一ヶ月後の下克上
槍先槍牙視点です。
俺が入部してビル倒壊事件を起こしてから一ヶ月。双坂は初めは振り回されているようだったが、少しずつやる気が出てきて部の上下関係がすっかり変わってしまった。
俺があいつに振り回されるなんて……笑える。
逆に俺はやる気がなくなった。何故か五月の終わりらへんになるとやる気がなくなる。
「はぁ~」
ため息を吐くと同時に後ろから襟をつかまれ、引きずられ罵声を浴びせられた。
「ちょっと何寝ぼけてんのよ。ほら、部活始めるわよ」
「うへぇ~、めんどくせぇー」
「何か言ったか・し・ら?」
「な、何も言ってねぇーよ」
放課後はいつもこのように部室へと連れて行かれる。
サボりたいけど今までみんな振り回したし、無理だな。引きずられながらそんなことを考えた。
「槍牙、今日はダム建設阻止よ!」
「えらく大胆な計画だな。裁判されたらどうするんだよ?」
「それはあんたの役目でしょ?」
「はぁ~」
ため息を吐き、つかまれてた双坂の手をはらって部室へと先に向かった。
「しかたねぇから何とかしてやるよ」
「へ~、じゃぁ今から行きましょ」
「ははは……無理言うなよ」
今日は結構無理やらなきゃダメだなこりゃ。心の中でつぶやき、作戦を考えた。
もう作戦を考えてるなぁ俺。俺は結構順応が早いみたいだ。
「こんにちは、槍牙先輩!」
部室のドアを開けるとすぐにあいさつが聞こえた。
相変わらずこの部活は元気あるな。ビル倒壊事件からいきなり入部希望者増えたしなぁ。
「今日の作戦を考えるぞ」
「はい!」
作戦……ダム建設阻止。しかし、そこの住民の許可をもう得ている。こうなると反対運動は無理か……。
なら、絶滅危惧種がいればいいだけだ。それなら手っ取り早い。
「今回の作戦は簡単だ。まず……」
「え!?ちょっとどう言う事よ。ダム建設阻止よ」
「あわてるな双坂。俺だから簡単なだけだ」
「どう言う事よ?」
あぁ、しまったなぁ、俺の秘密をバラす訳には行かないし、どうにかしないと。
「えっとそれはだなぁ、その場所には絶滅危惧種がいるから、それを探すだけだからだ」
必死にごまかそうとしたが、双坂は鋭く、俺の矛盾を突いていた。
「あれ?おかしいわね。それだったら『俺だから』は違うんじゃないの?」
まったくうまく行かないなぁ。
「あぁそれは俺がその絶滅危惧種の生態に詳しいからだ」
「……そう」
何とかごまかし切れた。俺の秘密がバレると厄介だからな。
それから作戦を詳しく伝え、その地域へ行き、作戦を開始した。
作戦はみんなは待機で俺が一人でその動物を探す。それだけだ。
「しっかし、みんなよくこの作戦に賛成してくれたよなぁ。みんなで探した方がいいとか言わなかったし。まぁ、双坂は文句言ってたけどな」
そうつぶやきながら俺は森の奥へ向かった。
別にそこに動物がいるわけじゃない。秘密がバレないように人気のない所が好都合だったからだ。
「ここらへんでいいかな」
俺は絶滅危惧種のオオサンショウウオを思い浮かべ、そして復活・再生・複写・生態系をイメージした。
そして右目の瞳の奥に現れた光を手をかざして取り、地面に落とした。
「生態系に異常が出ないといいな……」
光は大きくなり辺り一面に広がり、オオサンショウウオが現れた。
よし、これで大丈夫だ。一安心すると、ガサガサと足音が聞こえた。
「何だ?」
慌てて振り返ると、そこに双坂がいた。
「……っつ!?」
しまった、見られた。これは言い訳はできない。
「……ちょっとあんた……何してんの……よ……」
「くっ……」