世界を救ったのに魔物を養子にしたせいで追放されました。
鳴卯と端短による二人のコントだと思って読んでもらえたら良いです。
俺の名前は鳴卯。冒険者パーティの就職支援課のアドバイザーをしている。
そして、今俺の相手をしている人の名前は端短。女だ。最近冒険者パーティを追放されたらしい。
さらにもう一人、子供を連れている。何だそいつは?まぁ、これは後で聞くことにしよう。
「それで、どうして追放されたのですか?」
俺は、ここに来た人全員に聞いてるテンプレの質問を端短に投げかけた。
「はい。この子、実は魔物なんです」
端短は子供を指差して答えた。
「……何だって?魔物?」
「はい。この子と契約をしてしまったがために、追放されてしまったのです」
……ちょっとヤバそうなやつ来たな。
「ええと、どうしてその魔物の子(?)と契約をしようと思ったのでしょうか?」
「この子、街の中で殺気をばらまいていたのです。それで、よく見たら怪我を負っていて、治癒魔法を使って怪我を治癒したのです。そして、その代わりにこの子を養子として迎え入れたのです」
「待て待て待て、街の中にその子がいたのか?なぜ?」
「多分、紛れ込んだのでしょう」
「城壁とか関所とかあるだろ?入る前にバレるって。それに、殺気もばらまいてたんだろ?余計バレるだろ」
「多分バレないと思います。結構な殺気をばらまいていたにもかかわらず街の人はみんな気づきませんでしたから」
鈍感っつーか無能過ぎない?
「それで、多分端短さんがその子に出会った瞬間に襲われたんだよね?殺気ばらまいてたくらいなんだから」
「あ、いえ。怪我してたのでそんなことできません」
「はい?……ってことは?殺気ばらまきまくりの手負いの魔物を見て端短さんは治療をしたのですか?どうして?」
「怪我している人を見かけたら治療するのは当然じゃないですか」
「人なら良いんだけど魔物でしょ?そのあと襲われる心配とか、逃げ出して街の人を襲う心配とかしなかったわけ?」
「あ、大丈夫です。私強いので」
端短は自慢げに胸を張って言う。そういう問題じゃないでしょ。
「賢い人は考えもリターンもなく問題が起きそうな行動を起こさないんです」
「考えならありますよ。治療をする代わりに私の養子として契約をするって。ね?」
端短が言うと、その魔物の子は頷いた。
「いや、あの、ごめんなさい。養子にするって、その子はその契約(?)に了承したの?」
「はい。治療が終わった後に」
「……ん?終わった後?『治療する代わりに養子になってね』って言ってその子から了承を受けてから治療したんじゃなくて?」
「はい、治療が終わった後に『治療した代わりに養子になってね』って言ってこの子から了承してくれました」
「は??それダメでしょ?なんで契約内容提示しないまま事を進めて後出しで契約結ばせようとしてんの?平たく言うと詐欺だよそれ?」
「でも、この子はそれでも了承してくれましたよ」
「了承せざるを得ない状況にしたのは端短さんでしょ??それでよく了承してくれたって言えますね??」
「結果的に養子になってくれてるんで良いんです。ね?」
「うん」
魔物の子が短く、でもはっきりと返事した。これ洗脳じゃない?
「あと養子にするっていうのも意味わかんないんだけど。弟子とかじゃダメだったの?」
「弟子だなんて、私、人にものを教えるのって苦手だし」
「それは養子も一緒だし、より悪くなってない??養子ってつまり自分の子供として迎え入れるってことだよね?弟子なら技を教えるとかで済むけど、養子ならこの世界のルールとか政治とか、平たく言うと義務教育で習うようなことを教えないといけないんだよ?より大変な方向に進んでるって自覚してる?」
「あ、そういうの今まで教えてません」
「あなた毒親?てかそれ以前に何をするために養子にしたわけ?」
「怪我を負ってる子を治療して世話することの何が悪いんですか?」
「それなら完治した後に魔物の森に返すとかいくらでもやりようはあったよね?」
「そんなことしたら他の魔物に襲われて死んじゃうかもしれないじゃないですか」
「そんなこと魔物の森の中じゃ日常茶飯事だけど?どれだけその子に思い入れあるの?」
「思い入れがあっちゃダメなんですか?」
「ダメじゃないよ。まぁ、要は一目惚れして母性が芽生えたってことね?」
「それで良いです」
「あとは、どうしてパーティを追放されたかだね」
まぁ、あらかた予想はついているのだけど。
「私、実は世界を救った最強の魔法使いなんです」
……??????
「えっとさ、3年前の魔王討伐のこと言ってる?あの時3人の英雄が倒したってあるけど、そこに端短さんの名前はないよ?」
「本当はそこに私の名前が載るはずだったんです」
「……討伐前に追放された?」
「いえ、討伐後に追放されました」
……????????????
「えっと、討伐したのは、あの3人の英雄だよね?」
「いえ、確かにあの3人の協力はありましたけど、最終的なとどめを刺したのは私です」
「それ妄想とかじゃなくて?」
「疑うなら今この場で力をお見せしても良いですよ?」
端短がそう言った瞬間、彼女の身体から凄まじい量の魔力が垂れ流し状態になった。めっちゃ圧を感じる。
「……まぁ良いや。とどめを刺したのは端短さんなんですね?」
そう言うことにしておこう。
「そうですよ?あまり私を舐めないでもらいたいですね?」
「すみません。とりあえず気は抑えてください。ほら、そこの養子くんも怯えてるから」
端短ははっとした様子で垂れ流していた魔力を抑える。
「あ、ゴメンね、よしよし……」
端短はその魔物の子の頭を撫でまわした。魔物の子は何となく気持ちよさそうだ。それが本心なのか洗脳なのかは分からないし聞く必要もない。
てか、今更なんだけど親の就職支援の場に息子っつーか養子を連れて来るなよ。羞恥心とか無いの?
「で?魔王を討伐して、どうなったのですか?」
「はい。後日王国で討伐記念パーティを開くことになったのですが、私はもうこの世界の英雄であると称えられると思うともう胸が高鳴って自分でも笑みが止まらなくなって、早くパーティの時間にならないかなーって思って街を探索してたんです」
ここに来て自惚れ感丸出しの発言をするかねぇ?それと……、
「早くパーティーが始まってほしかったのにどうして街を探索していたのですか?」
「だって、それまで忙しくて街の様子なんて全然見れなかったから。『ちょっと用事がある』って言って単独行動してたんです」
……まぁ、それは良いか。
「それで、その後は?」
「そしたら、どこからか殺気が漂ってきて、この子と出会いました」
「その子と出会った話は、さっき聞いたのと同じで良いね?その後の話を聞かせてください」
「はい。その子を連れて城の中に入ったのですが、仲間の一人が大の魔物嫌いで、この子が魔物ってことに気づいてしまいまして、私を殺そうとしてきたんです」
えーっと、まず城に入る時その子が魔物であると城の人は気づかなかったのかっていうツッコミは置いておこう。俺も最初はその子が魔物であるとは分からなかったし。それよりも……。
「大の魔物嫌いだった仲間の一人が端短さんを殺そうとした?突然ですか?」
「はい。『お前は知ってるはずだよな?俺が大の魔物嫌いだってことに。俺は魔物に両親を殺されたんだぞ』って、鬼の形相で」
「……端短は、そのパーティにどのくらいいたのですか?」
「15年くらいですかねぇ?」
「15年も一緒にいたなら魔物嫌いの仲間がいるって当然分かってますよね?どうしてその場に連れてきたのですか?っていうか、もっと言うならどうして魔物を養子にしたのですか?仲間と一緒に行動するなら養子のことも必ずバレますよね?」
こんなの追放されて当然だろ。
「だってこの子困ってたし、追放の言い訳も考えてたし」
ん?あの、いや、『この子困ってた』の話はさっき聞いたから良いとして……、
「追放の言い訳って何ですか?」
「私、世界も平和になったし、そろそろ旅に出たかったんです。魔王がいる間はそんな余裕なかったし。でも、パーティにいると自由に旅ができないじゃないですか。それじゃあ、どうやってパーティから追放されようかなって考えてたんですよ」
「待て、別に追放じゃなくても『私旅に出たいから一回別行動させてくれない?』の一言で済むでしょうが。なんで『追放』に拘ってるの?」
「その方が後腐れないかなーって」
「そのためだけに仲間のトラウマ掘り起こして今までの関係を台無しにするの?後腐れしか残らないでしょ。ていうか、端短さんは国の人から盛大に褒め称えられたかったはずですよね?なんでそれができなくなるような行動をしたのですか?」
「別に良いです。このせいで魔王を倒したパーティが私を除く3人だったことになって私のことは忘れ去られてますけど、大丈夫です。気にしないので」
それ、自分で言ってて虚しくならない?
ていうか、旅がしたいから追放を選んだんじゃなくて、追放されたから旅をすることになったんじゃないの?順序が逆だって。
「……あれ?てか、端短さんは就職相談しに来たんだよね?ここって追放された冒険者がパーティーを探す場所だよ」
「はい、分かってますよ」
「じゃあ、何しに来たの?パーティーにいると自由に行動できないから抜けたんでしょ?」
「そうなんですけど、……そろそろ"夫"が欲しくなって」
……キレそう。
「どこかに、私の"夫"として契約してくれて、それで私の旅に一生ついて来てくれる、そんな人ってここにいないですか?」
「いるワケねぇだろうがこのポンコツがあ!!!」
お読みいただき、ありがとうございます。もし気に入っていただけたなら、評価とブックマーク登録をしてくださるとうれしいです。
感想もお待ちしております。お気軽にどうぞ。
それでは、別のお話でまたお会いしましょう。




