約束
短編です
「その約束、誰としたんだっけ?」
そう問われて、私は何も言い返せなかった。確かに約束をしたことは覚えている。それは確かだし、約束した場所まで覚えている。
友人の顔をまじまじと見て、その約束をした瞬間の記憶が呼び起こされる。
小学生のころ近所の神社で、目の前の友人と一緒に遊んでいた時に、「また明日ね」と言って別れた時、もう一人、友人がいたはずだ。
記憶を遡っても、友人の手と私の手、そしてもう一人分の手を思い出せる。
「また明日って言ってさ、でもその日って、確か」
「そう、私の引っ越し前日で・・・いつも遊んでた神社で・・・・三人でゲームしたんだよね」
「そう。たしか、あの子はゲーム持ってなくて、お互いに交互に貸してあげて、2人対戦のゲームでよく勝負してた」
「そうそう・・・ここまでの記憶ははっきりしてるし、お互いに共通してるのに、どうしてもう一人の子、顔が思い出せないんだろう」
親の仕事の都合で田舎から都会に引っ越して、社会人になって都内で一人暮らしを始めた私と、同じように一人暮らしを始めた友人は、久しぶりに連絡を取り合って、こうして休日にランチをするようになっていた。
話すのは幼い頃の話。あの頃流行っていたゲームは未だに続けている。
「神社って場所がさ、ちょっと怖いよね」
「わかる。あの頃の私達、良くあんな場所で遊んでいたよね」
「ほんとだよ。良く神主さんとかに怒られなかったよねぇ」
「ま、悪ささえしなければ、怒られはしないでしょ~。神様は寛大だよ」
「そうかぁ~。じゃぁいいかぁ」
なんて話して、丁度互いの飲んでいたコーヒーがなくなった。時計を見るともう18時を過ぎていた。友人と話していると時間は一瞬で過ぎてしまう。
「いやぁ、久しぶりに話せてよかったよ~!」
「今度お礼参り変わりに一緒に地元戻らん?」
「いいね、引っ越してから一度も行ってないから、あの辺歩きたいかも!」
「じゃぁ次の休みに」
「おっけ~!」
「またね~」と言いあって、私は友人と別れた。
自宅の最寄に向かう電車の中で、予定を忘れないように、友人のメッセージアプリに日付と時間の提案を書き込んで送ると、ほどなくして返事が来た。
[え、今日って会う日だったっけ?]
「・・・は?何言ってんの?」
確かにさっきまで一緒にカフェで話し込んでいたはずだ。と記憶を遡ってみたが、顔が、思い出せなかった。
写真フォルダを開いて、今日の写真を見てみたけど、どれもカフェの食べ物の写真ばかりで、一緒に行ったはずの友人の顔が映っていない。
[え、来週の休みに一緒に地元の神社行くって話は?]
[え・・・なにそれ]
小学生のころ一緒に遊んだあの子も、今さっきまで話していた友人と思っていた彼女の顔も、どんなに頑張っても思い出すことが出来ない。
過去の友人との写真を見ると、確かにこの顔であったはずなのに、今日会った友人と思っていた彼女の顔が、思い出せない。
「なんなの・・・」
私はいったい、誰と約束したんだろう・・・。
——え~怖すぎ・・・——
でもまぁ、神様は寛大って・・・言ってたもんね・・・。




