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贈り物

作者: 柿畑 紫慧

あの日は、私が人生で一番勇気を出した日だった。間違いない。

不器用にラッピングされた包みを持って、部室の椅子にぽつねんと腰掛ける。冬の夕日は早々と傾いていた。

うすく暖房が入った室内は心持ち肌寒くて、制服の裾からはみ出たねずみ色のカーディガンをぎゅっと伸ばす。

今日、彼に『放課後部室に来て』というメッセージを送った。『り』という一文字だけがいつものように返ってきて、私は何だかそれだけで泣きそうになってしまった。スマホのトーク画面を見返して、それをぎゅっと抱きしめる。

ぼんやりしているように見えて察しのいい彼のことだから、きっと気がついているんだろう。彼じゃなくても気がつくか。今日の日付、とか。


カラカラと引き戸を開く音がした。

「ごめん、遅くなった。今日日直でさ。」

「ううん、全然。」

私は知っている。彼が今日日直ではないことを。大方、どこかの女子からチョコレートをもらっていたのだろう。彼の口は、誰かを守る為にしか嘘を吐かない。


そういうところが、私は、たまらなく好きだ。



「コレ、どうぞ。」

タータンチェック柄の袋に、大きいリボンのついた袋がつい、と差し出された。

間違いなく18年の人生で一番、幸せな瞬間だった。

自分が好意を寄せていた人が、自分に対して同じ想いを持っていたなんて、そんな。

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