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放火魔ライターの告発  作者: さば缶
第5章 真実の炎をともして
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再起と覚悟

 夜の静けさを破るようにスマートフォンが鳴った時、真琴は少し眠っていたらしく、ぼんやりした頭を揺さぶられたような気分になった。

画面を見ると、相沢玲奈からの着信。

「椎名さん、あの元愛人の女性があなたと会うことを了承したそうです。

ちゃんと顔を合わせて話をしてくれるみたいですよ」

明るい声の向こうで、玲奈は一度息をついてから続ける。

「私も同行します。

あの人が神谷先生にされてきたこと、録音も含めて話してくれるそうです」

真琴は手の中でスマホを握りしめ、込み上げる痛みを必死で抑えた。

自分と同じ苦しみを抱えた人が、今度こそ真実を語ってくれる。

それが救いになるかどうかは分からないが、少なくともひとりきりで闘わなくてもいいと思えるだけで、呼吸が楽になる気がした。


 数日後、喫茶店の奥の席でその女性と向き合った真琴は、唇を結んだまま相手の話をじっと聞いていた。

彼女はうつむきがちだったが、神谷から何度も理不尽な行為を強いられてきたこと、拒否すると「君の将来を保証できないよ」などと脅され続けてきたことを声を震わせながら告白する。

「他にも似たような被害に遭っている人がいるはずです。

でも、みんな怖くて言えないんです」

その言葉に頷いた真琴は、「私も、あの人に……」と短く告げる。

顔を上げると相手と目が合い、ふたりの視線が交錯する。

しばしの静寂のあと、女性はか細い声で「この音声と日付の記録なら、あの人が嘘をつけないだろうと思う。

一緒に動いてくれるなら、私も逃げずに証言したい」と言葉を絞り出した。

真琴はテーブルに両手を置き、ゆっくりと息を吐く。

自分が書いてきた捏造記事の罪を思うと、胸が痛むばかりだが、今は逃げてはいけない。

相沢玲奈と視線を交わし、真琴は心の中で決意を固める。

“本当に守るべき被害者の声を、今度こそ届けないといけない”と強く思った。


 その夜、真琴は自分の部屋に戻ると、必要な資料をすべてまとめ始めた。

神谷の過去の言動を裏付けるメモ、元愛人が提供してくれた録音データ、その女性が書いたノートのコピー。

さらに、自分が捏造ではない“本物の被害”を受けたという事実を示すため、診断書をとることも検討する。

戸惑いや不安は依然として大きいが、もう後戻りできないし、するつもりもない。

エナジードリンクを飲み干し、乾いた唇を軽く舐めると、真琴はパソコンを起動して一気に書き始める。

“私は幾度も偽りの記事を書いてきたが、今回だけは違う。

これは本当に私が体験した暴力であり、二度と繰り返されてはならない行為だ”

あの時の痛みを言葉にするたびに体が震えそうになるが、記憶に正直になるしかない。

なぜなら、ここで真実を告げなければ、いつまでも“放火魔ライター”のままで終わってしまうと分かっているからだ。

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