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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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105.いろいろ事情

 街の見回りの当番もまだなので、食堂でお茶を飲むことにする。中途半端な時間だし、ラセンさんはグレンさんやタクトと一緒に領主さんとこに行ってるらしいので魔術の練習もなあ。コクヨウさんとのんびり話できるのも、しばらくぶりだしさ。


「若、里帰りするんだろ。ついてこいって言われたんじゃね?」

「はい。よく知ってますね?」


 お茶と、クッキーがあったのでそれをもらって席につく。コクヨウさんはお酒も好きだけど、さすがに昼間から飲む人じゃないので俺と同じお茶。タケダくんがミルクもらって、嬉しそうにちまちまと飲んでいるその横でコクヨウさんは、そんなことを聞いてきた。俺が頷くと、彼は「やっぱりな」とお茶を一口。


「副隊長がな、若に尋ねられて連れてったらどうだって言ったんだよ。お前さん、黒の神殿とユウゼしか知らないだろ? だからってな」

「アオイさんが?」


 わあ、俺何か全力で気を使われてる? いや、新人に王都見せてこいってだけかもしれないけど。でもまあ、夏の予定ができたのはありがたいことだ。


「後でお礼言っとかないといけませんね」

「いい心がけだ……っととと」

「しゃー」


 慌ててコクヨウさんが、手を引っ込めた。俺に触ったら真っ昼間からそれこそやばい光景になりかけた、んだろうな。タケダくんがミルクまみれの口で威嚇したのが、いまいち迫力ないというか。


「いや悪かった、治るまで触らねえから」

「しゃあ」


 謝るコクヨウさんに、タケダくんは分かればよろしいとばかりにこっくりと頷いた。こっちはこっちで、コクヨウさんが暴走したら容赦なくビームで物理的ダメージ与えてたところだ。一応あんまり使うなって教育はしてるんだけどな、『ままにわるさしたらゆるさないもん』というのは小さい頃から変わってない。

 やれやれ、とため息をつきつつコクヨウさんはクッキーに手を伸ばした。ぽり、とひとつかじりながら言葉を続ける。


「ほんとなら若のお供として俺もついてかなきゃならねえんだが、これじゃあな」

「ああ、王都で出ちゃったら困りますもんねえ」

「そういうこと」


 王都で暴走ぶっこいて女の子にのしかかった日にゃ、どんなことになるか。コクヨウさんが生きて帰れるかどうかわからないし、それ理由に王姫様がカイルさん回収するかもしれない。回収って何だ、言い方。

 そんなわけで、コクヨウさんがユウゼに残るのはまあ賛成だ。今は基本、夜回りくらいしか外出てないはずだし。しかし、いつハナビさんとこ行ったんだか。


「ハクは行くそうだから、困ったらあいつに言ってくれな」

「そうします」


 コクヨウさんに言われてあれ、と思ったけどハクヨウさんは行くんだ。まあ、もともと2人してカイルさんのおつきだったらしいし。どっちかが必ずついていくのはもう、当然のことなんだろうな。




 クッキーがそろそろなくなる頃になって、俺はふと疑問を口にした。いや、何か頭に浮かんできたんで、つい。


「でも、何でかっちり夏祓いの週なんですかね。こっちも仕事あるでしょうし」

「貴族や王族は、暦通りに過ごすのが重要らしいんだよ。国や領地を率いる自分たちが太陽神様から頂いた暦の通りに過ごすことで、治めてる民が神の恩寵を受けられるとか何とか」


 答えを期待してはいなかったんだけど、コクヨウさんはするりと答えてくれた。え、と彼の顔を見直すと、片方しかない目がちょっと笑っている。


「実際にはともかくとしてだ。何だかんだ言っても若も元王子殿下だし、ちゃんとその時期に帰らねえとセージュ殿下の部下辺りがうるさいんだろ。墓参りするのには、王族の許可がいるんだよ」

「元、って思ってるのは本人くらいだと思うんですが」

「まあな」


 俺がはっきり答えたら、コクヨウさんは言葉を濁した。オウインじゃなくてタチバナの苗字を使っているカイルさんに、気を使ったのかもしれない。

 カイルさん自身は、すでに自分はコーリマ王家とは関係ないものと考えてるらしい。だからお姉さんなのに『セージュ殿下』だし、お兄さんなのに『ミラノ王太子殿下』なんだよね、呼び方。名乗ってる苗字もお母さんのものだし。

 でも、お父さんしか同じじゃなくてもお姉さんだしお兄さんだって俺は思うんだけど、まあいろいろあるんだろうな。そのへんは、俺が文句つけるところじゃねえし。

 てか、お母さんの墓参りに王族の許可がいるのか。王族の墓に入れてもらえてるってことなのかな、カイルさんのお母さん。

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