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二人(+α)でお買い物

「わぁ……お菓子がいっぱいある……」

「ふふ、それじゃ好きなものを選んでね、()()


 私たちは今、城下町の商業地区に二人……と遠くに控えている宮廷魔術師長のソシファさんで買い物にきている。

 ちなみにリアとはサリア王女だと知られないための偽名。まあ一文字取っただけなんだけども。

 会話の時も敬語などは使わないように注意している。


 ここに来た理由はサリア王女の息抜きも兼ねた、実践形式での算術の勉強だ。

 30ゴールド……日本円で言うとだいたい300円分のお菓子を買う授業みたいなもの。

 300円と聞くと遠足を思い出しちゃうな……買っても食べるのは王城の中でだけど。


「ねえねえメイおねえちゃん、ホントになんでも買っていいの!?」

「ええ、30ゴールド以内なら何でもいいわよリア。もしちょうど使い切れたらご褒美もあるからね」

「わーいっ! どれにしようかなぁ……」


 サリア王女は目を輝かせながらお菓子を見ている。

 治安がいいとはいえ、お城の外に出ることはなかなかないだろうし、貴重な体験になるんだろうな。

 そんな様子を見ていると、同じお菓子を2つ買っているのに目が行く。

 たくさんの種類を買えばそれだけ楽しめそうなのに、どうしてだろう?

 それをサリア王女に聞くと……。


「あのね、わたしだけじゃなくてメイおねえちゃんにも食べて欲しいの。メイおねえちゃんが嬉しいならわたしも嬉しいもん」


 予想外の答えが返ってくる。

 まだ7才なのに私のことまで考えてくれているなんて……ちょっとときめいちゃうかも。


 そういえば同じものを2つ買うならかけ算の勉強にもなりそうだなあとふと思う。

 帰ったら実際にやってみようかな。自分がかけ算を初めて体験したのは2年生……8才のときだからちょっと早いけど、この世界だと授業の種類は少ないし、先取りしてもいいかもしれない。


 そんな事を私が考えている間にもサリア王女は私が用意した紙に値段を書きながら、一生懸命計算をしている。

 そしてまだ手に取っていない商品の値段とにらめっこしながら、再び計算して……がんばってるなあ。

 時にはアドバイスもあげながら20分ほどじっくりと選び抜き、見事に30ゴールドを使い切った。

 ちなみにご褒美は私がこっそり作ったクッキー。


「おめでとう、それじゃ帰ったらご褒美だね」

「わーいっ!」


 話をしながら帰途につくと、ふととあるものが目に留まる。


「絵の具……かあ。……そうだ!」


 私は画材店で足を止め、青と白の絵の具を数本買うことにした。


「メイおねえちゃん、それ何に使うの?」

「ふふふ、それは明日になってのお楽しみ……」

「えー、知りたい知りたいー」

「でも、知るまでどんなのか考えるとワクワクしない?」

「うんっ。それじゃ明日まで待つね!」


 意外とあっさり了承をくれた。初日の私がメイドになるかどうかの時は割と引っ張ったのに。

 こっちの素直なサリア王女が素なのかな? それとも私の言うことだから聞いてくれたのか……。

 何にせよ、期待してくれるなら私もがんばらなきゃ。


 そのまま2人と離れて護衛してくれているソシファさんと共に、再び王城へと歩き出した。




**********




「それでは本日も魔法の訓練を行いましょう」

「はーいっ! 今日こそ絶対魔法を使えるようになるんだからっ!」


 サリア王女はやる気満々だ。

 すぐに魔法を使おうとするけど、私がそれを一旦止める。


「王女様、少々お待ちいただけますか?」

「えっ? ……もしかして昨日言ってた……?」

「はい、正解です。それではこちらを……」


 私は手に持っていた紙を広げて見せる。


「これは……水滴ですか?」

「そうですソシファさん。魔法にはイメージが大切なので、実際に絵を見ながら同じものを作ろうとすればやりやすいかなと思いまして」

「メイおねえちゃん、絵がじょうずー……」


 そ、そうかな?

 絵なんて美術の時間にちょっとやったぐらいで、あとはマンガやイラストの模写とかしかしたことないんだけど。

 ……そっか、よく考えたらこの世界だと仕事にしない限りは市民階級で絵なんてめったに描かないから、驚かれるのもしょうがないかも。


「それでは試しに、これを見ながら魔法の練習をしてみて頂けませんか?」

「はーい! メイおねえちゃんが用意してくれたんだもん、ぜったいにやってみせるもんっ!」


 絵を持ちながらは流石に集中できないので、近くにあった休憩用のイスに座り、机に絵を乗せてからサリア王女は魔力を籠め始める。

 じっと絵を見つめて集中し、ソシファさんもそれを見守る。


 すると、私が描いた水滴の上に、魔法で水滴が生成され、それがポトンと絵の水滴の上に落ちる。


「で……で……できたーっ!」


 サリア王女は慌てて立ち上がると、私に向かって駆けてきて抱きついた。

 初めて成功したんだもん、それは嬉しいよね。


「まさか……1週間も経たずに成功するなんて……」


 ソシファさんは驚きを隠せない様子だ。

 それもそのはず、王妃様でも1週間かかった工程を3日で終わらせてしまったのだから。


「もういっかい! もういっかいやりたい!」

「分かりました、それではマジックポーションを用意しますね」


 サリア王女はマジックポーションを飲むと、また机に向かう。


「あっ……」


 しかし表情が暗くなる。何があったんだろう?


「ごめんなさいおねえちゃん……おねえちゃんに描いてもらった絵が濡れちゃった……」


 私が後ろから覗き込むと、さっき生成された水で紙が濡れてしまい、描いた絵が崩れていた。

 でも、これはサリア王女に魔法を習得してもらうために描いたものだし、その役目は充分に果たせただろう。


「元々これは魔法を覚えるための教材として描いたものですし、水魔法ならこうなるのは当然です。ですので、王女様は悪くないですよ。それに、必要ならまた描きますし……」

「うん……」

「さあ、成功の感覚を忘れないうちに練習しましょう? これで水魔法ができるようになったなら、絵も使命を全うできて幸せでしょうし」

「……うんっ!」


 これで振り切れたのか、サリア王女は再び魔法の練習を再開する。

 そして時々失敗はするもののコツはつかめたのか、絵が無くても8割ぐらいの確率で水を出せるようになった。


「これなら充分に扱えていると思いますので、私はこのことを王妃様にご報告にあがります。少々お待ちください」

「分かりました。それでは王女様、少し休憩しましょう」

「はーいっ」


 昨日おとといは全く手応えがなく落ち込んでいたサリア王女だが、今日はもう笑みが絶えない。

 できないことができるようになったのって、凄く嬉しいからね。

 それにお母さん……王妃様にいい報告もできるからきっと褒めてもらえるはず。


「お待たせしました、それでは始めましょう」


 急いで戻ってきたのか、少し慌て気味のソシファさんの声がする。

 それもそのはず、後ろには王妃様だけでなく陛下の姿まである。


「うむ。サリアよ、儂にも見せてくれるか?」

「パパ! うんっ!」


 公務でお忙しいはずなのに、時間を作って自分の娘の成長を見に来たのだろう。

 それに応えるためか、サリア王女は今までにないぐらいの集中を見せる。


 そして……。


「おお……!」

「サリア、凄いじゃない……まさか3日目でできるようになるなんて!」

「これもソシファの指導の賜物か」

「いえ、陛下……実はですね……」


 ソシファさんが陛下に経緯を説明する。


「そうか、最近スィーズが言っていたサリアの専属メイドとは君のことか。まさか算術だけでなく魔法でもサリアを助けてくれるとはな」

「いえ、今回のものについては偶然ですので、サリア王女の努力あってこそ魔法が使えるようになったのです」

「ははは、謙遜しなくてもよい。……それにしても絵を使っての魔法習得は興味深い。ソシファ、これは魔法学校の教育に使えないだろうか?」


 魔法学校かぁ、そういえば国で運営してるって聞いたことがあるな。

 まさかそこに私の絵が取り入れられるかもしれないなんて……。


「そうですね、ちょうど今は新入生が入ってくる時期ですし、取り入れてみてもよさそうです。メイさん、すみませんが水の他の3種類の絵も描いて頂けないでしょうか?」

「大丈夫です。……が、流石に量産するのは厳しいかもしれません」

「そこはこちらにお任せください。オリジナルがあれば複写(コピー)のスキルを使っての複製が可能ですので。もちろん複製には素材が必要なのですが、それもこちらで用意します」


 へー、便利なスキルがあるんだな。

 ……そういえば私、魔法どころかスキルも持ってないや……神様、どうして転生時に私にもくれなかったんですか……!


「分かりました、それではこのあと4属性全ての絵を描いてソシファさんにお渡しします。」

「メイおねえちゃん絵を描くの? わたしも一緒に描きたーい!」

「そうですね……この後は自由時間ですし、空き部屋を使って一緒にお絵描きしましょう」

「やったー!」


 ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現するサリア王女。

 年相応でかわいいなあ。


「ふふ、それにしてもサリアはメイさんが好きなのね」

「うんっ!」

「さ、サリアよ……パパとだとどっちが好きだ?」

「パパと? うーん……メイ!」

「な、なんだと!?」

「はぁ……それはあなたが毎日遅くまで仕事をするせいで、食事以外の一緒の時間が取れないからですよ。もう少し部下に仕事を振ったり、効率よく仕事をこなしなさいな」

「う、うむ……よしサリア、今度はパパともお絵描きしような?」

「はーいっ」


 そっか、やっぱりこっちの世界でも父親は忙しくてこどもとあんまり遊べないんだな。

 いやまあこの場合は王様だからしょうがないんだけど……。


 その後、私はサリア王女と2人で絵を描き、それをソシファさんに納品した。

 これは仕事だからと、絵に対しての対価まで頂けたのはとても嬉しい。自分の絵がお金になるなんて、前世じゃ考えられなかったもの。

 結果が出るまでしばらくかかりそうだけど、うまく行くといいな。




 ――しばらくして、私の絵が掲載された初歩の魔導書が出版されることになるのだが、それはまだ先の話。

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