7話:裏庭の花と蝶
ミカにはルル、ルナにはメメがそれぞれに専属として身の回りのお世話をすることになった。
彼女達は小さいながらも熟練したメイドのようにテキパキと仕事をしていた。
「では、お二人ともこちらへ。お部屋に今から案内するッス!」
「案内する…」
二人は前に立つと広い廊下を歩いていくと曲がり角に階段があり、三階へと上がる。いくつかの部屋を通り過ぎて奥の部屋に私たちの部屋は準備されていた。
「ルナさんはココだよ〜♪」
「ありがとう、メメ」
二人は先に部屋に入っていく、続くようにルルが小さな声でミカに話しかけた。
「ミカ様はこちら。」
「ありがとね、ルルさん!」
部屋に入ると広々としたロイヤルルームのような豪華さがあった。装飾品もフローラのこだわりなのか可愛らしさが際立つ。
「大きなベッド……」
(キングベッドというのかなーこんなの初めて横になったけどサイコーの寝心地かも)
「この部屋の物は自由に使ってイイ。」
「あ…ありがとう」
部屋の物ってほとんどが装飾品でトイレとベッドくらいじゃないかと思うほど『自由に使える』物は少なかった。
「晩餐会まではもう暫くかかる。何かあったらこの鈴を鳴らして。」
ルルはミカに鈴を手渡した。使用人ごとに鈴の音が違うらしく、メイド達はそれを聞き分けてるって言うからスゴイ。
「はーい!」
それからボーっと一人で部屋で過ごしていた。だけど、あまりにも暇だ。
現代人にとってスマホが無いというのが、こんなに過酷とは……ミカにとって苦痛タイムが始まる。
「暇……」
ミカはふと大きな窓ガラスを覗き込んだ。
「うわぁ!キレイな庭園が裏側にもあったんだ」
暇を持て余していたミカは悩んだ。あまり動き回るのはマナー違反だと思ったから。だけど、好奇心と『暇』の精神的ダメージに耐えられず、ミカは少しだけと外を目指した。
「やっぱり広い…迷いそう」
廊下にはキレイな花を飾った豪華そうな壺や美術品や肖像画といったものが壁や廊下の隅に並ぶ。
「なんて言うか……金持ちの価値観が分からない」
あまり裕福ではなかったから貴族や金持ちなんていう異次元の暮らしに興味も持てなかった。
「貴族とか王族って大変そう…私には関係ないけど、フローラも苦労してそうだったな」
こんなにも広い屋敷を歩いているのに不思議と誰にも会うことなく外に出た。
「警備関係は大丈夫なのだろうか……まっいいか」
窓ガラスから見た美しい庭園のエリアに入ると見たこともないような花に心を奪われていた。
「綺麗……白、黄、ピンク、赤の花は日本では見たことないかも」
すると、後ろから一匹の大きな光り輝く蝶がミカを通り過ぎた。その背中には美しい模様をしていた。
「蝶……」
手を伸ばそうとした時、ガバッと誰かが掴む手にミカは我に帰った。