1.静かな夜の分岐点
パッと思いついたキャラクターで書いた見切り発車の作品です。何話分かは書き溜めがあるため、今月中は更新は安定する・・・はず。
ボリ、ボリ、ボリ、ボリ、ボリ、
ゴクン、
グビッ、グビッ、グビッ、グビッ、
「ぷはぁ・・・・・・。」
果たして、何度目かも数えなくなった夜の補給を終えた。
金属の味以外がするわけもない銃弾を喉越しの酷いドロドロの重油で流し込む。
失ったはずの場所にそれらが溜まってゆく感覚はする。
「・・・・・・。」
住処にしているコンテナの上に登り周囲の監視をする。日中の怒号に爆音、銃撃戦のその全てが嘘であるかのように静かだ。
右目の眼帯を外し、その下の義眼を外す。そこからナイトビジョンを引っ張り詳しく見る。この辺りに物資を持った兵士が一人でもいるなら私はすぐにでもソレを殺す。
ピク・・・⁉︎
瞬間、右耳に武装された音波センサーがキャッチした。
「はぁ・・・、行くか。」
ここから音源まで凡そ、1.5km。うん、20秒で片付く。
私はコンテナを囲う、月明かりを浴びて黒く、鈍く、光る4m程度の棒を飛び越え、音源まで駆ける。
「弾と火薬持ってるかなー。」
我ながら呑気だ。これで1.2km、大体6秒。左手首を握る。音源はサントの兵士だ、夜の闇に紛れて奇襲でも考えていたのか?いずれにしても死んでもらう。
あと100m・・・手首を捻る。
あと50m・・・兵士は気付かない。
あと25m・・・左手を引っこ抜く。
あと10m・・・ここで初めて兵士はこっちを認識した。
「お、おまえは『いく・・・!」
0m、兵士の首はポトリと落ちた。残った胴はどさりと倒れた。何かを言おうとしてたがそんなことはどうでもいい。
私は血に汚れたカタナを唯一の衣服とも言っていいボロ布で拭い去る。柄が私の左手の異様なカタナの。
「それにしても、接敵から処理まで20秒って予測してたのに、実際は15秒。こんなになってても成長するなんてね・・・。」
兵士の死体から物資を漁る。食糧・・・これじゃない、ドッグタグ・・・これでもない、あったあった銃弾50発と銃。
「ああ、でもこれハンドガンか・・・。」
あとは・・・写真入りペンダント、ふーん、ポイッ、それに、これは
「停戦の要求・・・ねぇ。なになに、『我がサントの軍もハイツの軍も互いに疲弊し、この戦いは辞め時を失った。しかしこれを機に互いに・・・』もういいや、興味ないし。」
ポーイ。
「さーてと、盗るもん盗ったし帰るか。」
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伝令兵を殺した謎の少女はその場を去った。
平和を望む文書は伝令兵の血に染まった。
翌朝、不気味なまでに綺麗に首と胴が切り離された死体をハイツの軍が発見する。彼らは血に汚れた停戦要求を戦争継続の意ととった、とってしまった。
もはや、不気味な敵兵の死体のことなどどうでもよかった。その敵兵がなぜ死んだのか?誰が殺したのか?この疑問の解消を後回しにしてしまった。
この兵士の死体の奇妙さに少しでも気にかける者がいたら、この疑問の解答を求める者がいたら、のちに語られる
「カンターヴィレの大虐殺」
は起こらなかったのかもしれない。
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