第4話 秘めたる魔法
あれから3日が経った。
結局、私はまた王城に呼ばれていた。
前回ついてくることのなかった、侯爵である父と私を心配したお兄様も一緒にだった。
「まったく、どうしたら短期間に国王直々に城に呼ばれるんだ。お前陛下に粗相をしたんじゃないだろうな」
「父上、ミラリスがそんなことするはずありません、
ミラリスは心当たりはある?」
「いいえ」
父がいる時の私は人形だ。
お兄様がいるけれど、人形モードの私は微笑み大人しく最低限の言葉を発するだけだ。
私がどうなろうと興味がない両親とは家に影響がありそうな時だけ顔を合わせる、それだけの関係。
私を産んだだけの両親だ。
なぜ産んだのか……
私はそれがいつも疑問だ。
__きっと小説の中のミラリスも……
父とお兄様は、私が起こした魔法騒ぎを伝えていないが、噂は聞いていると思う。
その発端が自分の娘・妹と知らずに……
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「国王陛下 ご機嫌麗しく存じます。 ミラリス・カルバンでございます」
「ミラリス、また呼び出してしまって悪いな。フリッドとユリスもご苦労」
「とんでもございません」
フリッドとは父の名だ。
父とお兄様はよく王城に出向いているから
陛下とはよく顔を合わせているらしい。
「今日、お前を呼び出した理由はわかるな?」
「……はい」
「星の光の様なブロンドの髪を持つ魔法使いの美少女がいると王都では噂になっているぞ」
私の顔は相当美形に作られている。
小説の中でも"顔だけの侯爵令嬢"と呼ばれていたくらいだ。
侍女たちに綺麗に手入れされたブロンドヘア……
そして、その条件に合う王城へ訪れていた私。
必然的に私だとわかるだろう。
「はい、街で魔法を使ったのは私でございます」
「そうか、では治癒魔法を使ったと聞いたが他にはなにか使えるか?」
「今のところ火、水、風、浮遊魔法が使えます、少しづつできることが増えていったので今後も増えるかもしれません」
「フリッドから可能性については聞いていたがこれ程とはな……」
顎に手を添えながら難しい顔をする陛下の言葉で気が付いた。
父もお兄様も私が魔法を使えること、何一つ驚いていない。
寧ろお兄様の顔は強ばって辛そうな表情をしているように見える。
私が魔法を使えることを知っていたの?
「ミラリス、あまりその能力の事は知られないようにしなさい。悪用されることも考えられるからな」
「承知しました」
2度目の謁見も意外にもあっさりと終わった。
ただの確認程度のもので、本当なら実験材料にされても、国民の為に能力を使う事を強要されても仕方がないのに……
一体陛下は何を考えているのだろうか。
侯爵家に帰るための馬車に乗り込むが
あまりにもいつもと変わらずな態度の父と
何も聞いて欲しくなさそうな顔のお兄様……
大好きなお兄様の気持ちを押し潰してまで聞きたい話ではない。
異質なものは目立ってしまう。
これからは魔法はあまり使わぬように生きていこう。
◇◇◇
そして12歳になった時、神殿で魔力測定を受けた私の魔力量は《測定不能》であった。
平均で30~50、王立魔術学園への入学義務が発生するのは200以上だ。
測定不能の私は入学義務がないはずだったが、前例がないため陛下に報告がいくと魔法のことがあるからか、私にも入学義務が課された。
小説の中の私もこの学園に通っていたのだ。
こうなることは必然だ。
◇◇◇
15歳、王立魔術学園に入学する時がやってきた。
ここは小説のメイン舞台、大きく無駄に豪華な門の前に立つと実感が湧いてくる。
「避けられないことはわかっていたけど……いよいよここまできてしまったのね」
あれから魔法は1度も使っていない。
魔術も少し勉強したが、平均が分からないけど多分それなりに使えてると思う。
陣を書いたり、詠唱をしたり使い勝手は魔法と比べると悪いけど、大体魔法と同等のものを発動できた。
10歳で二度思わぬ所で目立ってしまったが、あれから5年は大人しく過ごしてきたんだから
__この学園生活も目立たず何事もなく絶対に生き抜いて早く自分らしく生きるんだから!