6.それは、強欲の進む先
智将でも想定を超える存在を考慮することを抜かしてしまうものなのでしょう。
>>>>>>>
ところ変わって、ここはハイツ軍の本部。血塗れの文書をあの隊長たちが持ち帰ってきたところだ。
「・・・そうか、よく持ち帰ってきてくれた。もう下がっていいぞ。隊員も休ませておけ。」
「はっ、失礼します。」
第五小隊隊長は敬礼の後、将軍の部屋から出て行った。
残された将軍は一人、血塗れの文書とにらめっこする。
「ふん、サントの奴らめ、今更『停戦の申し出』なんぞ遅すぎるわ。3年前ならまだしも、もうそっちも我らも人も時も様々なものを失いすぎた。」
文書を投げ捨てると、今度は地図を広げる。
「ふーむ、ここの戦力は・・・で・・・、ならばこう攻めると・・・。」
頭の中で戦略を立てる。将軍本人はサントの提案を受け入れる気はあった。それでも、もう後戻りできないところまで戦争は、両国の生活に深い深い傷を負わせてしまったのだ。
「やはり、全戦力をもって決着をつけるなら、ここだな。」
将軍は地図のある地点を指す。そこには
‘‘Cantavile Plain (カンターヴィレ平原)‘‘
とあった。
「見晴らしの良い平原部だけでなく、逆に大岩が乱立したり、激戦時の塹壕跡がいくつもあり身を隠すことも容易い・・・。さて、」
将軍は数枚の紙とペンを取り出した。そこに一枚ずつ各部隊に向けて、それぞれの作戦指示を記載する。
1時間後
「ふぅ・・・、これでヨシと・・・。おい、ラマル!」
「お呼びでしょうか?」
「この指令書たちを送ってくれないか?」
「了解です。迅速に通達し、明日早朝までに部隊の準備を済ませておきます。」
「うむ、頼んだぞ・・・。」
将軍直属の部下はそのまま敬礼をし、そのまま部屋を出た。将軍はそれを見送ると、立ち上がりバルコニーに出た。そして、煙草に火をつける。
「ふぅ、落ち着いて一服できるのも久しぶりだな。」
白い煙を吐き出す。空はすでに茜色。
「綺麗な夕焼けだな・・・。」
ーーーーーーーーーーー
「こっちもカンターヴィレ、うんうん、なら明日は・・・。」
サントとハイツ、両軍はこれで道を決めてしまった。もう戻れない。