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「その子、渡してもらえるかな?」
ああ
やっぱり
こいつだけは
どうしても
「・・・エ、ドヴァ・・・さん」
後ろではユキが恐怖で、俺よりも後ずさっている。
やっぱり、こいつが
「あんたが・・・やったのか」
「そうだよ、世の中で最も危険だった。でも、こうして生きている。奇跡じゃないか」
ヤスオカは自分に勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
キモイ
キモイ
キモイ
「そういえば、君は知っているのかね?僕の研究内容を」
・・・・・・・
朝、実験体が逃げたと聞いたとき
人体実験としか聞かなかった。
というより、皆知らなかったんだ
ただ、流れに乗って探すだけ探して・・・
「しょうがない。君は僕直々の部下だからね。教えてあげるよ」
あいつがこの言葉を発した瞬間、ユキが
ユキが俺から離れた
ユキはそのまま地にへたり込み、俺に恐怖の表情を見せる
ダメだ
その先は
「人体臓器すべてを機械に変えるのさ。内臓も、目も、脳さえも」
ユキの目から光が消えた
もう、俺をも映さない
そうか・・・ユキ
知らなかったんだ
自分がどうなったのか
「その子はとってもいいときに『帰ってきて』くれた。これは絶好のチャンスじゃないか。『外のこと』を人に話される前にすべてを取り替えてしまえばすべて丸く収まる。それに僕の研究の役にも立ってくれる。最高だね!」
この高笑いが、俺の背すじを逆なでる。
俺の足元でユキは小さく泣いた
俺が、「やつら」の関係者だったこと
自分が、もう「人間ではない」こと
二つを一度に
信じていたものを
一度に失った
ああ
どうしてだろう
こんな小さいユキを見て
こんなにも胸が締め付けられる
これも
これも、『そう』なのかな
ヤスオカは自分の演説に熱が入っている。
俺たちへ向けていた足もいつの間にか止まっている。
演説はまだつづく
「そう。まだ終わっていない」
「あの時まだ手をつけていなかったからね」
ヤスオカは人差し指を立て
静かに自分の頭に近付け、トントン、と小さく指摘した。
人間の身体の中で一番複雑で、一番重要な場所
こいつは
本当に
「さぁ、僕の研究内容も聞いたことだし。その子をこちらへよこしなさい」
あいつは再び歩き出した。
それと同時に
車から武装した大勢の人間が出てきた
逃げなきゃ
ユキ
ここにいたら
ダメだ
お前は
元いた場所に
・・・・・・・
元いた、場所
『帰ってきた』んだ
そうだ
ユキがいたのは
ああ
そうか
じゃあ
いいんだ。
ここで
終わりなんだ




