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僕に欠けているもの  作者: 狼と子羊
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騒がしい昼食

翌日、俺はエリーと1-βでリリアを探して話をしていた。


「お、いたいた。昨日ぶりだねリリアさん。」


「どうも、えっとベルトットさんとエリーさん。」


「どうも。」


「早速なんだけど何個か確認したいことがあってね。時間良いかな?」


 まあある程度の前提がないと俺の今の作戦は話にならないからな。


「いいですけど…。どうでしたかリード君は。」


「特になんとも。そんなことはどうだっていいしね。」


「そうですか…。それで何でしょう。確認したいことというのは。」


 さて…、


「まず確認したいんだけど今回の依頼は彼氏ことリード君のDVの解消。それで間違いないね?」


「はい。それで大丈夫です。私、痛いのは嫌いなんです。」


 まず一。


「次に…、思うに君は()()()リード君と別れる気はない。少なくとも今の段階では。どうかな?」


「はい。別れる気なんて()()()()()()()()()。」


「ちょっとベルトット。何を…。」


「まあいいから。重要なことなんだよ。」


 とっても重要なことなんだよとってもな。


「そして、彼と交際を続けるためなら()()犠牲にしたっていい。そうだね?」


「はい。()()()()()()()()。」


「OK。じゃあこれから作戦を説明するね。」


 そういうと俺はリリアさんにいくつか質問を追加した後、今日、というか暴力を振るわれた際にやるべきこと、つまりは作戦を伝えていく。


 よこからエリーががやがや言ってくるがまあ気にしなくていいだろう。始めはリリアさんもなんとなく嫌な顔をいていたが最終的には()()してもらえたようだ。


「それじゃあ今日はこの辺で。」


 そんな俺の幕引きの言葉で俺はエリーを連れ添って教室から出ていく。


「ねえアンタ、さっきのは正気なの?あの作戦この先上手くやっていけると思えないんだけど。」


「ん?そうだなまあそのうち破局するかもしれないが…。まあ上手くやるだろ。どうにも彼女は完璧らしいし。それに重要なのは二人の幸せじゃなくて彼女の幸せ。そうだろ?」


「まあ、それは…、そうね。」


 渋々という表情がエリーの顔からありありと表現されていた。まあ彼女の性格なら已む無しではあるが。


「上手くいくことを祈ろうぜ。あの作戦だって成功するかどうか自体はわかんねえわけだしよ。」


「いいわ。文句はもう言わないわよ。どうせ私じゃどうにもでき無さそうだし。」


 なんだか少し不貞腐れるように吐き捨てるエリー。少しバツが悪くなるな。


「悪かったよ。今日の夕飯は俺の一押しに行こう。静かで雰囲気もそれなりにいいんだぜ?」


「見え透いたご機嫌取りがむかつくのよ。まあ行くけど…。」


 俺の財布がますます軽くなるのは悲しいが、まあこれも必要経費だろう。チョロい奴だ。


「何か失礼なこと考えてない?」


「滅相もない!そのような事などとてもとても…。なのでその指を一旦降ろしてみよう、な?危ないから。」


「…。10点。ギリギリだったわね。自分の幸運に感謝しなさい。」


 そういうと彼女は指を収める。エリーの採点基準は一体何なんだろう。聞いたところであまり理解できそうもないことだけはわかるがな。


 命の危機を回避した俺は教室に戻りいつものように授業を聞き流しながらやり過ごし昼休みに入って学食に行こうかという矢先ララから声をかけられた。


「やあベル君。調子はどうかな。」


「ん?俺はいつだって最高潮に決まってんだろ。生まれてこの方不調だったことなんてないってのはお前も知るところだろうに。」


「初めて聞いたよそんなの。それよりどうかな。今日はサークルが休みだから放課後は私と過ごすってのは。嬉しいでしょ?どうせ予定なんてないんだし。」


 なんでこんなに高圧的に人を遊びに誘うやつなんだろうか。しかし残念だったなララ。今日の俺は一味違うってのを教えたやらにゃあならんらしい。


「悪いなララ。今日はデートのお約束があるのさ。いつまでたっても春の来ないお前と違ってな。」


「見え透いた嘘は良くないよベル君。春が来ないのはベル君の方だし、私は作れないんじゃなくて作らないんだよ。」


「ハッ!どうせ俺は万年氷河期の冬野郎だよ。まあただ予定があるのは事実なんでな。」


「そういうこと。悪かったわね()()()()?」


 俺とララが喋っていると横からエリーが割り込んできた。そういやエリーがララと喋ってんのは初めて見るな。


「ふーんエリーさんとの予定なんだ。可哀そうだねベル君もこんなつまんない女と一緒に過ごすだなんて。」


「えぇ本当に可哀そうだわ貴女みたいな()()()女と友達だなんて。アンタも早く縁を切ることをお勧めするわ。」


「あーあこんなに口の悪い下品な女に私のベル君が絆されるだなんて。()()が足りなかったかな。」


「何言ってんだ…。お前ら…。」


 俺の想像以上に二人の仲が悪かった。いや悪いなんてもんじゃないが…。何があったんだよマジで。


「まあいいやベル君は勿論今から私とご飯食べるよね?昼も夜もコレと一緒なんてかわいそうで仕方無いし。」


「はあ?コイツは私と今からご飯食べるに決まってるでしょうが。可哀そうねイカレ女の付け入るスキは無いわよ。」


「あのー…。3人で食べるってのは…どうでしょうか…?」


「「殺されたいの?」」


「ッスー…。」


 なんでこういう時は息ピッタリなんだよ。ホントは仲いいだろお前ら。


 延々罵りあう二人をなだめてなんとか3人で学食を食べることに成功したのだった。これがいかに達成困難な偉業であるかは皆が言うまでもないだろう。


 ただ確実に言えるのは当分3人で飯を食うのは懲り懲りということだけだ。人間関係というのはとかくに難しい。


 因みに夜は予定通りエリーと二人で俺が最近見つけたレストランに行ってみた。高級な感じなんだけど意外と安い。


 なんというか穴場スポットみたいな場所だった。なぜか食事中の話題が俺とララとの関係性をやたらと聞かれたがまあ大したことじゃあない。今日俺の財布がさらに軽くなることを思えばその程度些細なことだろう。


 しかしリリアさんは上手くやったんだろうか報告を聞くのは明日になるだろうがいい返事を聞きたいものだ。


 別に失敗したって別にどうこうするわけじゃないが、折角の不適合者(ラックチルドレン)としての俺の最初の依頼なわけだし。


 まあいい報告をサイモンにはしたいよな。おれの単位に関わるし。


 とにもかくにも明日にならねばなんとやら。俺はそうそうに床に就きさっさと寝ることにした。


 色々なことは考えないようにして。

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