10 やっぱり…
「おはよう。」
2人が席に着くと同時に話し掛けた。
「おはよう。」
「おはよ~!」
千津ちゃんはすごく眠そうで、菜穂ちゃんは逆にすごく元気そうだった。
「ねぇ、2人共。」
「なぁに?」
「何々?」
「あのさ、クラスのグループなんだけど…。」
「あぁ、別に入る気ないよ。優李ちゃんがいれば。ね、菜穂。」
「うん。お姉ちゃんとユウリィがいれば。」
「ゆ、ユウリィ…?」
「あ、ダメだった?」
「ううん。別にいいけど。」
「よかった!私は菜穂でいいよ!よろしくね、ユウリィ!」
「うん。よろしくね、菜穂。」
「よかったね。菜穂、ずっとニックネームで呼びたいって言ってたもんね。」
「うん!」
「あのさ、今日学校に着いてから、ずっと教室内を観察していたんだけど……。」
「何かあったの?」
菜穂が、身を乗り出して聞いてきた。
「あぁ、別に心配して貰う程の事じゃあないから。只ね……」
私は、さっきあったことを2人に話した。
「っていうことがあってさ。もしかして、石田さんって親が偉い人?なんか見下されてたような気がして。」
私が話していると、2人共だんだんと表情が険しくなってきた。
「あの子、中学生になっても変わらなかったんだね。」
千津ちゃんが少し悲しそうに呟いた。
「あの子の父親、篠塚グループの副社長なんだって。」
「やっぱり…。」
「あの子、きっとセイセイに取り入ろうとすると思うよ!ホントいやな感じ!」
セイセイっていうのは、星くんのことだろう。
「私たち、星くんとは小学校が違ったの。あの子、特に親が偉くない生徒には、権力振りかざしていたんだ。一種の女王様状態だったんだよ。」
「それに比べて、セイセイはすごかったよね。モテモテだったし。」
「うん。隣の小学校だったけど、いい話しか聞いたことないもん。」
うん、凄く想像できる。
「大違いだね。やっぱり、性格だね。大物は違うな~。」
「本当!私、絶対にあの子とは馴れ合えない!」
「菜穂が一番嫌いな性格しているもんね。」
「なんだか、分かる気がする。」
「私も。こんなこと言っていると、悪口みたいで悪い気がするけど。」
千津ちゃんが、自嘲するように言った。
「そんな、千津ちゃんは悪くないよ!」
「優李ちゃん……。」
「千津ちゃんと菜穂と知り合って少ししかたってないけど、あなた達が噂や、偏見なんかで人を悪く言う子じゃあないって分かるもの。」
「……ありがとう。」
「…なんか、理由があるの?」
「実は……」
ふいに、チャイムが鳴った。
「あ、予鈴だ。」
「……そうそう、昨日の部活は楽しかったね!」
「うん。お姉ちゃんと、ユウリィを誘ってよかったね!って話したんだよ。」
「ね。あ、今日は部活無いらしいよ。」
「え?そうなの?」
「うん。昨日、先生に聞いておいたの。部活があるのは、月・水・金で、イベントの前は祝日を抜いて毎日やって、朝も朝練するんだって。」
「へぇ…。意外と少ないんだ。」
「らしいね。勉強との両立もし易いからがんばるように、だって。」
「流石、先生。」
「まるで、お父さん!」
3人で笑いあっていると、お父さん…もとい先生が入ってきた。
お父さんww




