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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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108.服装の事情

 準備なりなんなりしてる間に時は流れて、今日は夏祓いの週の初日。1週間は7日でそれはあっちもこっちも同じなので、正直助かる。

 王都、すなわちこっちの世界では都会に初めて行くことになる。それも女として。しかも基本、目的地が王家の墓地。隊長のお墓参りにくっついていくってことで、さすがに緊張するぜ。服装とかもまあ、それなりにきちんとしたもの着ないといけないし。


「……似合うか?」

『まま、かっこいいよー』


 いやまあ、服装どんなのが良いかマリカさんやラセンさんに聞いたらさ。次の瞬間寄ってたかって着せ替え人形状態になっちまったよ。いやいや、俺はまだまだあの域に達することはできないね。

 それで、夏ってことで明るい緑が基調のローブということになりました、まる。墓参りには喪服とか着ないそうなんで、これで十分いけるとのこと。下着は足りなきゃ、王都のもんは質がいいから買ってこいってさ。どんな顔して買え……って、変な顔しなくていいんだけどな。うん。


「ジョウ、そろそろ行くぞ」

「おう」


 部屋までムラクモが迎えに来てくれたので、気を取り直して荷物を背負う。泊まりの荷物だし、それなりのサイズのリュックサックっつーかこっちだと背負いカバンなんだけど、それを背負った。

 さて、ムラクモの格好が珍しい。いつもの忍びの格好じゃなくて、ネイビー系のワンピースに足元もちょこんとリボンの付いてる靴。髪の毛も一つ結びじゃなくて、ふんわりと下ろしてる。うむ、可愛い。


「ムラクモ、今日はえらく可愛いな」

「そ、そうか?」


 素直に意見を述べると、ぽっと頬を赤らめられた。言ってしまってからあれ、いつもは可愛くないって発言だったかなとか考えてしまったけどとりあえず、ムラクモは今のでいいらしい。


「い、一応任務で行くんだが、カイル様のおそばでお守りする任務だからな。カイル様に失礼があってはいけない」

「そだね。墓参りの護衛だもんな」

「そういうことだ」


 んで、ムラクモのその格好にも一応理由付けはあったらしい。いや、可愛いカッコしたかったから、で良いんじゃないかなと一瞬思ったんだが。ムラクモもカイルさんも性格があれだから、何か理由付けしないとこう、困ったりするのかね。ええい面倒くさい。


「私はともかく、ジョウもよく似合っていて可愛らしいぞ」

「そうか? ありがとな」


 お、反撃された。でもまあ、素直にお礼を言う。

 そもそもこの服装はラセンさんとマリカさんが人で遊びまくった結果なので、俺の責任じゃねえ。それと、他人として自分の容姿を見る限り、可愛い女の子なのは事実なんだよな。それで、少なくとも身内の間では素直に礼を言うことにしてる。よその人の場合はまあ、それなりにそれなりの対応。


『ぼくのままだもん、かわいくてかっこよくてあたりまえだもーん』

「……言ってることは分からないが、全力で褒めてるんだな?」

「……ははは……」


 さすが使い魔スキーのムラクモ。ある程度はタケダくんの言ってること、分かるようになってきたらしい。いや、こいつ基本俺のこと褒めまくってるだけだしなあ。とは言っても、こういう言動じゃないとタケダくんじゃない、っていうか。




「おお、2人ともよく似合うな」


 宿舎の玄関で、ハクヨウさんが待っていてくれた。結局のところ、カイルさんと一緒に行くのはこの3人プラス1匹だけである。まあ、男女ツーペアだしちょうどいいんじゃねえかな。何が。

 で、当のハクヨウさんは、茶色メインに黒で引き締めた感じの上下である。あーうん、ファンタジー世界のちょっと金持ってるけど成金じゃない、かっこいいおじさん風。……ボキャブラリーねえな、俺。


「うわ、ハクヨウさんかっこいい」

「色が地味ではないか?」

「髪が白いから目立つんだよ。それに、俺はこれくらいの方がいい」


 いや、確かにムラクモの指摘通り色は地味めなんだけどさ。こんな感じもかっこいいと、俺は思うぞ。

 で、答えた後ハクヨウさんがちょいと親指で指し示した方を見た。


「皆、準備はできたようだな」

「……あー、カイルさん」

「おお、さすがカイル様だな。よくお似合いだ」


 そっちの方から軽く手を上げながらやってきた、我らがイケメン隊長。オフホワイトメイン、要所に深い赤と金の装飾がついた上下、どこからどう見ても貴族の当主もしくは御令息ですありがとうございました。つーか何だ、普段にもましてぶっ放してるイケメンオーラは。


「……変に派手な格好してもな、あれじゃ迫力負けすんだよ。なら最初から地味にして、部下の体裁保っといたほうがましだ」

「いろいろ考えることあるんすね……」

「な、なるほど……」


 ひそひそ、とハクヨウさんが教えてくれた理由に、俺とムラクモは頷くしかなかった。って、ムラクモ、お前墓参り一緒したことねえの?


「カイル様がお母上の墓に参るのは、王都を出られてからこれが初めてだ」

「え、そうなの?」

「そうなんだ。ま、若も考えるところあったんだろうなあ」


 ムラクモに、そしてハクヨウさんにそう言われて、俺は軽く首を傾げた。はて、何でまたいきなり墓参りする気になったんだろ、カイルさんは。

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