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暁の都が沈む時  作者: R
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暁の都が沈む時④

簡易的な救急箱を取り出そうとしていた男に代って、怜司が倒れそうになった少年の体を抱きしめる。

その小さな体にもう一方の男が呼びかけてみるが、反応は無く、手足は痙攣を起こしていた。

「近くに川が」

小さな携帯型の酸素ボンベを少年の口に押し当てながら、男は怜司に向かって口早にそう告げた。


尋常ではないほどの汗をかいた少年を怜司が抱きかかえ、近くの川へと走って行く。

病院の傍にあった小さな川に着くと、怜司はゆっくりと少年の体を川の中に沈め、自らも体の半分ほどを川の中に沈めた。


一方で酸素ボンベを少年に使っている男が、もう片方の手で、人間の自己治癒力を促進する魔法を使う。

治療を意味する青白い光に包まれて暫くすると、少年はゆっくりと目を開いた。

すると少年は酸素ボンベを嫌うようにして顔を背け、顔の傍にあった川の水を飲もうと、水面に口を近づけようとした。

「飲むな」

その行動を見た怜司は、急いで少年の顔を水面から引き離す。

近くで起こった火災や爆発のせいで、灰や砂ぼこりが混ざった川の水は、とても飲めるような物ではなかった。


代わってもう一方の男が、小さな酸素ボンベを腰のポケットに押し込み、

綺麗な水の入ったボトルのキャップを開けて、ゆっくりと少年に水を飲ませる。

しかし少年は、意外にも力強くその水を欲して飲み続けた。

まるで3日間以上何も口にしていなかったかのように、呼吸をする事も忘れて、ただ只管に水を飲み続けた。

その異常にも近い行動に、怜司は心配そうにボトルを持った男へと視線を送る。

流石に見兼ねた男が少年から水の入ったボトルを取り上げ、優しい声で囁いた。

「大丈夫。落ち着いて。」


それは少年にとって、久しぶりに聞いた自分の国の言葉だった。

しかし自分を抱きかかえている男が誰なのか、そもそもどうして自分がこんな場所に居るのか、

もはや少年には判断がつかなくなっていた。


「私は司暮しぐれと言います。あなた達を助けに来ました。もう大丈夫、安心して…。」


その言葉を最後に、少年はまた眠りについた。

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