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暁の都が沈む時  作者: R
2/10

暁の都が沈む時②

空が砕けたようなけたたましい轟音と衝撃によって、少年は再び目を覚ました。

見ると、辺り一面は真っ暗だった。

のではなく、自分の頭上に大きなコンクリートの柱が倒れて来ていた。

その柱の先は、先ほど開かなかった窓ガラスを突き破って、斜めになって止まっていた。

少年は待ち望んでいた新鮮な空気が少しだけ入り込んで来ているのを感じ、夢中になって立ち上がる。

そして窓枠に残った鋭いガラスの破片が両手に突き刺さるのも気にせず、その窓枠を飛び越えた。


風が心地よかった。酸素が新鮮で嬉しかった。

もはや少年にはそういった思考しか残っていない。

少年が飛び降りた場所は、地上30階ほどある国立高度専門医療研究センターの一室で、とても助かる高さではなかった。

しかし少年はそれすらも気に掛けることができず、ただ酸素を求めて落下し続けた。


グルグルと回転しながら落下していく中で、少年は兄弟との会話を思い出した。

「ねーね!リオンは、いつ飛べるようになるの?」

「うーん…シュティクがもっと大きくなってからだよ。」

「大きくって、どれくらい?」

「うーん…あそこの数字の書いてある紙が、いっぱい捲れるくらいだよ。」

「へ~……。それって、どれくらい?」

「どれくらい、って……」

「なんにち?」

「なんにち!? え、え~っと…あれが1枚30日位だから…いっぱいで……ええっと……。

 ……ってシュティク、まだ10までしか数字分からないじゃん」

「10より、おっきいの?」

「全然大きいよ~。」

「ええ!?リオン、おそーい! もっとはやくして!シュウ、はやくのりたいのー!」

「うるさい……。」

「シュティク、リオンに頑張れって言ってあげたら、乗れるのが早くなるかもよ。」

「ほんと!? リオン、がんばれ!がんばれ!がーんばれっ!」


”がんばれ!がんばれ!がーんばれっ!”

少年は落下していく中で、その声だけが頭の中で響くのを感じていた。

しかしいくら頑張ろうとしても、まだ未熟な魔術師である少年には、空を飛べるうような力はない。


上から見るとマッチの様に小さかった木が、いつしか街灯くらいの大きさになったのを見ると、

少年は自分の最期を悟って、静かに目を閉じた。


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