声
「人の怨みを買った者には、相応の過程と結末が憑き纏う」。
小さい頃に、或いは、そうでなくとも、あなたも聞いたことがあるかもしれません。
私は、小さい頃に親から教えてもらったのですが、当時は話半分に聞いていました。
これは、私が今の職に就いて、仕事を始めてからの話です。
いつからでしたでしょうか。
声が聞こえ始めたのです。
ささやき声なうえにくぐもっていて、よく聞き取れない。
右から聞こえる日もあれば、左から聞こえる日もある。
周りに誰も居なくても、その声は常に居る。
友達に聞いてみましたが、私にしか聞こえないらしい。
試しに耳を塞いだこともあるけれど、声はずっと聞こえていました。
まぁ、ちょっと気味が悪いけど、生活に支障が出るほどじゃないし、いいか。
と、その時はその声を軽視していました。
ある日。
声が増えたのです。
声の数は、不定期に増えていきました。
それと同時に、声のくぐもりが薄れてきて…って表現でいいのでしょうか?
こういう時なんて表現したらいいか分かんないです…
おっと話が逸れてしまいました、続けますね。
とにかく、段々と声がはっきり聞こえるようになり始めたのです。
それでもまだ、周りのくぐもった囁きノイズの方が大きかったので、「言葉のようなノイズ」程度にしか聞き取れていませんでした。
その頃から、奇妙なことが起き始めたのです。
崖の側を歩いていると、妙に落石が転がってくる。
工事現場からハンマーやスパナなどの道具や部品が降ってくる。
運が悪ければ頭に当たり、血が噴き出して救急車行き。
酷い時にはそこそこの大きさのレンガの角が当たって、頭蓋骨骨折で入院沙汰になったこともありましたね。
でも、それでもまだマシな方だったんです、その先と比べたら。
急に遠方から鋭利な金属片が頭部を目掛けて飛んでくる。
近くの通り魔が矢鱈と私をターゲットにしてくる。
今まで偶然だとギリギリ思えていた事象が、明確に殺意を持ち始めたのです。
それと…声に気を取られて、判断が鈍ったりもしましたね。
けれど、何よりも怖かったのが、さらに日が経つにつれ、言葉がだんだんはっきり聞こえてくるようになり…
ある日を境に、急に全ての声がはっきりと聞こえるようになったことでした。
「許さない」
「殺してやる」
「あんたさえ居なければ」
「一緒に死のうって言ったのに」
「どうしてお前なんかが生きている」
「「「「「「「「「「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」」」」」」」」」」
その後、私は気が狂う前に神社か寺か教会か…とにかく、お祓いが出来そうな場所を目指して、既に半狂乱に陥りながら、お祓いをしてもらった記憶があります。
正直、今でも当時の事を思い出すとゾワッとします。
お祓いを受けてから、五月蝿かったあの声は聞こえなくなりました。
厳密に言えば今でも不定期に増えていますが、ある程度増えた段階でお祓いをしてもらっているので、現状は特に問題は無い、という感じです。
ですが声以外の事象については祓いきれず、少しずつ蓄積されています。
実は今日ここに来る前も、足場用の鉄パイプが頭に当たりそうになりました。
呪いの類なのでしょうか、人を呪わば穴二つという言葉もあるのに愚かな連中ですね。
人の怨みを買った者には、相応の過程と結末が憑き纏う。
私はこの先、どうなるのでしょうね?
この場に居る皆様も、どうか、人の怨みにはお気を付けて。
人間ほど怖いものはありませんから。
――ふぅ。
以上、死神代行シエル・アヴェリーヌの怪談話でしたとさ。
蝋燭は残り99本、それでは次の方どうぞ。




