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第21話 キンリーへ





私たちはアルデリア王国の最北の街、キンリーにある魔女の家に向かうことになった。


「でも、本当に良かった。学長が自分が勧めたことだからと、実技の点数に影響がないようにしてくれるなんて」


学園長は、私たちが魔女の家に行くことを勧めた人物だ。課外授業の一環としての扱いになり、私たちの実技点数は減点されることなく進められることになった。


「別に気にしないで良かったのに」


馬車の中で、私の隣に座っているジルが頭を私の肩に預けてきた。彼の体温が心地よくて、私は少し驚きながらもそのままじっとしていた。ジルの息遣いを感じると、心が安らいでいくのがわかる。


「ジル、甘えん坊ね」

「普通だろ」


ジルは平然を装いながらも、少し照れくさそうな表情を見せているのがわかる。その顔が可愛くて、つい笑いがこぼれそうになった。


「付き合ってくれてありがとうね。ここから五日以上もかかるのに……」

「一人で行かせる方がありえないからな」


ジルが少し微笑みながら答えてくれる。その笑顔に、私は少し照れたように顔を伏せた。


「公爵夫妻に何か言われなかった?」


私は、まだ公爵夫妻に挨拶していない。

公爵夫妻は会いたいと言ってくれているようだけれど、恋人の両親だと思うと緊張してしまう。


「大丈夫だ。あの人たちは反対するようなことはしないしな。ミラこそ、家族にはなんて言ったんだ?」

「お兄様には魔女の家に行くことだけ伝えたわ」


学園長に勧められたことを理由に魔女の家に行くことを伝えた。でも、お兄様はまた酷く辛そうな顔をしていた。まるで、10歳のあの時のように……


「親には伝えていないのか?」

「伝えたけど、あまり興味なさそうだった。でも、それは昔から」


ジルが少し切なそうな顔を見せた。

まるで自分のことのように思ってくれているのが伝わった。


「それより!リア様はあのあと大丈夫だった?」

「ああ、数時間後には、今更過ぎて悩む時間の方が無駄だったって言ってた」

「ふふっ、よかった。リア様らしい」


長い道のりの間、私たちは楽しく話をしたり、少し眠ったり、時には少し甘い雰囲気になったりして過ごした。丸一日が過ぎ、ようやく宿に到着した。


「えっと……私たち、同じ部屋に泊まるの?同じベッドで寝るの……?」


宿の受付をジルに頼んだところ、私たちの部屋は一部屋しか取っていなかった。私は驚きながらも少し不安な気持ちが湧いてきた。


ジルは私が何に不満なのか全くわかっていない様子。無邪気な顔で私を見ている。


「嫌か?」

「いやって言うか……ジル、大丈夫?」

「大丈夫とは?」


ジルが少し首をかしげ、私を見つめてきた。その視線に、またドキッとする。


「いや……だから、ジルは我慢できるの?」


私が恥ずかしそうに語尾を小さくすると、ジルが少し悪戯っぽく笑う。


「我慢?何の我慢だ?」


ジルは絶対にわかっていて、私に言わせようと挑発してきた。私は赤くなりながらも言葉を絞り出す。


「だから……ジルはキスよりもっと親密なこと、ベッドが一緒でも我慢できるの……?」


顔が真っ赤になっているのが自分でもわかる。

その瞬間、ジルも少し頬を染めたことを私は見逃さなかった。ジルは誤魔化すように笑いながら言った。


「ははっ、悪い悪い、からかった。大丈夫だ、まだしない。今子供でもできたら大変だろ?」

「子供……?」


その言葉に、私は少し考え込んでしまう。前世では避妊が当たり前だったけれど、この世界では避妊という概念がまだ浸透していないようだ。


「ごめん、私ったら……」


「謝るな、俺がすぐにでもミラをベッドに引きずり込んで乱れさせたいのは本当だから」


「……!」


ジルの大胆な発言に、私は思わず驚いてしまう。そんなこと言ってきたジルが、私の顔をじっと見つめて、嬉しそうに笑っている。


「その……いつかね」


その夜、私たちは甘い雰囲気の中で過ごし、抱きしめ合ったり、唇を重ねたりした。

お互いに愛を伝え合い、今できるだけの精一杯の愛を感じていた。ジルの体温が私の背中に伝わり、心が温かくなるのがわかる。


◇◇◇


そして、馬車移動を初めて三日が経った。


「ここからは歩いて行くしかないのね……」


目の前に広がるのは真っ白な雪の世界。

空からは静かに雪が降り続いている。

雪の中を進んでいくと、少しだけ緊張が走る。


「まだ天候は穏やかな方だ。吹雪の時も多いみたいだからな」


魔女の家は、キンリーの山と山の谷間に存在していると言われている。私たちは、山を一つ越えなければならない。


「今日は半分も進めないだろうから、山の中間にあるらしい小屋を目指そう」


ジルがそう言い、私は少し体力的に不安になった。でも、ジルの声が安心感を与えてくれて、頑張らなきゃと思った。


これからは体力的に厳しい旅になるだろう。今、雪が強くならないことを祈りながら歩き始める。


そして、ふと私はあることを思いついた。


「ジル、荷物貸してくれる?」

「ん?ああ」


ジルから最小限にしてきた荷物を受け取ると、浮遊魔法で荷物を浮かせて歩き始めた。


「おお、さすがミラ、すごいな」

「少しでも体力温存しないと!荷物は浮かせて進もう!」

「ミラに負担はないか?」

「うん、なんともないよ!」


私は元気よく笑いながら言った。

ジルも安心したように笑う。


この時の私は、本当に幸せで満ちていた。


ジルと一緒にいられること、そしてこれから待ち受ける試練を一緒に乗り越えていけると、そう信じていた─────



新章 《魔女編》開幕いたしました。

これからもコツコツ頑張りますので、どうか読みに来てくださると嬉しいです*ˊᵕˋ*


読んで頂きありがとうございます(ᴗ͈ˬᴗ͈)

楽しんでいただけたら評価、ブクマなどなど反応いただけたら嬉しいです• ·̫ •


次回は明日10時頃更新予定

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