺たちの話は、きっと参考になるぜ」

「……は、はあ」


 王姫様と、それからスオウさんの笑顔に、やっぱり呆れるしかなかった。

 参考になるって、一体どれくらい先の話だよ。まったく。

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