なんてくだらない人生!
なんてくだらない人生だろう
夢を追いかける訳でも、何かを成し遂げるわけでもなくただただ生命を浪費していく毎日
ーーーそれに飽きがくるのは当然な訳で
私は真冬の海に飛び込もうと目論んでいる最中である
火元確認、家の戸締まりよし。遺書も水を吸いやすい格好も準備できた
元々何も持っていないが、処分できるものは全て捨ててきた。でも結局、怠惰な人間性は最後まで捨てきれそうにない
現に好きな音楽を聴き流し、死への恐怖を紛らわしているのだから
歩きスマホは良くないと分かっていても最期くらい許してくれ、と言う気持ちが強い
まぁ、こんな深夜だと車どころか人すら通りかからないとは思うが
ーーー大好きな曲
澄んだ歌声に美しく毒々しい薔薇のような歌詞、それを更に引き立てる綺麗なイラストに洗礼されたMV
「あ、ミスった」
ぼーっと考え事をしながらスマホを見ていたから、間違えてボタンを押して、横画面になってしまった
ループ再生はオンになっていたから、暗闇から鮮やかなMVとイントロが浮かび上がる
あれ、横画面で見るとこんなに綺麗なんだ
そんな事をぼんやり思う
今まで怠惰な日々を一緒に歩んできたと言うのに、使いこなせてる機能はごく一部なんだろうな
暗闇で光るブルーライトをいつのまにか、立ち止まって眺めていた
キラキラ光る画面とは真逆の世界にいる私
その画面に暗闇が映るまでただただ眺めていた
暗闇には相変わらずつまらない平凡な私が写っていて、それもすぐに光る画面に流されていった
「なんか、アホらしくなってきたな…」
全てを捨ててきた筈だった
少なくても私はそのつもりだった
これから自分自身でさえも捨てようとしていたのに、結局過去の思い出を持ってきたのはバカで間抜けな私らしいかもしれない
「はは…あぁ、ほんとに何やってんだろうなぁわたし」
今きた道を引き返す
友達も家族も思い出もあったくせに、何が全部捨ててきただ
これじゃあ本当に阿呆みたいだ
MVを大画面で見れるだけで感動したり、過去を思い出して少し息がしやすくなるような
人様からしたらくだらない人生で本当に良かった
そのおかげで私はもう少し生きていられそうだ






