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放火魔ライターの告発  作者: さば缶
第1章 嘘か、それとも真実か
3/15

第3話 真琴の日常—捏造が生むもの

 午後になってようやくシャワーを浴びた真琴は、乱れたセミロングの髪をまとめることもなくパソコンの前に戻っていた。

部屋の中にはスキャンダル雑誌や切り抜きが散乱し、片隅には山積みの資料や週刊誌が置かれている。

彼女の仕事は常に“裏取り”という名の捏造準備だ。

芸能人の過去インタビュー、SNSの些細な書き込み、夜遊びの目撃情報。

それらをつなぎ合わせて“裏が取れた”と見せかけ、煽情的な見出しをつけるのが真琴の得意技だった。


 デスクのモニター脇には、過去に真琴が書いた“偽告発”のファイルが並んでいる。

社会的に大問題になった俳優の“性被害報道”。

それを読んだネットユーザーが大挙してバッシングに走り、結果的に俳優は謝罪会見後に活動休止を余儀なくされた。

名前を変え、仕事を絶たれ、人知れず姿を消していった人も少なくない。

「大手事務所からは高額のギャラがもらえるけど、それが原因で何人辞めさせたっけ」。

真琴はぼんやりと画面を見つめたまま呟くが、自分が書いた文章にそこまでの破壊力があることに、どこか他人事のような感覚を抱いていた。


 テレビでは今、“文壇の帝王”と呼ばれる神谷颯太が高らかに笑いながらインタビューを受けている。

真琴はリモコンを手に取り、その画面を無言で見つめる。

高級スーツに身を包む神谷の姿には、どこか華やかで威圧的なオーラがあった。

真琴はチャンネルを変えようとして、なぜか指を止める。

「文壇の帝王、ね……」。

鼻で笑うように口角を歪め、結局そのままテレビを消す。

机の上に転がっていたスマートフォンに目をやると、画面には複数の通知が届いていたが、真琴はすぐに拾い上げようとはしなかった。

彼女はただ、混乱した頭の奥にわだかまる罪悪感を持て余すように、再びパソコンへ向き合っていく。

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