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プロローグ「勇者、初めて世界を救う……?」

流行りに乗ってついついトリップ

拝啓、天国の父上、母上。

お二人がこの世を去りまして4年、俺は色々なことを経験致しました。


まず、突然この世を去った二人の不在になんとか慣れるか慣れないか、確か葬儀から一週間経ったかどうか……そんな頃のことです。


庭先に並べてあった花壇、母上がよく世話をしていましたそれに、久々に水をやろうとしていたその時のこと。

――――突然俺を囲むように現れた幾何学模様の並んだ円……この時点で意味わかんねえよとお思いのことでしょうがお願いします、最後まで聞いてください。


まあ、とにかくその円にが眩い光を放ち、あまりの眩しさに俺は目を閉じました。



「おぉ……まさか、本当に術式が正確に発動するとは!!」


「流石は姫巫女様にございます!」



急に聞こえてきましたおっさんの声に疑問を持ちながら、ゆっくり目を開けますと。



「急なお呼び出しをお詫び申し上げますわ―――――勇者様」



目の前に居たのは淡いブルーのお姫様みたいなドレスを着た、俺と同い年くらいの女の子でした。

灰色に近い透き通るような瞳、柔らかそうな金髪が肩のあたりで揺れていて……お二人この時点でもう お気づきかもしれません。


そうなんです―――俺の好みドンピシャな女の子だったのです。

あんまりにもドストライクだったので彼女の言葉は俺の耳をドスルーでした。



「突然のことでまだご理解の追い付かないことと思います……しかし我が国の危機を救うには貴方様のお力が―――、あの……勇者様?」


「…………」


「あの……?」



かわいいんですもんだって!

その声も涼やかでまさに鈴のなるような……!



(すっげかわいいとってもかわいいっこんなかわいい子が目の前に居るのになんで俺はじょうろ片手にサンダルに半袖短パンなんだ!てか声もかわいいマジかわいい録音したいすごく録音したいモーニングコールにしたいおはようございます勇者様って)



そこまで考えてはたと気が付いたのです。



「え?」


「はい?どうなさいました?勇者様」


「あぁ……………………………………え?」


「えっ」


「俺、勇人だよ」


「あぁ、勇者様はユート様とおっしゃるのですね」


「そうそう勇者…………ん?」



この美少女今俺のこと勇者様って呼びましたよね?

呼ばれましたよね?

一瞬空耳かとも思いました。

でも流石に俺もここまで言われてスルーできるほど馬鹿じゃありません。



「俺、勇者なの?」


「……はい、貴方様は我が国を救う勇者としてこの度召喚されました。現在我が国……いえ、それでは語弊がありますね、この世界は危機に瀕しています」



少女が言うには、数百年前に封じられた魔王が復活し、現在勢力を広げ各地を襲っているらしいのです。


御伽噺のようなものと考えられていた強大な魔王に対抗できるのは、魔王の伝説と共に語り草となっていた勇者しかいない。

彼女の父である大国ユースラディアの王は(つまりこの美少女は本当にお姫様でした)そのように国の方針を固めたそうです。


ユースラディア王国は宗教大国であり、王家直系の姫は‘‘姫巫女‘‘として国民の信仰の的とされているらしく、彼女らは総じて魔力が高いのだとか。


ええ、ええわかります。

魔力て……魔力て!

そう俺も思いましたが勇者に魔王と出てくればいまさら驚きませんとも、ええ。


ともかく、俺は勇者として召喚されて、この世界を魔王から救わねばならないと、そういうわけらしいのです。



「わたくしは、第一王女、姫巫女序列第一位ディアナ・クレイ・ユースラディアです。勇者様、これからよろしくお願いしますわ」


「俺は……蕪木(かぶらぎ)勇人(ゆうと)。この国の名乗り方ならユウト・カブラギだ」



そこからは紆余曲折ありました。

国の騎士や宮廷魔術師やらに扱かれまくって(幸いにも異世界人効果なのか技術の習得は驚くほど速かったです)、召喚から1年後には師匠達を超えることができました。


万全の体制になった俺による、魔王の勢力が伸びた地域を巡り人々を救う旅が始まりました。

メンバーは、勇者である俺、ヒーラーのディアナ王女、攻撃魔法の使い手ロベルト、タンクのガザ、レイピア使いでエルフのラナでした。


ぶっちゃけた話俺と姫様はいい感じってやつで(いや、本当に疑わしいですがマジです)、姫様にちょっかいかけるロベルトといがみ合ったり、ラナがさり気なくアドバイスをくれたり。

ガザは無口で大柄な男なんですが、子供好きだし料理が上手いので野宿の時は俺らのコックさんでした。

俺は大雑把な男料理だし、姫様は姫様だし。

ロベルトは貴族の坊ちゃんなので当然料理の「り」の字も知りません。

ラナ?ラナの奴、性格は器用なのですがどうも手先は不器用で、料理なんて恐ろしくて任せられませんでしたから。


ともかく俺達は中々良いチームワークでした。

俺やロベルトが突っ込んで、ガザが慌ててタンクの役目を果たすために前に出る。

ラナが臨機応変に対応、姫様が皆のサポートをしてくれるのがお決まりのパターンでした。


そして沢山の死線を潜り抜け、苦楽を共にしてきた仲間達とついに魔王城に到達したのは、旅に出てから3年目のことでした。


手下共は城に来る途中に倒し尽くし、残るは悠々と城で待つ魔王を倒すのみです。

よくあるRPGなら最後のセーブポイントというところでしょうか。



「いよいよだな……」


「ふふっ長かったですね」



城の門を見つめ、ついつい感傷に浸る俺の顔を覗き込むように姫様が笑いかけます。


初めて出会った頃より彼女の髪は伸びていて、より大人っぽく美しく精練されたように感じます。

守られるだけの女の子じゃなく、支えてくれるしっかりした女性に成長しました。



「ちょっとちょっとー、あんまりいい雰囲気作らないでくれる?ほら、あれ建っちゃうよ、ユートの故郷に伝わるあれだよ、『死亡フラグ』だっけ?」


「……ロベルト、邪魔しちゃ悪い。最後かもしれない」


「縁起でもないこと言うんじゃないわよ、ガザ。そこの二人も、感傷に浸るのは後よ」



姫様との思い出を緩やかに辿ろうと思ったのに騒がしい仲間達のせいでちっとも辿れませんでした。

ですがまあラナの言う通り思い出話も色恋も、全部が終わってからでも遅くはありません。


俺達は城へ乗り込みました。


魔王との戦いは苛烈を極めました。

いままでの敵とは段違いの強さです。

しかし俺達はこの数年打倒魔王を掲げてきたのです。

簡単ではありませんでしたが、確実に奴の力を削ぎ落としていったのです。



「これで……ッ、終わり、だァァァァアアアアアアア!!」



最終的に俺の一太刀が奴の身体を貫きました。

長く、辛い、しかし思い出深い旅が、ついに終結したのです。



「ディアナ……やったよ、俺やったよ!」



感極まった俺は思わず彼女を抱きしめます。

思わずなんです、本当の本当です。



「勇者様……!」



姫様も俺を抱きしめ返し、まさに幸せの絶頂――――――――――――その時でした。



見覚えのある幾何学模様に俺の身体は包み込まれたのです。


最後に見たのは突然のことに驚く仲間達、俺にしがみつく姫様でした。









次に飛び込んできた光景は、また随分と懐かしいものでした。



肩のあたりで揺れる金髪、見透かされたような気分になる灰の瞳。

初めてであった時の姫様が、俺の前に立っていたのです。



「初めまして、勇者様。どうか、わたくし共をお救いくださいませ」



今一度、かつての旅を思い出して、それに浸るのは仕方がなかったのです。

色々とわけが分からなかったのですが、最初に思ったことは――――――。



「え、もっかい?ワンモアっすか?」

「……はい?」



とりあえず、旅はまだまだ終わらないみたいです。



短めです。

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