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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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99.王家の事情ただし長女のみ

「……ところで」


 ひとしきり身体を洗い終わって、再び湯船の中。さすがの王姫様も今度はきちんと膝を揃えてくれて、とりあえず目のやりどころには……いや、いい加減おっぱいは慣れるぞ。ガン見はしないけど。


「先程も聞いたが。カイルは部隊の長として、上手くやっておるか?」

「はい。生真面目な上にちょっと優しすぎるかなあ、ってところもあって心配ですけど」


 で、そういえばさっき聞かれてたなあということを思い出して俺は、素直に答えてみた。アオイさんより俺の方が、全力でぶっちゃけられると思ったからだ。


「そうか。性格は変わっておらんのだな」

「簡単に変わる性格ではありませんから」

「だなあ。そういうところが、父には気に入られなかったようでな。それもあってカイルは、国を出た」

「そうだったんですか」


 アオイさんは昔からカイルさんのこと知ってるみたいだから、そうやって答えることができる。そこに続く王姫様の言葉に、そうかと気がついた。

 いやまあ、ちからイズパワーなんて唱えるような脳筋パワフル国王陛下からすりゃカイルさんは何か違うだろ、自分の後継者としては。それ『も』だから、他にも理由はあるんだろうけど。


「父が王として大人しく政治をやっていることに嫌気が差したんでな、私が実権を譲られたんだ。父は今、楽しそうに愛剣をぶん回して北の黒を叩き斬っている」

「……それであなたが実質上の国王になってるんですか」


 はああ、とでっかいため息ついた後の、王姫様の言葉。いやそれいいのかよ国王陛下、マジでタダの戦闘馬鹿だろ。コーリマ王国、そんなんがトップで大丈夫……じゃねえから、王姫様が実質トップ取ってるんだよな、今。

 何というか、他所の国だけど先行き心配だ。そりゃ、カイルさんに戻ってきてほしいよなあ。


「あれも帰ってくれれば私は嬉しいんだがな……何しろミラノは頼りなくて」

「ミラノさんって……ああ、今の王太子殿下ですか」


 あ、そうだ。確か、コーリマ王国にはミラノ王太子って人がいたんだっけ。いや、何しろ王姫様がキャラ濃いせいもあって影薄いんだよね。王姫様自身の口から聞くまで忘れてたよ、うん。


「うむ。私とミラノは双子でな、性別が逆だったらちょうどいいのにとはそれこそ、数限りなく言われておる」

「それだと、王太子殿下も国王陛下に気に入られてない気がするんですが」

「よくわかるな」


 そりゃ分からいでか。つーか、双子ってことは王姫様と同い年、カイルさんのお兄さんってことだよな。それで王姫様と性別逆だったら……ってことは、細身おっとり系とかかね。そら、王様もいまいち気に入らないだろ。


「とは言えミラノは第1王子だし、一緒に生まれた私がこういう性格だからな。父上は私に実務を担わせて王位はミラノに、と考えているようだ」

「ゴート陛下、あくまでも王位は男子に継がせる気ですからねえ」


 はああああ。

 王姫様とアオイさんが、同時にため息。ステレオで聞いても嬉しくねえやな、こういうのってさ。でもはて、王様が男に継がせたいのはともかくとして、だ。


「あのー。継げと言われたら、殿下は継ぐ気あるんですか?」

「めんどくさい」


 聞いてみたら、一言でずんばらりん。どっちみち継ぐ気ねえじゃねえか、王姫殿下。つーか面倒くさいって、今やらされてる実務も面倒くさいんだな、きっと。


「カイルはそういう細かい仕事が得意なんだ……帰ってきてもらえると、私も楽になるんだが」

「いやいやいや。そういうことじゃあカイルさん、戻る気ないですよ完璧に」


 アオイさんじゃきついこと言い難いだろうから、代わりに俺がぶっちゃけよう。何か、そういうの許されてるみたいだし、俺。いや、限度はわきまえてるつもりだけどさ?


「むー……姉が言ってもだめか」

「ダメですねー。あ、権力に任せて無理やり、なんてもっとダメですからね?」

「そ、それは分かっている」


 めっ、という感じでダメ押ししてみせると、王姫様は大人しく頷いてくれた。これもしかして、実はやる気だったとか? やだぞー、いくらムカつくイケメンでもそういうのは。

 ごちゃごちゃややこしい家庭内事情があるとか言うならともかく、今の王姫様の台詞は王姫様自身のワガママみたいなもんだしな。そこは一応、突っ込ませてもらう。

 さて、俺と同じことを考えているのは、脇にももう1匹いた。おけの中で翼広げて、しゃーと元気よく息を吐く。


『かいるおにーちゃんいじめたら、ぼくおこるよー?』

「……この蛇は今、何か言ったのか?」


 うん、王姫様にはしゃー、しゃーとしか聞こえなかったよな。これはまあ、しょうがねえ。通訳してしんぜよう。


「カイルさんをいじめたら僕怒ります、と言いました」

「しゃあ」


 俺の通訳台詞に、タケダくんも全身を大きく使ってこっくりと頷いた。あ、さすがの王姫様が引いたぞ。すごいなタケダくん。


「ぐ……白い伝書蛇にまでそう言われては、絶対しないとしか言えないな……」

「タケダくん、すごいね。殿下にカイル様のことで絶対しない、の言葉を使わせるなんて」

『そうなの?』


 アオイさんの感心してる部分はわからないんだけど、とりあえずカイルさんに無理なことはさせないかっこ意訳、と分かったのでほっとしよう。

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