優先されること
翌日最終日。
今日も俺たちは1-βでリリアさんとのやり取りをしていた。まあこれも今日までになるのだろうが。
「それで、どうだった?リリアさん。上手く言ったかな?」
「えぇ!とっても!ありがとうございました!」
これ以上ない朗らかな笑顔で俺たちに微笑む彼女。まあ話しかける前から嬉しそうな顔をしていたのでなんとなく上手くいったことはわかっていたが。
「まあ、貴女が良いのならよかったわ。リリアさん。これで依頼は解決ってことでいいかしら?」
「えぇ。勿論!さすがは生徒会の皆さんですね!私じゃこんな発想は考えつかなかったです!」
「そいつはどうも。まあ大したことでもないがな。ああそれと俺らは別に生徒会じゃあない。まあどうだっていいだろうけどな。」
まあ所属してないってだけで活動自体は生徒会と変わらないんだろうが。
「そうなんですか。まあ誰でも構いません。重要なことは私がDVされずに彼と付き合えることなんですから。」
「そうだな。それじゃあこれで。行くぞ。エリー。」
さっさとやり取りを済ませて俺はエリーと教室を出る。
「でもホントに上手くいったのね。正直失敗したと思ってたわ。ホントにあの子完璧なのね。」
「必要なのは発想だけだったんだろ。いい子だから考えないだけで。必要があればやれるってのはすごいことだが。」
まあ実際失敗するのなら彼女の善性が作戦を否定した時だけだっただろうしな。
まあ上手くいって何よりだ。今後どうなるかは彼女次第だが。
「まあいいわ。それよりさっさと戻りましょう?そろそろ授業始まるわよ。」
「今日の一限あれだろ?炎属性応用、俺アレ嫌いなんだよ。難しいし。俺、炎は適正ないし。」
「知らないわよ。大体アンタほとんどの授業寝てるじゃない。嫌いも何もないでしょうが。」
「それもそうなんだがな…。こう先生ともそりが合わないんだよな。なんとなく。」
「そりの会う先生なんて…いや、確かアンタ。ミラ先生だけは気に入ってたわよね、確か。」
「そりゃあ勿論!あんな美人かつ、性格の良い先生なんて見たことがない!全校生徒男子諸君の憧れの的アガガガガガガ…。」
「-50点。アンタは授業が終わるまで床とキスしてなさい。」
なんて酷い奴なんだろう。ビリビリ、ビリビリ、前に食らった時よりさらにキツイ奴が俺を襲った。
結局動けるようになった後、遅刻しながら教室に入り先生と教室の皆から冷ややかな視線を浴びながら俺は授業を受ける羽目になった。
エリーの前でミラ先生の話はしないようにしよう。…絶対に。
因みに昼食はまた俺とララとエリーの3人だった。もしかして今後ずっとこの感じなのだろうか。嫌な想像が脳裏をよぎったがあまり考えないようにした。
というよりこの二人俺に友人がいないだのなんだの言ってくるが他に飯食うやつとかいないのだろうか。エリーはまあ見た目で人が寄り付きにくい感じはするだろうがララなんて結構クラスの人気者だったはずだが。
下らぬことを考えているとあれよあれよと放課後に。足早に俺は部室へと向かうのであった。
「やあ、来てたんだねベル君。」
「同じクラスなんだから俺が来てるかどうかぐらい百も承知だろうがよアホが。」
そう俺もエリーもサイモンもミーナも全員同じクラスなのだ。いやケインってやつも俺が知らないだけで同じクラスなのかもしれない。探すほど俺は暇じゃあないんだが。
実は授業の合間とかにちょこちょこサイモンに話しかけていったりしたのだがなんというか袖にされていた。
「報告は3日後、だろ?」
などとキメ顔でいうのでぶん殴っておいた。めんどくさい奴だった。
「ふふっ、でもベルトットさんとエリーは凄く仲良くなったみたいだけどねー。」
「おい、冗談だろ?このエキセントリックガールと俺の何処が仲がいい…、
いやいやもう最高に仲が良くって困るぐらいだ!ね!だから指を仕舞おう。いい娘だから。ねえ頼む。」
「まあいいわ。次は無いわよ。」
いつだって冷や冷やするぜ全く。何が地雷なのかわかったもんじゃない。
それになんか電力が上がってる気がするんだけど…気のせいだよね?
あれ以上いかれるとさすがに命の危険を感じるんだけど。
「まあいいよ。じゃあ早速依頼の報告を頼むよ。ベル君。」
「ああ、はいはい。まあとりあえず俺たちの依頼はリリアって子の彼氏から振るわれるDV解決だった。結論から言うがこれは解決した。依頼成功ってわけだ。」
「いいね。僕が見込んだ男なだけはあるよベル君。」
いったい何様なんだ此奴は。
「…話を続けるぞ。ある程度話を聞いて分かったんだがこのリリアって子の方に落ち度はなく、それに連れだって彼氏のリードってやつもあまり問題は無かった。表面上はな。」
「続けて。」
「じゃあなんでこんなDVなんかが始まったのかって話だが…これは多分偶然だな。」
「成程。」
「多分事故かなんかでリードが彼女を傷つけたんだよ。始めはな。ただここでリードは思っちまったわけだ。暴力で彼女は従順になるってな。」
「クズだねー。」
「全くね。」
まあそれには同感だ。結局リードにも裏の顔があったってだけだろう。本人も初めて自覚した自分の暗い本性にな。
「そしてリードは調子づいた。相手は文武両道な完璧少女。それが自分のいうことを聞くってんだから頻度はそれなりに増したんだろう。そして依頼が俺たち…いや生徒会に来た。」
「まあ流れはわかったよベル君。それで?解決はどのように?」
「ん?別に大したことじゃない。より強力な暴力、でリード君を理解らせたってだけだ。」
「ふーん?」
「つまり、リリアがリードに暴力を振るう側になるよう仕向けたってだけの簡単なことだ。」
「えー…それって何も解決してないように思えるんですけどー…。」
「いや解決してるだろう。リリアが暴力を振るわれずに付き合いを継続出来てハッピーエンド。これ以上あるか?」
「えぇ…。リードって子はどうなるのそれ。」
「どうにもならん。というかDVしてたんだしされても文句言えないだろ。多分。」
「成程ね、了解したベル君。問題ないよ。君の行動の是非はともかく依頼は遂行しているし依頼者が喜んでいるのなら何も問題は無い。」
「そいつは良かった。いまいちお前の依頼に対するスタンスを掴みかねてたんだ。皆がハッピーでなけりゃダメなんだったら、生憎俺はお前のご期待に添える男じゃないよ。」
「いや、まったく問題ない。重要なのは依頼者だ、その過程で生まれる犠牲などどうだっていい。」
「そうかい。」
「ちなみにー、その立場の逆転?はどうやったの?それも簡単じゃないと思うんだけど。」
「それも大したことは指示してねえよ。つーか俺たちは今回大したことはやってない。精々いい子のリリアの認識をやや改めさせただけだ。」
「ふーん?」
「まあ彼女の重要なことの順序がついたってだけだ。リリアにとって最重要なことはリードとの交際継続、次に自分に降りかかる暴力の対処、そしてそれ以外って感じだ。つまり彼と交際できてればあとは何を犠牲にしたっていいんだ。それがリードでもな。」
購買で買った紅茶を飲みながら一息入れる。
「つまり俺は彼女にこう言ったんだ。」
「彼と別れることと、法を犯すこと。どちらが怖いのか?と。すると彼女はこういったんだ。「別れる方が怖い、」と。」
「いかれてるわよ全く。」
「彼女の善悪なんてどうだっていい。そして俺はもう一つ聞いた。彼が傷つくことと別れることどちらが怖いか?と。答えは聞くまでもないだろう。まあつまりそういうことだ。後は簡単だったよ。幸いリリアは完璧なのさ、だから魔法で徹底的に痛めつければいい。リードがトラウマに成程徹底的にね。」
「うーんでもそれってうまくいくの?逆切れしたリードが反撃しそうだけど。」
「いいか?あくまでリードは普通なんだ。一学年年上だからって魔術実技ですら優秀な成績であるリリアにガチでやりあったら大体の確率で負けるんだ。それに実際は初手は不意打ち。そりゃそうだよな、まさかリリアから攻撃されるなんてリードは毛ほども思っちゃいないんだろうし。それに普通命に関わるような魔法を人に撃つ奴なんていない。ましてトラウマになるレベルの魔法なんて法に触れる。」
エリーの顔は今は見ない方がいいだろう。刺激したらまたアレが来そうだし。
「でも彼女は行使できる、か。」
「そうだな、重要なことは法に触れることじゃないんだから。後は簡単だな、見える範囲に傷の残らないように、衛兵団に駆けこまれないように飴と鞭を調整するように、別にずっとDVし続けなければいけないわけでもなし。ある程度の恐怖で彼を縛ればずっと付き合えるよ。とね。」
「うわー性格わるー。」
ミーナはこういうが顔はニコニコだ。お前も結構性格悪いだろ。多分。
「これで大体の説明は終わりだ。なんか問題あるか?」
「別にないよベル君。ありがとう。君って案外生徒会向きだしどうかなこれを機に入ってみない?君なら適当に無能を押しのけて席に座れそうだけど。」
「馬鹿をいうな。これ以上何かに所属したら俺の時間が無くなるわ。つーか生徒会に無能なんていないだろ。」
何でもない顔でとんでもないこと言いやがるコイツは。
「生徒会なんていうけど実際優秀なのは上の役職だけ。下のしょーもないお勉強だけの構成員は大したことないよ。それにうちの会長は優秀なやつに優しいんだ。君も好かれると思うけど。」
「一番のお気に入りはお前なんだろうな、多分。」
「そりゃあそうだよ。僕だけが会長のお心を理解できるんだから。」
そりゃあ大層なこって。まるで入る気はしないがな。
「それで?サイモン達は何やったんだ?」
「別に僕らのは難しくなかったよ僕らの依頼は、」
「「いじめられているので助けて欲しい。2-αリリック」」
「過去一簡単だったよ全く。面白みがないね。」
そういうサイモンの顔は本当につまらなさそうだった。