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第8話 白い制服の理由

「ミラリス様はジルベール様とどんなご関係なんですか?」


学園の昼休み、食堂でのことだった。セシルが目を輝かせて、私を真っ直ぐに見つめてきた。


「どうって……」

「実は、先週ミラリス様とジルベール様が教室で抱き合っていたという噂があるんです!」 「あ〜……」



あの場面を誰かに見られていたのね。前世でもそうだったけど、女の子は噂話や恋バナが本当に好きなのよね……


「実際のところ、どうなんですか!?」

「普通に友達よ。」 「"まだ"友達だよね?」


私が答えると同時に、後ろから声がかかった。


「ジル……」

「やぁ、ミラ。」


急に話に割り込んできて、ジルは得意げな顔をして平然と私の隣に座った。


「お、お二人はもう愛称で呼び合ってるんですね……」

「それに、"まだ"友達って……これから親密になる予定ということですか?」


公爵令息に少し緊張している様子ではあるが、

2人は私たちの関係を勝手に恋愛に結びつけて、楽しそうにキャッキャとしている。


「本当にそういう関係じゃないし、そうなる予定もないわよ。」

「そういう関係って、どういうことだ?」

「だから、恋人とか婚約者とか、そういうこと!」


ジルは私に恋愛関係の言葉をわざと口にさせて、嬉しそうにしている。

悔しい……言葉にすると、私たちがそんな関係になるところを想像しちゃうじゃない──!


「でも、ミラリス様とジルベール様は、まだ婚約者が決まっていないのですよね?この学園の生徒の8割はもう婚約者が決まっているそうですよ。平民の生徒たちも、学園に入学した時点で魔力量が多いと国から認められています。魔力の少ない貴族と婚約が決まることが多いんですよ。」

「へぇ〜、貴族だけじゃなくて、平民の生徒たちまで婚約者が決まってるんだ。」

「はい、魔力量は遺伝的要素が大きいので、できるだけ魔力の多い相手と結婚したい貴族が多いのです。」


平民が貴族と婚約するくらい、身分より魔力量が重視されているなんて知らなかった……


確かに私には婚約者がいない。魔力量についてどう思っているのかはわからないけれど、地位や権力に強欲な父が、中途半端な男と結婚させようとするなんてあり得ないだろう。

きっと、王族との繋がりを求めているか、選り好みしているんだろうな…



「俺は、ミラとしか結婚する気はないぞ。」

「私は、多分父に決められた人と結婚することになると思うから、他を当たって下さい。」



公爵令息でありながら、自由結婚を希望するジルはここ、アルデリア王国ではかなり特異なことだ。


公爵夫妻は優しい人たちなのかしら?

小説の中ではすでに故人だったからわからないけれど、私の父のように強欲でないのは羨ましい。



「父上にはもう伝えてあるんだ。自分たちの命の恩人であるミラなら、断る理由はないと言われている。」

「ジルベール様は、ミラリス様のことをとても愛しおられるんですね!」

「ああ、まだ本人はその気ではないようだがな。」

「……なぜジルが私をそんなに気に入っているのか、全然わからないわ。」

「だから言っただろ、一目惚れしたんだと」

「そんなこと恥ずかしげもなく言わないでよ」


今日のジルは、何度も私をからかい反応を見て、ますます楽しそうにしている。



「そんなに軽率に言葉にしていると信憑性がなくなるぞ」


ジルの横からアラン殿下がそう言って顔を覗かせた。

身分に関係なく平等にと謳っている学園内では王太子も食堂で昼食を食べる。


「アラン、ミラには近づくなと言っただろう」

「お前に用があってきたんだよ……」

「はぁ、またか」


ジルは要件を言われずとも、殿下の目を合わせると、察した様に溜息をついて立ち上がった。


「すまんが、急用ができた。ミラまた会いにくる」


そう言い残して、まるで風のようにどこかへ消えてしまった。




◇◇◇



今日の講義が全て終わった頃だった。


「ミラリス・カルバンさん、学園長がお話があるとお呼びです。」


教員であるアデル先生が私に声をかけた。


「学園長がですか?」

「はい、こちらへ。」


そう言うと、アデル先生は背を向けて、私に自分の後ろについてくるように促した。

私は先生に従い着いていくと、立ち入り禁止の張り紙のある部屋の前で足を止め、ドアを開けた。


「魔術陣……?」

「転移魔術陣です、今から学園長室にあなたを転移させます。動かず真ん中で立っていてください」


言われたとおりにすると、アデル先生が魔術の詠唱を始めた。

魔術陣が光を放ちながら陣の中の六芒星がくるくると回り、フワッと身体が浮いた感覚がした後、気づくと私は出入口のない豪華な内装の部屋の中に立っていた。


「君がミラリス・カルバンくんだね?」


名前を呼ばれ振り返ると、「学園長 ドミニク・ローレン」と書かれた名札が置かれた、大きな机に座っている肩まである白髪に赤色の瞳を持つ男性がいた。


「学園長、お初にお目にかかります。」


私はカーテシーをして挨拶をする。


「魔法を使え、高位貴族であるというからどんな傲慢な生徒かと思えば……思い込みはいかんな。」


かなり失礼だが、そう思われても仕方ないとおもう。

唯一魔法が使え、生まれながらに地位を持っていれば傲慢になる人間は少なくないだろう。


「学園長が、私を呼ばれていたとお聞きしましたが……」

「そうだったな、そこにかけてくれ。」


そして、私を応接用の大きな椅子に座らせると

学園長は私の制服に目を向けた。


「今日はその制服の色、君の魔力量の話がしたくて呼んだんだ。君も気になっていたのではないか?」

「はい、私もその件についてお聞きしたいと思っておりました。」

「この学園の制服の色は、魔力量が安定する12歳の頃に神殿で測定した魔力量を基準に色分けされる事は知っているね?」

「はい、制服の色は、黒、赤、青、緑、黄の順で魔力量が高いことを示しています。それぞれの色には、対応する魔力量の基準となる数値があり、もし自分の魔力量がその数値を超えると、学園長の魔術により制服の色が変わります。」



たけど、私の制服の色は白だ。

12歳の時の魔力測定では"測定不能"の出たからだろう。

そのことから考えると普通は黄より下、もしくは学園のこの規定の対象外という事だ。


「君の制服の色は、どの色にも当てはまらない白だ。

これは私の勘だが、君の魔力量は黒よりもずっと高く、私の魔術がその力によって跳ね返されたのだと思う。」


それって──


「最初は皆制服の色が白なのですか?学園長が白にした訳ではなく、色が付かなかったという解釈の方が正しいのでしょうか?」

「その通り、君のその制服は色がない。私の魔術は歴代の学園長から受け継がれてきたもの……ここからは公表する必要がなかったから明かしていなかったが"2500以上"と上限がないように聞こえる最高色の黒、実は上限が1000万と決まっている。」

「1000万……この世界の人間、魔物でさえ魔力量が1万を超えるものはほぼ居ません、まさか私がその基準より遥かに高い魔力を持っていると言いたいんですか!?」

「そのまさかだ。」


この世で1番魔力量が多いと言われている古代魔竜でさえ、魔力は3万程だと言われている。


学園長は、私がそれより遥かに高い1000万以上の魔力量を保持しているといいたいの?!


「私が黄より下という可能はありませんか?」

「それはないな。この学園は王に認められている、不正にこの学園に入学しようと思う貴族等を排除するために黄以下の人間の制服は全てグレーになるようになっている。白にはならない。」

「それでも私は……自分がそんなに人間離れしている膨大な魔力を持っているなんて思えません……」



それに、私が知っている小説の物語の中では

学園の制服の色なんて主人公の王太子殿下の強さを目立たせる言わば、飾りのようなものだった。


それで言ったらジルも……制服の色が殿下より上の黒色だなんてそんな設定あったら覚えているはず……


そして、学園長はさらに私を驚愕させる一言を口にした。


「人間ではないとしたら?」





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