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暁の都が沈む時  作者: R
8/10

暁の都が沈む時⑧

少年がテントの外へ出てみると、空はまだ真っ暗で、辺りは漆黒の闇に包まれていた。

しかしいくつか置かれた照明用のライトが、テントの付近を明るく照らしていたので、薄らとその周囲の状況は伺えた。


そこには先ほど少年が居た場所と同じように、小さなベッドが沢山置かれた大きめのテントや、

ただ食料だけが入っている小さめのテントなど、大小さまざまなテントがあった。

そしてその周りには知らない言葉で電話をする男性や、地図を見ながら難しそうな顔をしている男性がいる。

その光景を見た少年は、恐らく自分は助かったのだという安堵の気持ちと、

知らない土地で知らない国の者に囲まれている恐怖心が、交互に入り混じっていた。


少年はいくつかあるテントの中でもかなり端の方へ案内されると、

遠くのテントの陰に見覚えのある竜の尻尾の様なものが、ライトに照らされて一瞬だけ光るのを見かけた。

それはとても見覚えのある、綺麗な金色をしていた。


少年は咄嗟に女性の手を離して、竜の傍へと駆け出す。

後ろの方では焦ったように知らない言葉で怒る女性の声が聞こえたが、少年はそれを無視して走り続けると、

やがてその竜も少年の足音に気が付き、テントの陰から姿を現してくれた。

それは少年が少し前に見た竜よりも遥かに小さい体だったが、それでも少年は何かに呼び寄せられるようにして走り続けた。


朝倉あさくらさん!止めてください!」

危機迫る勢いで女性が叫ぶと、近くのテントからすぐに男性が飛び出してきた。

それに驚いて少年が止まると、そこには見覚えのある男性が居たが、すぐにべちゃべちゃとした物によって視界を塞がれた。

「……あれ」

「……あれ?」

テントから出てきた男性と少年を追いかけていた女性は、その光景を見て同時に同じ言葉を発した。


女性は、少年が竜の形をした召喚獣に噛みつかれでもしたら大変だと考え、少年を止めようとしていた。

だがその召喚獣は噛みつくどころか、まるで喜んでいる時の犬のように、少年の顔をペロペロと舐め始めている。

男性は、自分の召喚獣には気難しい面があるので、あまり安易には近づかないでほしいと周囲に伝え、その召喚獣をテントの裏側に潜ませておいた。

しかし女性の悲鳴を聞いて外に飛び出してみれば、そこには見覚えのある少年を愛おしそうに舐める自分の召喚獣、ディルーノの姿があった。

「き、気難しいんですか?この子……」

「え、ええ、まぁ……」

司暮と女性が、気の抜けたような表情で少年の姿を眺めていると、少年はディルーノの熱烈な挨拶から逃げるようにして離れる。

そしてやっとの思いで顔見知りの男性を見つけ、嬉しさのあまりに飛び込むような形で、その男性に抱き付いて行った。


「随分と元気になったじゃないか。」

司暮が少年の肩を抱き止めるようにしてあやしていると、後ろのテントから怜司が姿を現した。

しかし、少年はその異国の言葉を理解できなかったので、怜司に対しては不安そうな表情を浮かべる。

怜司はその不安を払拭させてやろうと、少年の頭を撫でようとすると、

少年はその手から逃れるようにして、司暮の体の陰にすっと隠れてしまった。

今少年が信頼できるのは、自分の国と同じような言葉のトーンで喋れる、司暮だけだった。

「何で俺嫌われてんの。」

怜司が不機嫌そうに言うと、司暮は「子供は正直で良いですね」と笑った。

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