贈り物
あの日は、私が人生で一番勇気を出した日だった。間違いない。
不器用にラッピングされた包みを持って、部室の椅子にぽつねんと腰掛ける。冬の夕日は早々と傾いていた。
うすく暖房が入った室内は心持ち肌寒くて、制服の裾からはみ出たねずみ色のカーディガンをぎゅっと伸ばす。
今日、彼に『放課後部室に来て』というメッセージを送った。『り』という一文字だけがいつものように返ってきて、私は何だかそれだけで泣きそうになってしまった。スマホのトーク画面を見返して、それをぎゅっと抱きしめる。
ぼんやりしているように見えて察しのいい彼のことだから、きっと気がついているんだろう。彼じゃなくても気がつくか。今日の日付、とか。
カラカラと引き戸を開く音がした。
「ごめん、遅くなった。今日日直でさ。」
「ううん、全然。」
私は知っている。彼が今日日直ではないことを。大方、どこかの女子からチョコレートをもらっていたのだろう。彼の口は、誰かを守る為にしか嘘を吐かない。
そういうところが、私は、たまらなく好きだ。
*
「コレ、どうぞ。」
タータンチェック柄の袋に、大きいリボンのついた袋がつい、と差し出された。
間違いなく18年の人生で一番、幸せな瞬間だった。
自分が好意を寄せていた人が、自分に対して同じ想いを持っていたなんて、そんな。